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情報公開審査会の答申などを集めて載せています。

静岡県情報公開審査会 諮問第122号 平成14年9月11日の出張に係る復命書

2004年03月19日 | 事務・事業に関する情報
静 情 審 第 73 号
平成16年3月19日

静岡県知事 様

静岡県情報公開審査会
会長 小 野 森 男

静岡県情報公開条例第19条の規定に基づく諮問について(答申)

平成15年2月7日付けによる下記の諮問について、別紙のとおり答申します。

平成14年9月11日の出張に係る復命書の部分開示決定に対する異議申立て(諮問第122号)


別紙

1 審査会の結論
 静岡県知事が非開示とした部分は、開示すべきである。

2 異議申立てに至る経過
(1) 平成15年1月15日、異議申立人は、静岡県情報公開条例(以下「条例」という。)第6条第1項の規定により、静岡県知事(以下「実施機関」という。)に対し、熱海財務事務所の職員が知事要求監査の関係で平成14年9月11日に県庁に出張した際の報告書類の開示を請求した。
(2) 実施機関は、この開示請求に対応する公文書として、熱海財務事務所の職員が平成14年9月12日付けで作成した復命書 (以下「本件公文書」という。)を特定した。
(3) 平成15年1月17日、実施機関は、本件公文書の復命内容に係る部分のうち7行目から9行目までの部分(以下「本件非開示部分」という。)について条例第7条第2号に該当するとの理由で非開示とし、その他の部分については開示する旨の部分開示決定(以下「本件処分」という。)を行い、異議申立人に通知した。
(4) 平成15年1月27日、異議申立人は、本件処分を不服として行政不服審査法第6条の規定により実施機関に対し異議申立てを行い、同日、実施機関はこれを受け付けた。

3 異議申立人の主張要旨

異議申立ての趣旨は、本件処分の取り消しを求めるというものであり、異議申立人が異議申立書等で主張している異議申立ての理由は、おおむね次のとおりである。

実施機関は、本件非開示部分には財務総室の職員が発言したとされる内容が記載されているが、記載内容は事実と相違があるため、開示することにより、個人の権利利益を害するおそれがあると主張している。しかし、そのように判断した根拠が示されていないため、その正当性を判断することができない。本当に個人の権利利益を害するおそれがあるのか疑問である。
復命書は熱海財務事務所の職員が作成した公文書である。このような公文書に、実施機関が主張するように、復命者が推測したあいまいかつ断片的なもので事実と相違した内容を記載しているとすると、それは不適切なことである。

4 実施機関の主張要旨

本件非開示部分には財務総室の職員が発言したとされる内容が記載されているが、記載内容は復命者が推測したあいまいかつ断片的なもので事実と相違があるため、開示することにより、当該職員が本件公文書に記載されたとおりの発言をしたかのように誤認され、個人の権利利益を害するおそれがある。

5 審査会の判断

当審査会は、本件公文書を審査した結果、以下のように判断する。
(1) 本件公文書の内容 本件公文書は、監査委員による知事要求監査の結果が公表された際の対応を協議するため、熱海財務事務所と本庁の財務総室との間で平成14年9月11日に行われた打合せについて、熱海財務事務所の職員が作成した復命書である。 本件公文書には、財務総室の職員が打合せの場において発言したとされる内容等が記載されている。
(2) 条例第7条第2号(個人情報)該当性 条例第7条第2号本文は、「個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)で、特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)又は特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるもの」を非開示情報として規定している。 しかしながら、条例第7条第2号ただし書においては、「ア 法令等の規定により又は慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報」、「イ 人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報」叉は「ウ 当該個人が公務員等(中略)である場合において、当該情報がその職務の遂行に係る情報であるときは、当該情報のうち、当該公務員等の職及び氏名並びに当該職務遂行の内容に係る部分。(後略)」のいずれかに該当する情報は、同号本文に該当するものであっても開示しなければならない旨を定めている。 当審査会が見分したところ、本件公文書の復命内容に係る部分のうち本件非開示部分を含む3行目から9行目までの部分(以下「本件発言内容部分」という。)には、本件公文書にその姓及び職が記載されている財務総室の特定の職員が打合せの場において指示した発言内容が記載されている。 したがって、本件発言内容部分は、全体として条例第7条第2号本文の特定の個人を識別することができるものに該当する。 しかしながら、一方において、本件発言内容部分は、当該職員の職務の遂行に係るものであることから、条例第7条第2号ただし書ウに該当すると認められる。
また、本件発言内容部分のうち本件非開示部分には、その職が記載されている別の職員の言動も引用されているが、この言動が引用された部分も、条例第7条第2号本文の特定の個人を識別することができるものに該当する。しかしながら、この部分も、当該職員の職務の遂行に係るものであり、条例第7条第2号ただし書ウに該当すると認められる。
なお、実施機関は、本件非開示部分の内容は、復命した者が特定の個人の発言を推測したあいまいかつ断片的なもので事実と相違があるため、開示することにより、当該職員が本件公文書に記載されたとおりの発言をしたかのように誤認され、個人の権利利益を害するおそれがあると主張する。
現時点において、打合せの場においてどのような発言がなされたのかを確認することは、もはや困難であり、発言の有無を含めてその真偽は不明と言わざるをえない。しかしながら、公文書の開示、非開示は、記載された情報の客観的な内容により判断されるべきものであり、その内容が虚偽であるか否かにかかわるものではない。
また、本件非開示部分は、その表現ぶりから確定的な内容とはなっていないことから、当該内容が事実として取り扱われるおそれは考えにくい。
したがって、本件非開示部分を開示することにより、当該職員が本件公文書に記載されたとおりの発言をしたかのように誤認され、個人の権利利益を害するおそれがあるとまではいえない。
(3) 条例第7条第6号(事務叉は事業に関する情報)該当性 条例第7条第6号は、「県の機関、国の機関、独立行政法人等又は他の地方公共団体の機関が行う事務又は事業に関する情報であって、公にすることにより、(中略)当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの」を非開示情報として規定している。
本件非開示部分には、監査結果の取扱いに関する要望が記載されていることから、本件非開示部分を公にすることにより、監査事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるかどうかについても併せて検討する。
条例第7条第6号の「事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの」に該当するというためには、「支障」の程度は名目的なものでは足りず実質的なものが要求され、「おそれ」の程度も単なる確率的な可能性ではなく、法的保護に値する蓋然性が求められる。 本件非開示部分には、監査の手法、項目等に係る詳細な情報のような監査に直接かかわる事柄ではなく、監査結果の取扱いに関する要望が記載されているにすぎず、また、要望があったからといって、直ちに監査結果の取扱いに影響があるとは考えにくい。
これらのことを考え併せると、本件非開示部分を公にすることにより、監査の対象となる事務の実態の把握が困難になるなど監査事務に具体的な支障が生ずることとなったり、監査の適正さに対する信頼が失われるとはいえない。 以上から、本件非開示部分は、条例第7条第6号の「事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの」に該当するとは認められない。
よって、「1 審査会の結論」のとおり判断する。

(別記)
年 月 日処 理 内 容審 査 会
平成15年 2月 7日諮問を受けた。
平成15年 2月 7日実施機関からの意見書を受け付けた。
平成15年 6月30日実施機関からの意見書を受け付けた。
平成15年 7月 8日異議申立人からの意見書を受け付けた。
平成15年11月19日審議、第二部会へ付託第155回
平成15年12月17日第二部会において審議第156回
平成16年1月21日本会において審議第157回
平成16年2月23日本会において審議第158回
平成16年3月19日本会において審議(答申)第159回


静岡県情報公開審査会委員の氏名等(氏名は、五十音順)
氏 名職 業 等調査審議した審査会
上 野 征 洋静岡文化芸術大学 文化政策学部文化政策学科長第155回、第157回~第159回
大 村 知 子静岡大学 教育学部教授第155回、第157回~ 第159回
小 野 森 男弁護士第155回、第157回~ 第159回
佐 藤 登 美静岡県立大学 大学院看護学研究科長第156回、第158回、第159回
田 中 克 志静岡大学 人文学部教授第155回~第159回
山 中 崇 弘静岡新聞社 常務取締役第155回~第158回


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