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大阪府情報公開審査会 大公審答申第136号 府立学校校長自己申告票非公開決定異議申立事案

2007年05月01日 | 事務・事業に関する情報
第一 審査会の結論
実施機関は、本件異議申立ての対象となった行政文書のうち、「学校名」、「校長の氏名」、「校長在職年数」、「現任校在校年数」、「備考」、「中期的な学校経営のビジョン」及び「今年度の学校教育目標等」の各欄を公開すべきである。
実施機関のその余の判断は妥当である。

第二 異議申立ての経過
(略)


第三 異議申立ての趣旨
本件決定の取り消し、及び当該情報の公開を求める。

第四 異議申立人の主張要旨
(略)


第五 実施機関の主張要旨
(略)


第六 審査会の判断理由
1 条例の基本的な考え方について
行政文書公開についての条例の基本的な理念は、その前文及び第1条にあるように、府民の行政文書の公開を求める権利を明らかにすることにより「知る権利」を保障し、そのことによって府民の府政参加を推進するとともに府政の公正な運営を確保し、府民の生活の保護及び利便の増進を図るとともに、個人の尊厳を確保し、もって府政への信頼を深め、府民福祉の増進に寄与しようとするものである。
このように「知る権利」を保障するという理念の下にあっても、一方では、公開することにより、個人や法人等の正当な権利・利益を害したり、府民全体の福祉の増進を目的とする行政の公正かつ適切な執行を妨げ、府民全体の利益を著しく害することのないよう配慮する必要がある。
このため、条例においては、府の保有する情報は公開を原則としつつ、条例第8条及び第9条に定める適用除外事項の規定を設けたものであり、実施機関は、請求された情報が条例第2条第1項に規定する行政文書に記録されている場合には、条例第8条及び第9条に定める適用除外事項に該当する場合を除いて、その情報が記録された行政文書を公開しなければならない。

2 評価・育成システムについて
実施機関は、教職員の意欲と資質能力を高め、教育活動をはじめとする学校の様々な活動を充実し、学校を活性化する方策として、教職員の自己申告による個人目標の設定(自己申告票の作成)や上司との面談等を内容とする評価・育成システムを2年間にわたる試験的実施と試行実施を経て、平成16年度から本格的に実施している。
校長の評価・育成システムは、一般教職員の評価・育成システムと同様に実施規則に基づき実施しており、自己申告と面談を基本にしている。校長の評価は、教育監(1次評価者)、教育長(2次評価者)の面談や校長の自己申告等を踏まえ、業績評価、能力評価及び総合評価が行われており、実施機関においては、評価・育成システムの評価結果をもって地方公務員法第40条第1項に規定する勤務成績の評定としている。評価結果は、校長個人に対する指導・育成や人事異動等に活用されているが、平成18年度の評価結果からは、昇給や勤勉手当の支給割合にも反映することが予定されている。

3 本件行政文書について
本件行政文書は、実施機関が、評価・育成システムの一環として、教職員に提出させている「自己申告票」のうち、平成16年度及び平成17年度の府立学校長分であり、その記載内容は、以下のとおりである。

(1)本人に関する項目
「学校名」、「氏名」、「年齢」、「校長在職年数」及び「現任校在校年数」が4月1日現在で記入されている。また、「備考」には、年度途中に異動した場合や他校と兼務している場合など、本人に関する事項で留意すべき点があれば記入することとされている。

(2)「中期的な学校経営のビジョン」及び「今年度の学校教育目標等」
「中期的な学校経営のビジョン」には、学校設立の経緯、地域や生徒の実態、保護者等のニーズ、これまでの成果等を踏まえ、学校の将来(3~5年後の)あるべき姿や学校が進むべき方向性について、校長としての考えを簡潔に記入することとされている。記入にあたっては、どのような資質や能力をもった児童・生徒の育成をめざすのかという視点を必ず踏まえることとされている。
「今年度の学校教育目標等」には、「中期的な学校経営のビジョン」の実現に向けて、今年度、学校全体として重点的に取り組むべき目標を記入することとされている。
実施機関の説明によれば、これらの欄の記入に当たり、校長は、各学校が教育目標の達成のために毎年作成し、公表する「学校教育計画」に加え、実施機関が各府立学校に対して示した教育施策や指導方針、あるいは、当該学校が現実に直面し、解決を図ろうとしている諸課題などを踏まえ、当該学校がどのような到達目標に向って重点的に取り組むべきかについて検討を行い、そのうえで、「学校教育計画」に示された教育目標だけでなく、その時点で直面する課題に即した目標や、組織内部で改善を図るべき目標などを記載するものとされている。

(3)設定目標
学校教育目標等を踏まえ、目標設定区分ごとに重点的に取り組むべき目標を設定することとされている。
「目標設定区分」欄に「学校の経営」、「学校組織の運営」、「人の管理・育成」、「地域連携と渉外」の四つの目標設定区分名を記入し、「内容・実施計画」欄に、目標設定区分ごとの目標の内容を具体的に記入するとともに、目標を実現するための実施計画を記入することとされている。
なお、目標の設定にあたっては、目標ごとに到達点と目標を実現するための具体的な取り組み(実施計画)が明確であることが大切とされている。

(4)進捗状況
設定目標の進捗状況についての目標ごと及び全体の自己評価の結果を、「計画以上に進んでいる」、「概ね計画どおり進んでいる」、「計画どおり進んでいない」のいずれかにチェックして記入するとともに、具体的な「進捗状況及び課題」を記入することとされている。

(5)目標の達成状況
設定目標の達成状況について、児童生徒・保護者・教職員等の意見も参考にしながら行う目標ごと及び全体の自己評価の結果を、「上回っている」、「概ね達成している」、「達していない」のいずれかにチェックして記入するとともに、具体的な「達成状況」と「今後の課題」を記入することとされている。

(6)学校経営の充実に向けた自己の課題
学校経営の充実に向けた自己の課題について、設定目標の範囲に限定せず、学校経営全般についての自己の課題を記入することとされている。

4 本件決定に係る具体的な判断及びその理由について
(1)条例第8条第1項第4号該当性について
実施機関は、本件行政文書に記録された情報について、条例第8条第1項第4号に該当すると主張するので、この点について検討する。
なお、異議申立人は、第二の1のとおり、本件請求1及び本件請求2の2件の公開請求を行っているが、本件請求2の対象行政文書は、本件請求1の対象行政文書に含まれることから、以下においては、両者を併せて検討することとする。
また、公開の可否の検討に当たっては、条例第10条第1項の趣旨を踏まえ、部分公開の可否を含めて検討することとする。

ア 条例第8条第1項第4号について
行政が行う事務事業に関する情報の中には、当該事務事業の性質、目的等からみて、執行前あるいは執行過程で公開することにより、当該事務事業の実施の目的を失い、又はその公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼし、ひいては、府民全体の利益を損なうおそれがあるものがある。また、反復継続的な事務事業に関する情報の中には、当該事務事業実施後であっても、これを公開することにより同種の事務事業の目的が達成できなくなり、又は公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼすおそれのあるものもある。
このような支障を防止するため、これらの情報は公開しないことができるとするのが条例第8条第1項第4号の趣旨である。
同号は、
(ア)府の機関又は国等の機関が行う取締り、監督、立入検査、許可、認可、試験、入札、契約、交渉、渉外、争訟、調査研究、人事管理、企業経営等の事務に関する情報であって、
(イ)公にすることにより、当該若しくは同種の事務の目的が達成できなくなり、又はこれらの事務の公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼすおそれのあるもの
は、公開しないことができる旨を定めている。

イ 条例第8条第1項第4号該当性について
本件行政文書に記録されている情報が上記ア(ア)、(イ)の要件に該当するか否かについて検討したところ、以下のとおりである。
本件行政文書は、府立学校長が、実施規則に基づき、校長の評価者である教育長に対して提出するために作成されたものであり、実施機関において校長の勤務評価を行うための資料であることから、本件行政文書に記録されている情報は、「府の機関又は国等の機関が行う人事管理等の事務に関する情報」として、ア(ア)の要件に該当する。
次に、本件行政文書に記録された情報がア(イ)の要件に該当するかどうかについて検討したところ、以下のとおりである。

(ア)本人に関する項目の各欄に記録されている情報について
本項の情報は、各年度4月1日現在の学校名、氏名、年齢、校長在職年数及び現任校在校年数並びに「備考」欄に記録されている年度途中の異動や他校との兼務などの情報である。これらの情報は、人事管理に係る行政文書である自己申告票に記載されているものの、当該情報自体は、記入者の属性に関する情報に過ぎず、公にすることにより人事管理等の事務の目的が達成できなくなり、又はこれらの事務の公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼすおそれがあるとは言えず、ア(イ)の要件に該当しない。

(イ)「中期的な学校経営のビジョン」及び「今年度の学校教育目標等」の欄に記録されている情報について
本項の情報は、学校の将来あるべき姿や進むべき方向性、当該年度に学校全体として重点的に取り組むべき目標について、校長としての考えを簡潔にまとめたものである。
このような情報は、実施機関における人事管理の一環として作成された情報ではあるものの、学校運営の最高責任者である校長の職責を考慮すると、当該学校の運営の基本方針に関する情報として、当該学校の生徒・保護者のみならず、受験生やその保護者、地域住民など広く府民の正当な関心の対象となるべき情報であり、これを公開することにより、地域社会に開かれた学校運営の推進に資するところがあると考えられる。
これに対し、実施機関は、本項の情報は「公表された「学校教育計画」と内容が重複してはいても、そのまま転記されているわけではなく、「学校教育計画」に記載されていない内容も含まれている。」とした上で、次のような理由を挙げて、ア(イ)の要件に該当すると主張しているものと解される。

a 学校教育計画と重複した内容が記載されていても、その取捨選択において、校長の価値判断を経た結果であり、校長の価値判断が教職員の間に透けて見える結果となって、例えば、校長の選択からもれた項目を担当する教職員にとっては、取組み意欲の低下につながるなど、今後の人事管理に支障を及ぼすおそれがある。

b 生徒の問題行動をどの程度減少させるか、具体的な大学名をあげて進学率をどの程度向上させるかといったことを目標として掲げている事例があり、一般に公表すると、学校の色分け・序列化につながり、ひいては、当該学校の生徒に対する誤解・偏見を助長するおそれがあるなど、今後の学校運営に著しい支障を及ぼすおそれがある。

c 理想とする学校の姿を個人的なイメージを用いて表現したり、自校の教職員集団の組織運営上の課題をどう認識しているかを記載した例があるが、これらは、校長が上司である教育長に対して、自らの職務・職責に対する認識や意気込みを示し、あるいは、学校という組織の長としての人事管理上の課題認識・教職員の指導方針を示したもので、こうした情報が部下である教職員に明らかになると、校長が教職員に対して行う叱咤激励の目的が透けて見えてしまう結果となるなど、人事管理・組織運営に著しい支障をきたすことになる。

d 本項の情報は、「設定目標」欄に記載される個別具体的な項目等の概要ないし目次の役割を果たすものであり、これを公開することは、非公開とされるべき「設定目標」欄に記載される個別具体的な項目等を類推させる結果につながるおそれがある。

e 校長が、「学校教育計画」とは異なる内容を記載することは、システムの実効性を高めていく上で、望ましいと考えており、単に「学校教育計画」の内容が転記されているだけか、問題点を掘り下げ、あるいは絞り込んで、現在直面している教育課題を校長がどのように認識し、どのように取り組もうとしているかについても記載しているのかによって、評価の結果が異なってくることもあるが、本項の情報が公開されることになれば、校長は、自己申告票に自らの本音を率直に記載することを躊躇するようになり、今後の人事評価事務に支障を及ぼすことになる。

そこで、これらの点について検討するに、aで言及されている学校教育計画と重複した内容の部分は、校長による取捨選択という価値判断を経たものとは言え、既に公表されている内容であり、校長の職責を考慮すると、むしろ積極的に教職員や生徒・保護者等と共有すべき情報である。
次に、bの学校の色分け、序列化等の問題は、本項の情報が公開されたからといって、改めて、これが著しく助長されるようなものではなく、むしろ、そうした学校の抱える課題や問題点を広く府民等と共有することを通じて、克服を図っていくことが期待されるものである。
また、cの校長の自らの職務・職責に対する認識や意気込みについては、上司である教育長のみならず、部下である教職員や生徒・保護者に対しても明らかにされることが望ましい情報である。人事管理上の課題認識・教職員の指導方針については、個々の教職員への指導方針など個別具体的な内容が記載されている場合には、人事管理上著しい支障が生じる場合が考えられるが、審査会において、本項の情報を見分したところによっても、そのような個別具体的な記述は確認できなかった。
さらに、dの主張については、本項の情報には、「設定目標」欄に記載される個別具体的な項目等の概要ないし目次に相当する内容が含まれる場合があるが、審査会において見分したところによれば、「設定目標」欄に記載される個別具体的な項目等の具体的な内容まで特定し得るものとは認められなかった。
また、eの主張については、本項の情報が公開されることとなった場合、今後、校長の自己申告票の記載内容に影響がないとは言えないが、後述のとおり、「設定目標」欄に記載される個別具体的な目標等については、公開しないことができることからすると、校長の評価・育成等の人事管理に関する事務に必要な情報は、十分に得ることができると考えられる。
以上を総合して判断すると、本項の情報は、人事管理等の事務に関する情報ではあるものの、これらを公開しても評価・育成システムの目的が達成できなくなり、又はその公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼすおそれがあるとまでは言えず、ア(イ)の要件に該当しない。

(ウ)「設定目標」、「進捗状況」、「目標の達成状況」及び「学校経営の充実に向けた自己の課題」の各欄に記録されている情報について
本項の情報を審査会において見分したところ、校長が学校運営上取り組んでいる事項に係る個別の目標や実施計画の内容、その達成状況の自己評価等、職務に関しての自己の課題や次年度の構想、実施機関に対する意見、さらには教職員の能力分析や生徒の状況等が、校長個人の考えに基づいて具体的かつ比較的詳細に記載されていることが認められた。
これらの情報は、目標管理の手法による教職員の評価・育成を目的とする評価・育成システムにおいて、校長が、学校経営のビジョンや学校教育目標等を達成するため、個人として設定した具体的な目標及びその進捗状況や達成状況を評価者である教育長に申告する自己評価そのものの情報である。また、この校長の自己評価を踏まえて、教育長が、校長の勤務評価を行っており、その結果は、校長個人に対する指導・育成や人事異動等に活用されているが、18年度分からは、校長個人の給与にも反映されることが予定されているものである。
このような個人の勤務評価に係る具体的な情報については、校長といえども、通常、府民や他の教職員に明らかにされるような情報ではなく、また、これらの情報が公になると、校長が他の教職員や保護者等に内容を知られることを慮って、自らの目標や評価等を率直に記述しなくなるおそれがあり、その結果、実施機関においては、人事評価に必要な情報を十分に得ることができず、適正な勤務評価を行うことが困難となるおそれがある。さらに、評価結果を活用して実施する校長の指導・育成等の学校教育に関する事務や人事異動、昇給等の事務にも支障をきたすなど、今後、同種の事務の公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼすおそれがあると認められることから、本項の情報は、ア(イ)の要件にも該当する。
以上のことから、本件行政文書に記載されている情報のうち、「設定目標」、「進捗状況」、「目標の達成状況」及び「学校経営の充実に向けた自己の課題」の各欄に記録されている情報については、条例第8条第1項第4号に該当し公開しないことができるが、本人に関する情報の各欄並びに「中期的な学校経営のビジョン」及び「今年度の学校教育目標等」の各欄に記録されている情報については、同号に該当しないと認められる。

(2)条例第9条第1号該当性について
次に、本件行政文書に記録された情報が校長個人に係る情報でもあることから、(1)で条例第8条第1項第4号に該当しないと判断した本人に関する情報の各欄並びに「中期的な学校経営のビジョン」及び「今年度の学校教育目標等」の各欄に記録されている情報が、条例第9条第1号に該当するか否かについて検討する。

ア 条例第9条第1号について
条例は、その前文で、府の保有する情報は公開を原則としつつ、併せて、個人のプライバシーに関する情報は最大限に保護する旨を宣言している。また、第5条において、個人のプライバシーに関する情報をみだりに公にすることのないよう最大限の配慮をしなければならない旨規定している。
本号は、このような趣旨をうけて、個人のプライバシーに関する情報の公開禁止について定めたものである。
同号は、
(ア)個人の思想、宗教、身体的特徴、健康状態、家族構成、職業、学歴、出身、住所、所属団体、財産、所得等に関する情報であって、
(イ)特定の個人が識別され得るもののうち、
(ウ)一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる
情報が記録された行政文書については公開してはならない旨定めている。

イ 条例第9条第1号該当性について
(ア)本人に関する情報の各欄に記録されている情報について
本項の情報は、いずれも校長本人の属性に関する情報であり、学校名及び氏名により、特定個人が識別されるから、ア(ア)及び(イ)の要件に該当することは明らかである。
次に、ア(ウ)の要件に該当するか否か検討する。

a 「学校名」、「氏名」、「校長在職年数」、「現任校在校年数」及び「備考」欄に記録されている情報について
これらの情報については、いずれも個人に関する情報ではあるものの、公務員の職又はその職務の遂行に関する情報であり、これらの情報そのものは、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められず、ア(ウ)の要件には該当しない。

b 「年齢」について
「年齢」については、個人の固有の属性に関する情報であり、公務員としての職務に関する情報ではないから、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められ、ア(ウ)の要件に該当する。

(イ)「中期的な学校経営のビジョン」及び「今年度の学校教育目標等」の各欄に記録されている情報について
本項の情報は、校長が学校責任者として考えている学校の将来のあるべき姿や学校が進むべき方向性についての中長期的なビジョンやその実現に向けて、学校全体として重点的に取り組むべきと考えている目標であり、そこには校長個人の考えや思いが反映されており、個人に関する情報としての側面は否定できないものの、基本的には、公務員としての職務の遂行に関する情報であることから、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められず、ア(ウ)の要件には該当しない。
以上のことから、(1)において条例第8条第1項第4号に該当しないと認められた情報のうち、「年齢」については、条例第9条第1号に該当し公開してはならないが、「学校名」、「氏名」、「校長在職年数」、「現任校在校年数」、「備考」、「中期的な学校経営のビジョン」及び「今年度の学校教育目標等」の各欄に記録されている情報については、条例第9条第1号にも該当せず、公開すべきである。

(3)本件請求1に対応する行政文書の部分公開に関する異議申立人の主張について
異議申立人は、本件請求1に対応する行政文書について、学校名や校長名等の個人を特定できる部分は容易に分離でき、かつ、これらの情報を除くことによって、当該文書に記載された情報と個々の校長の勤務評価との対応関係は消滅するはずであることから、当該文書が条例第8条第1項第4号に該当するとしても、学校名等を分離することによって職員の人事管理に支障を生じる恐れを減殺することとなる旨主張している。
しかしながら、公務員の職務の遂行に関する行政文書の公開請求に対しては、個人のプライバシー情報を非公開とするため必要な場合や当該公務員の生命、身体、財産等の保護に支障を及ぼすとおそれがある場合など特別の事情のない限り、当該公務員の氏名や所属、職名等を公開すべきであり、本件請求2のように学校を特定して公開請求されることを考慮しても、本件行政文書について、校長名や学校名を非公開とすることを前提に部分公開を検討することは適当でない。
また、仮に、校長名や学校名を特定し得る情報を除いて公開するとしても、(1)及び(2)で非公開が妥当と判断した「設定目標」、「進捗状況」、「目標の達成状況」及び「学校経営の充実に向けた自己の課題」の各欄には、各学校の運営方針や目標等が、当該学校の状況を踏まえつつ具体的に記述されているため、当該学校の教職員や生徒・保護者等相当広範囲にわたる一定の関係者から見れば、当該学校を容易に特定し得る情報が含まれており、前記の関係者からも学校名や氏名が特定されないようにすると、断片的な情報のみが残る結果となって、部分公開にはなじまないものと認められた。
以上のことから、この点についての異議申立人の主張は採用することができない。

5 結論
以上のとおりであるから、本件異議申立ては、「学校名」、「校長の氏名」、「校長在職年数」、「現任校在校年数」、「備考」、「中期的な学校経営のビジョン」及び「今年度の学校教育目標等」の各欄の公開を求める部分について、理由があり、「第一 審査会の結論」のとおり答申するものである。

(主に調査審議を行った委員の氏名)
岡村周一、曽和俊文、小松茂久、鈴木秀美


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