付け焼き刃の覚え書き

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「燃えつきた橋」 ロジャー・ゼラズニィ

2007-11-22 | 破滅SF・侵略・新世界
「地球と、その上に生きるものすべてが、つねに商業的利害よりも下に置かれている」
 ロデリック・リーシュマンの言葉。

 凶弾に倒れた政治家がいた。彼は自分の死を知り、けれどその死が必要であることを確信してすべてを受け入れた。
 テロリストがいた。環境保護を主張する余り、誤った道、必然の道を辿ってしまった男女たちだ。
 そして少年がいた。
 少年は誰でもなく、誰でもあった。
 強度に発達したエンパシー能力を持って生まれてきた少年は、無意識に周囲の大人たちの思考や知識を吸収してしまい、彼ら自身になりきってしまう。まったくの別人として考え、語る少年。彼は常に誰かのコピーであり、彼自身は存在していなかった。
 治療のため、シンクロできる他人が周囲にいない世界……月面の治療施設に入所した少年は、今度は同調対象を求めて過去へ、過去へと遡っていく。今や彼はサンジェルマンであり、ルソーであり、レオナルド・ダ・ヴィンチである。そして……。

 『燃えつきた橋』はゼラズニイの作品中でも好きな1冊です。そりゃ「アンバーがいちばん」とか「伝書の薔薇を忘れるな」という声もあるでしょうが、最後の灰の橋を渡るシーンは泣けましたよ。彼は1人じゃなかったのです。

【燃えつきた橋】【ロジャー・ゼラズニィ】【ハヤカワ文庫】【環境問題】【悪魔】【エンパシー】

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