付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「クロニスタ 戦争人類学者」 柴田勝家

2016-05-03 | 破滅SF・侵略・新世界
「感情は、ひとえに意識から生まれる」
「意識は文明と文化の中にこそ生まれる」

 時代の空気ともいうべき、一般化された感性と認知こそが意識の正体だと、古人類学と難民研究の権威であるディエゴ・サントーニ。

 「自己相」と呼ばれる、個々人の認知や感情を生体通信によって人類全体で共有できる技術が普及した時代。人々は記憶を保存したり、嫌な感情を散らして心の平穏を図ったりする一方、他人や自己へ危害を加えたりすることに対してセーフティをかけるようになっている。
 そんな世界は共和制アメリカと大西洋世界に概ね二分されていたが、それ以外の人々……自己相による管理を嫌い、いわゆる文明を拒絶して難民として生きることを選択した人々もいた。
 軍属の人類学者シズマ・サイモンは、平和的手段で難民たちの文明化を推し進める人理部隊の一員としていたが、軍は難民をもはや人類文明の敵だと虐殺しようとしていた……。

 淡々と話が進むかと思いきや、「近未来軍事SFアクション」の売り文句に恥じず、急転直下で二転三転するノンストップアクションの中で淡々と語られる人類の全と個の位置づけ。
 謎の少女ヒユラミール自身には魅力が感じられず、主人公が他の全てを犠牲にするほどのものだったのかと思いましたが、よく考えるとシズマは彼女に恋してるとか愛してるとかそんな関係には思えません。ヒロインという意味ではフランチェスカの方が正統派。ヒユラミールは文化人類学者にとってのテーマ、ヒチコックいうところのマクガフィンでしかなかったのかもしれません。

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コメント
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