goo blog サービス終了のお知らせ 

情報公開制度について考える

情報公開審査会の答申などを集めて載せています。

横浜市情報公開・個人情報保護審査会 横情審答申第548号 建築基準法に違反する建築物等に係る措置…

2008年06月24日 | 個人に関する情報
横情審答申第548号
平成20年6月24日
横浜市長 中 田 宏 様

横浜市情報公開・個人情報保護審査会
会 長 三 辺 夏 雄

横浜市の保有する情報の公開に関する条例第19条第1項の規定に基づく諮問について(答申)

平成19年11月14日まち違対第987号による次の諮問について、別紙のとおり答申します。
「(1) 建築基準法に違反する建築物等に係る措置依頼書について(平成19年まち違対第89号)
(2) 建築基準法違反に対する呼出通知について(平成19年まち違対第108号)
(3) 建築基準法違反に対する事情聴取報告書について(平成19年まち違対第223号)」
の一部開示決定に対する異議申立てについての諮問

別 紙
答 申

1 審査会の結論
横浜市長が、「 (1) 建築基準法に違反する建築物等に係る措置依頼書について(平成19年まち違対第89号)、(2) 建築基準法違反に対する呼出通知について(平成19年まち違対第108号)及び(3) 建築基準法違反に対する事情聴取報告書について(平成19年まち違対第223号)」を一部開示とした決定のうち、建築主の氏名及び住所を非開示とした決定は妥当ではなく、開示すべきであるが、その余の部分を非開示とした決定は妥当である。

2 異議申立ての趣旨
本件異議申立ての趣旨は、「建築基準法に違反する建築物等に係る措置依頼書について(平成19年まち違対第89号)(以下「文書1」という。)、建築基準法違反に対する呼出通知について(平成19年まち違対第108号)(以下「文書2」という。)及び建築基準法違反に対する事情聴取報告書について(平成19年まち違対第223号)(以下「文書3」という。文書1から文書3までを総称して、以下「本件申立文書」という。)」の開示請求(以下「本件請求」という。)に対し、横浜市長(以下「実施機関」という。)が平成19年8月23日付で行った一部開示決定(以下「本件処分」という。)の取消しを求めるというものである。

3 実施機関の一部開示理由説明要旨
本件申立文書については、横浜市の保有する情報の公開に関する条例(平成12年2月横浜市条例第1号。以下「条例」という。)第7条第2項第2号及び第6号に該当するため一部を非開示としたものであって、その理由は、次のように要約される。
(1) 条例第7条第2項第2号の該当性について
本件申立文書のうち、個人の氏名及び住所並びに車のナンバーは、個人に関する情報であって、当該情報そのもの又は他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができるものであることから本号に該当し、本号ただし書に該当せず非開示とした。

(2) 条例第7条第2項第6号の該当性について
文書1の指導経過及び文書3の事情聴取の概要は、違反に至った経緯や違反是正に関する違反者の発言及び横浜市の指導内容等が詳細に記録されており、これを開示することにより、当該違反者又は当該違反者以外の者が、建築基準法等に違反する建築物等の所有者等に対して本市が行う是正指導対応の傾向を把握できることとなり、事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあることから、本号に該当し、非開示とした。

4 異議申立人の本件処分に対する意見
異議申立人(以下「申立人」という。)が、異議申立書及び意見書において主張している本件処分に対する意見は、次のように要約される。
(1) 本件処分を取り消すとの決定を求める。

(2) 条例第7条第2項第2号の該当性について
ア 第7条第2項2号を根拠規定とするのは、本件事案の事実を誤認し、その結果、条例の適用を誤り、一部非開示の結論に達した違法がある。すなわち、一部開示された公文書では、本件に関する違反建築物の建築主、管理者、占有者等は非開示部分として明らかにされていないが、申立人の調査では、建物は未登記であり、土地登記簿謄本によれば土地所有者は「特定個人A」となっており、建物利用者は特定個人Bである。
特定個人Bは、建築に係る大工工事を職業とし、違反建物を大工としての作業場として利用しており、同事実は地方税法(昭和25年法律第226号)第72条の2第8項14号「請負業」に該当する。従って、適用すべき条例の条項号は、条例第7条第2項3号であり、非開示の除外事由も認められないことから、開示されるべきものである。

イ 3号該当性の証拠として、携帯電話による音声付動画写真がある。撮影年月日はいずれも特定年月日であり、撮影者は申立人である。
諮問庁においては、何故に本件事案が「事業を営む個人の当該事業に関する情報」として捉えていないのか不明である。この点を審査会において諮問庁に対し釈明を求め、明らかにされたい。
仮に本件事案を「個人に関する情報」として捉えても、以下の理由により開示されるべきであると考える。答申第346号指摘の通り、確認申請のあった事案においては、建築計画概要書の閲覧申請があった場合、閲覧可能な事項である。本案件は、そもそも建築確認の申請自体がなかった場合であるから、建築計画概要書は存在し得ず、実施機関は開示できない、あるいは開示しようがないというのであろうか。しかし、それでは確認申請のあった場合と比較すると均衡を失するものとなる。同時に結果として、確認申請をしなかった者がより法の保護を手厚く受けることとなり建築基準法(昭和25年法律第201号)第6条の趣旨に反する。これでは法全体の整合性ある統一した解釈にもならない。よって、「建築主」に係る事項は条例第7条第2項第2号アに該当し(又は類推し)、開示されるべきである。

(3) 条例第7条第2項第6号の該当性について
ア 第7条2項6号の規定の解釈について、「支障」の程度は名目的なものでは足りず、実質的なものであることが必要とされ、「おそれ」の程度も単なる確率的な可能性ではなく法的保護に値する蓋然性が要求されるものとされている。また、非開示の理由は、「いかなる事実を認定して開示しない旨の決定をしたかを具体的に記載する必要がある」とされる。この点について、最高裁平成4年12月10日(警視庁個人情報実態調査公開請求事件)で、理由付記制度の趣旨を「実施機関の判断の慎重と公正妥当を担保してその恣意を抑制するとともに、非開示の理由を開示請求者に知らせることによって、その不服申立に便宜を与える趣旨に出たものというべきである」とする。そして、理由付記制度の趣旨から「公文書の非開示決定通知書に付記すべき理由としては、開示請求者において、条例所定の非開示事由のどれに該当するかをその根拠とともに了知し得るものでなければならず、単に非開示の根拠規定を示すだけでは、当該公文書の種類、性質等とあいまって開示請求者がそれを当然知り得るような場合を別として条例の要求する理由付記として十分ではないといわなければならない」 としているのである。本件非開示公文書の開示が、何故に「公にすることにより、検査、措置に係る事務に関し正確な事実の把握を困難にし、当該事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある」のか、全く説明がないのである。よって、理由不備(条例第13条第1項)の違法がある。

イ これを今少し敷衍すると、「事情聴取報告書」に関していえば一部非開示理由は、「事情聴取報告書には、違反に至った経緯や違反是正に関する違反者の発言及び横浜市の指導内容等が詳細に記載されており、開示されることにより、指導対応の傾向を把握できるため、事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあること」(横浜市情報公開・個人情報保護審査会答申第487号)というにあろう。
実施機関の主張の真意は、次のような点を具体的には示しているものと考えられる。建築基準法違反行為の内には、様々な事案が存在し同じ違反であっても違法性の強いものからさほど強くないものまである。これら違反事案を、限られた人材と予算の下で、より効率的な達反対策を実施する必要がある。そこで、どのような違反に対してどのような対策を行なうか明らかにした場合、例えば、違反者の中には、是正命令の発令がある場合と行政指導に留まる場合の基準を読み取り、違反の程度を是正命令発令基準未満に留め、違反を繰り返すといった弊害の発生を招くといったことになりかねず、これでは違反対策の適切かつ合理的な実施は到底望むベくも無いといった危惧ないし懸念がある。従って、「事情聴取報告書」のような公文書は開示できないという考え方にあるのではなかろうかと思われる。なるほど、同文書の開示が、時としてそのような弊害が有り得ることは否定できない。しかし、このような弊害は、さほど多く生ずるとは必ずしも言えず有っても希有なものであり、前記危倶ないし懸念は単なる-般的・抽象的な不安に過ぎないといえる。仮に、万一その不安が現実化し、具体的な弊害が生じた場合、別途事案に応じた対策を講ずればよいのであって、このような希有な場合を想定して本件公文書の開示をしないとするのは、原則開示とした条例の趣旨・比例原則に反するものと考えられる。よって、想定される実施機関の主張する答申第487号で示された非開示理由は認められない。

ウ 仮に、上記理由が認められないとしても、一部非開示公文書のうち、「建築基準法に違反する建築物等に係る措置依頼書」中「指導経過」部分を非開示の対象に含めたことは、条例の解釈・適用を誤った違法がある。同文書は、申立人の建築基準法違反の事実指摘を受けて、担当者がその客観的事実の真偽を確認し、それによって得られた事実が建築基準法の諸規定に照らし、それらに抵触するや否やの判断を示したものである。「指導経過」も初期指導の結果の報告部分に過ぎず、以降の違反対策の方針を決める為の資料で、その性質は前者と何等異なるところがない。言い換えれば、公文書としての行政行為上本質的役割は、安威川ダム地質調査報告書公開請求事件(大阪高裁平成6年6月29日判決)で開示が認められた「地質調査報告書」と同一性質のものである。それ故、これを開示したとしても、「検査、措置に係る事務に関し、正確な事実の把握を困難にし、当該事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある」という事実は認められない。よって、条例第7条第2項第6号に該当せず、非開示は条例の解釈・適用を誤った違法がある。

(4) 異議申立ての背景
申立人は、本件異議申立てに係る違反建築物に近接する土地所有者の関係者である。不動産価格の諸要素をみると、土地の場合当該物件の所在地域、面積、利便性、周辺及び当該地の道路状況(幅員等)、当該土地に関する法律上の規制状況など各種要素により異なることは一般に周知の事実である。
当該不動産は、第一種低層住居専用地域の指定を受け、住環境としては最も相応しい地域指定がなされている。他方、前面道路の幅員は約2mであり、僅かに小型乗用車が進入できるに過ぎず、地震・火災時・急病人搬送等緊急時の緊急車両の進入は、不可能となっている。その主たる原因は、違反建築物の存在である。すなわち、違反建築物の除去が実現すれば、工事車両の進入、近隣住民の車両の出入、地震・火災等災害時における避難、急病人搬送時の緊急車両の出入が容易又は可能となる状況にある。
上記状況下において、開示公文書の通り、建築基準法の各諸規定に抵触する建物が建築されており、行為の主体・行為の内容・行為の効果等の点で悪質性・強度の違法性・弊害の甚大性等無視し難く、申立人は、横浜市に対し、建築基準法第9条1項の是正命令を発し、違反建築物を除去するよう申し入れた者である。

(5) 是正命令について
ア 発令基準を取り巻く法環境
一般に、是正命令は、行政庁の自由裁量行為と理解されており、発令基準について建築基準法は何ら示していない。
この点、行政手続法(平成5年法律第88号)は、「行政運営における公正の確保と透明性の向上を図り、もって国民の権利利益の保護に資することを目的」とする(第1条)。そこで、同法第12条第1項において「行政庁は、不利益処分をするかどうか又はどのような不利益処分をするかについてその法令の定めに従って判断するため必要とされる基準を定め、かつ、これを公にするよう努めなければならない。」とすると共に、同条第2項では「行政庁は、処分基準を定めるに当たっては、当該不利益処分の性質に照らしてできる限り具体的なものとしなければならない。」としている。
この点、建築基準法第9条の是正命令は、「法律」に基づく行政処分であり、同法第3条第2項による前記条項の適用除外はないはずである。しかるに、横浜市においては、上記法律の目指す要求に、全く答えていない。これでは、「公正で民主的な市政の推進」(条例第1条)と整合性を持てないであろう。
横浜市が、是正命令に関する発令基準を定め、これを公にしない真の理由は、基準を定める事によって司法部の統制が及び易くなる事に対する、危惧に有るのではなかろうか。是正命令は、既に過去相当多数の例があるはずであり、分類・整理が為されているはずであり、それによって類型化を図り基準化する事は充分可能であろう。もっとも、実際には行政機関内部では既に基準化されていようから、公にするだけの問題であろう。さもなければ、その時々の恣意的・独善的判断を許容する結果となり、行政運営における公正の確保と透明性の向上(行政手続法第1条)とは程遠いものになろう。

イ 建築審査会・裁判所の示す発令基準
このような状況の中で、抽象的ではあるが行政機関の内部からのものとして、横浜市建築審査会が、発令基準を平成12年6月30日付け裁決例で、司法部では、(行政事件訴訟法(昭和37年法律第139号)改正前の義務付け訴訟が無名抗告訴訟として取り扱われた当時のもので、正面から義務付け訴訟が認められた今日では多少の修正を要するが大いに参考になる)国立マンション除却命令等請求事件(東京地裁・平成13年12月4日)において、上記裁決例に酷似する基準がより詳細に示された。上記判例の示すところは、次のとおりである。是正命令の裁量性について、「建築基準法9条1項の規定に基づく是正命令は、特定行政庁において、建築基準法が規定する行政目的達成の為に、同法に違反する建築物又は建築物の敷地に付いて、①違反の有無、内容及び程度 ②違反によって阻害される行政目的の内容及び程度 ③違反により近隣住民の受ける被害の内容及び程度 ④是正命令により建築主の受ける不利益の程度 ⑤建築主による自発的な違反解消措置の取られる見込み ⑥建築主に対する指導など他の手続による違反解消の見込み などの諸般の事情を考慮した上でその合理的な判断に基づいて発せられるものであるとしつつ、是正命令権限を行使するとした場合、誰に対し、どのような内容の是正命令を発令するか、いつ是正命令を発令するか、どのような手続を経て是正命令を発令するか等を決した上で、行使されるものであり、上記のような各判断は、特定行政庁の裁量に委ねられていると解される。」とした。同時に、「しかしながら、このように行政庁に裁量が委ねられた行為に付いても、具体的事情の下において、当該権限が付与された趣旨・目的に照らし、当該権限を行使しないことが著しく不合理であり、裁量権の逸脱・濫用と認められるような特段の事情がある場合には、当該権限を行使すべき一義的に明白な義務があるというべきであり、この場合には、もはや行政庁の一次的判断権を尊重する事は重要でないというべきである」としている。

ウ 義務づけ訴訟における不開示部分の証拠としての重要性
そこで、上記判例に照らしてみると、本件異議申立ての対象とした非開示部分は、 後日義務づけ訴訟(行政事件訴訟法第37条の2)の提起に至る場合、行政庁の裁量権の逸脱・濫用(同法同条第5項後段〉 を主張・立証する上で、極めて重要な証拠としての価直を有し、訴訟の帰趨を制し、勝敗を決するものとなる。殊に、判例の示す④・⑤・⑥の判断要素の立証には不可欠のものと考えられる。最後に司法制度の利用には、時間と資料の上で大きな制約もあり、かつ、行政庁の側に証拠の偏在する事の多い行政事件訴訟が、公正かつ迅速に行なわれるよう、当事者は、信義に従い誠実に行政訴訟を追行しなければならない(行政事件訴訟法第7条・民事訴訟法(平成8年法律第109号)第2条)上からも本件公文書の開示が期待される。

5 審査会の判断
(1) 違反建築物に対する指導、命令、報告等に係る事務について
まちづくり調整局建築審査部建築審査課(以下「建築審査課」という。)は、市民等から違反建築物に係る相談、陳情、苦情等が寄せられると、対象建築物の敷地地番、相談者等の氏名、相談内容等を確認し、対象建築物等の調査を行い、必要な場合は、違反建築物の建築主、所有者、工事施工者等に対し、是正のための指導や建築基準法第9条第7項及び第10項に基づく命令を行っている。これらの指導及び命令によっても違反が解消されない場合には、建築審査課は、まちづくり調整局建築監察部違反対策課(以下「違反対策課」という。)に措置依頼を行い、違反対策課が引き続き、指導や命令を行っていくこととなる。
本件に係る建築物(以下「本件建築物」という。)については、建築基準法第6条に基づく確認申請がされていないことなどの違反があるため、違反対策課が建築主に対し是正指導を行っていることが認められる。

(2) 本件申立文書について
文書1は、違反対策課が是正指導を行っていくことを決定した起案文書であって、建築審査課が作成した措置依頼書並びに関係資料としての指導調書、案内図、配置図、公図の写し、不動産登記事項証明書、道路台帳区域線図及び現地写真で構成されている。
文書2は、違反対策課が本件建築物の建築主に対し、事情聴取を行うことを決定した起案文書であり、起案表紙、起案本文及び呼出通知の案文で構成されている。
文書3は、本件建築物の建築主に対して行った事情聴取の結果を供覧した文書であり、起案表紙、起案本文及び事情聴取報告書で構成されている。
実施機関は、文書1に記録された指導経過及び文書3に記録された聴取の概要(以下「指導経過等」という。)、文書1、文書2及び文書3に記録された建築主等の氏名(以下「本件建築主の氏名」という。)、文書1及び文書2に記録された建築主等の住所(以下「本件建築主の住所」という。)並びに文書1に記録された車のナンバー(以下「車のナンバー」という。)を非開示としている。
また、実施機関が非開示とした本件建築主の氏名及び本件建築主の住所は、建築主、違反者及び被聴取者の情報として記録されているが、既に開示されている情報から建築主と同一人物の氏名及び住所であることが明らかである。

(3) 条例第7条第2項第6号の該当性について
ア 条例第7条第2項第6号では、「市の機関・・・が行う事務又は事業に関する情報であって、公にすることにより、・・・当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの」については、開示しないことができると規定している。

イ 実施機関は、指導経過等は、違反に至った経緯や違反是正に関する違反者の発言及び横浜市の指導内容等が詳細に記録されており、これを開示することにより、当該違反者又は当該違反者以外の者が、建築基準法等に違反する建築物等の所有者等に対して横浜市が行う是正指導対応の傾向を把握できることとなり、事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあることから、本号に該当し、非開示としている。

ウ 当審査会が本件申立文書を見分したところ、指導経過等には、違反者の発言及び是正指導の具体的な内容に関する情報が記録されていることが認められた。当該情報を開示すると、当該違反者又は当該違反者以外の者が、違反者等に対して横浜市が行う是正指導対応の傾向を把握できることとなり、是正指導に従わず、是正命令等の行政処分の対象とまではならない違反が繰り返しなされるおそれがあることなどが考えられる。したがって、現在及び将来の是正指導の業務が適切に行われなくなることから、事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあり、本号に該当する。

(4) 条例第7条第2項第2号の該当性について
ア 条例第7条第2項第2号本文では、「個人に関する情報・・・であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)」については、開示しないことができると規定している。
また、本号ただし書アでは、本号本文に該当する個人に関する情報であっても、「法令等の規定により又は慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報」については、開示しないことができる情報から除くと規定している。

イ 実施機関は、本件建築主の氏名、本件建築主の住所及び車のナンバーは、本号に該当すると主張している。

ウ 実施機関が本号に該当するとした情報は、個人に関する情報であって、当該情報それ自体から又は他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができるものであり、本号本文に該当する。

エ 本号ただし書の該当性について検討する。
まず、上記ウにおいて本号本文に該当すると判断した情報のうち、車のナンバーについては、本号ただし書のいずれにも該当しない。
次に、本件建築主の氏名及び本件建築主の住所の本号ただし書の該当性について検討する。
建築主は、建築基準法第6条に基づき確認申請をしなければならないとされており、確認申請の際は建築基準法施行規則(昭和25年建設省令第40号)第1条の3に基づき建築計画概要書を提出することとされている。また、建築基準法施行規則別記第三号様式により、建築主の氏名及び住所は建築計画概要書に記録することとされている。さらに、建築計画概要書は建築基準法第93条の2及び同法施行規則第11条の4第1項の規定により閲覧に供することとされている文書であることから、建築主の氏名及び住所は、本号ただし書アに規定する法令等により公にされている情報に当たるものである。
本件についてみてみると、本件建築物については確認申請がされておらず、建築計画概要書は存在しないとのことであるが、上記のとおり建築主は確認申請をしなければならないことから、本件建築物についても本来なら建築計画概要書は当然存在し、閲覧に供されているべき文書である。したがって、本件建築主の氏名及び本件建築主の住所は、法令等の規定により公にすることが予定されている情報であると解することが妥当であり、本号ただし書アに該当し、開示すべきである。

(5) 結 論
以上のとおり、実施機関が、本件申立文書を一部開示とした決定のうち、条例第7条第2項第2号に該当するとして本件建築主の氏名及び本件建築主の住所を非開示とした決定は妥当ではなく、開示すべきであるが、その余の部分を非開示とした決定は妥当である。

(第二部会)
委員 金子正史、委員 池田陽子、委員 高見沢 実

《 参 考 》
審査会の経過
(略)