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付け焼き刃の覚え書き

 開設してからちょうど20年。はてなにお引っ越しです。https://postalmanase.hateblo.jp/

「子ひつじは迷わない~泳ぐひつじが3びき」 玩具堂

2011-06-09 | 学園小説(ミステリ)
「本当に人を好きになるってことは、その人になら裏切られようが殺されようが後悔をしない、覚悟を決めることなんだ」
 1年手芸部、春日友佳の言葉。

「男は女をしあわせにしなきゃいけないの。それをできない男はクズなの」
 1年、松宮楓の言葉。

 エルキュール・ポワロは容疑者のカードプレイから犯人を推理しましたが、文芸部の幽霊部員・仙波明希は容疑者の水泳スタイルから犯人を推理します。
 そして、名探偵の中には顎十郎のように推理に満足したら実際に犯人が捕まろうが逃げようが興味ない人もいますし、森博嗣の推理小説のようにトリックは見抜いても動機には興味ないというものもありますが、このシリーズは分業制。
 仙波明希は謎を解くけれど、それだけで事件は解決しません。真相を告げたり、時には間違った答えを依頼人を告げることで事件を解決するのは成田真一郎の仕事。でも、それがいつも巧くいくわけではないし、時には彼自身が傷ついたりします。
 傷つけ、傷つけられ、再生していくのが青春小説。そう言う意味で、由緒正しい青春小説でもあります(これで再生せずに、自壊していったら純文学なのかね?)。

【子ひつじは迷わない】【泳ぐひつじが3びき】【玩具堂】【籠目】【貴島煉瓦】【夏風邪】【プール】【日常系ミステリ】
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「“葵”~ヒカルが地球にいたころ……(1)」 野村美月

2011-06-08 | 学園小説(ミステリ)
 人気のシリーズが終わり、新シリーズが始まり、待つ身としては不安はあるわけです。前と同じような話の焼き直しだったらどうしようとか、ぜんぜん毛色の違った話で面白く読めなかったらどうしようとか。
 でも、読み始めたら、そんな心配は吹き飛んでしまいました。野村美月も竹岡美穂も今が旬だね、脂がのりきってるよ♪

「女に甘い顔を見せるな」
 赤城のじいさんの常套句。

 周囲の女性の誰からも愛された“皇子”こと帝門ヒカル。
 その彼が川で溺れ死んだとき、その幽霊が姿を見せたのは、誰からも嫌われ怖れられている赤城是光だった。
 是光にしか見えないし声も聞こえないヒカルは、彼に心残りを晴らすのに協力して欲しいと頼んでくる。そうしないと成仏できず、是光に憑いたままになってしまうというのだ……。

 ひとくちでいうと『源氏物語』+『ゴースト』だけれど、基本はヒカルと是光の友情物語。それに“文学少女”でもかいま見せた人間の暗い部分をぱらぱらとふりかけつつ、良い話になっています。ウーピー・ゴールドバーグがろくろを回してるくらい? まだカールは地獄に引きずり込まれてないし、デートのくだりはとても泣かせる良い話だったのに、ヒカルは最後の最後で台無しにしてるし、さてこれからどうなるんでしょ。
 悪人顔の3人家族というのも絵的には愉しいので、次巻ではぜひともイラスト化して欲しいもんです。

【“葵”】【ヒカルが地球にいたころ……】【野村美月】【竹岡美穂】【七つのプレゼント】【ミルクセーキ】【ハーレム大王】【人相の悪い主人公】
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「ハレの日は学校を休みたい!」 陸凡鳥

2011-06-03 | 学園小説(ミステリ)
「ごめんですんだら海兵隊はいらん!」
 詩ノ森ミアの怒り。

 学園祭嫌いな響川晴は「学園祭を中止しろ」という脅迫状の容疑者にされ、生徒会長タチアナの前に引き出される。
 響川は自らの潔白を証明するため、学園祭実行委員の詩ノ森ミアと組んで犯人捜しをすることになるのだが……。

 買うつもりも読むつもりもなかったのだけれど、店頭で表紙を見て衝動買い。こういう馬鹿なパレード風のイラストに弱いのだなあと痛恨。でも面白かったから、結果的に儲けもの。でも、ラストであっさりハッピーエンドで終わってしまって、それでいいのか!?と思わないでもありません。続編があるなら、そのあたりもきっちり説明していただきたい。
 それから、ミステリじゃないけれど、ミステリ的にも興味深いよね。1つの謎が解けることにより、新たな事実が提示され、それによって第2の犯罪が始動するという構造は面白いと思いました。
 軍人コスプレの詩ノ森ミアが「~であります」の軍隊口調なので、ビジュアルは全然違うのに渡辺久美子の声で脳内再生されちまいます。

【ハレの日は学校を休みたい!】【陸凡鳥】【キップ】【生徒会】【演劇部】【イラストレイター】【爆弾テロ】【らっきースケベ】【妹】【ロケット】
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「子ひつじは迷わない~回るひつじが2ひき」 玩具堂

2011-02-02 | 学園小説(ミステリ)
「常習性の偽りを本質と呼ぶのよ」
 本物だとか偽物だとかいう考えそのものが幻想なのだと仙波明希。

 生徒会長の思いつきでつくられた「迷わない子ひつじの会」も、生徒たちの悩み解決の場として信頼度が急上昇。今では生徒の恋愛相談からクラブ顧問の生徒指導まで、なんでもかんでも引き受けさせられている。
 ところが、今回生徒会長が直々に呼び寄せたような相談者は、メイド服の女子中学生。しかも、相談内容はバイト先の喫茶店がランチにオムライスを出すと死体が出てくるというもので……。

 ハーレクイン風にいうなら「ライトノベル・ミステリー」。とはいえ、物語というものは、たいていどこかしら「あの人はなぜこんなことをしたの?」といった謎解きとか、犯罪にまつわるエピソードなどミステリーの要素を内包していますから、その違いは多いか少ないかにすぎないのかもしれません。
 そう考えると、この話はミステリ濃度70%くらいかな。

 それはともかく、このシリーズは謎を解くこと=相談の解決ではないという二段構えの構成が異色で面白く、日常系ミステリのファンには是非一読を勧めたい作品です。
 生徒会室の隣で謎を瞬時に解いてしまう仙波も、今回は暑さにうなりながらゴロゴロだらだらぶりに磨きがかかっています。風が吹けば桶屋が儲かる今回の話もなかなか好きですが、自分としてはテストの解答話が今回のポイント。まさに「そういう方法だったか!」と脱帽。CDドラマ化もされるということで、これからの展開に期待します。

【子ひつじは迷わない】【回るひつじが2ひき】【玩具堂】【籠目】【日常の謎】【作家はみんなどこかしらヘンタイ】【読解問題】【メイドの喫茶】【オム神様】【ナポレオンズ】【ソフトボール対決】【ツンダラ】【安楽椅子探偵】
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「仮面教師SJ(1)」 麻城ゆう

2011-01-23 | 学園小説(ミステリ)
「生徒たちとの思い出を大切にしない教師に、生徒を指導する資質など存在しない」
 教育機構監査局長・笹蔵霧彦の言葉。

 小学校教師をめざす笹蔵十蔵は、土壇場になって採用拒否をされてしまう。彼の幼い頃に行方不明になった父親が、稀代の詐欺師だったことを密告されたからだ。
 そんな笹倉が教育機構監査局にスカウトされた。彼の父親譲りの才能を使い、悪質な学校を摘発するための潜入教師になれというのだが……。

 あれだ、「スケバン刑事」の教師版。それに「ジョー90」が入っているぞ。
 『特捜司法官』シリーズと同じ世界を舞台にした、そちらよりも少し前の時代の話。こちらも面白かったけれど、ちょっとタイトルが野暮ったいかな。そのままテレビドラマ化されても不思議はない内容とタイトルではありますけれど。

【仮面教師SJ】【麻城ゆう】【道原かつみ】】【ウィングス文庫】【和時計】【詐欺】【特捜司法官S-A】
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「放課後探偵団」 似鳥鶏 他

2010-12-20 | 学園小説(ミステリ)
「答えというのは、いつだって一番単純なんだよ」
 支倉春美の言葉。

 老舗の看板にあぐらをかかず、新規読者の開拓に余念がない創元推理文庫が、高校生らが主役の日常系ミステリーを(うち3人はまだ著作が刊行前という)若手作家に書かせたアンソロジー集。なので放課後探偵団。そういうタイトルの作品は収録されておりません。タイトルイラストがそれぞれについていて、既に著作が刊行されている作家についてはちゃんと同じイラストレイターを引っ張ってきているのは嬉しいよね。

 似鳥鶏は『理由あって冬に出る』シリーズの番外編。「シリーズ中最高の人気を誇る“あのひと”は登場しません」って、もしかして人気最高ってあの人?
 相沢沙呼も『午前零時のサンドリヨン』のバレンタインデー話。
 甘酸っぱかったり、ほろ苦かったり、高校生あたりの嬉し恥ずかし心の機微が描かれていて、きちんとした謎解きはあっても血生臭かったり複雑怪奇ということはない、日常系青春ミステリが5編。「聴き屋」シリーズとか他の作者の作品も刊行されたら買おうと思いました。それくらいハズレなしの作品集。

【放課後探偵団】【青春ミステリ】【似鳥鶏】【toi8】【鵜林伸也】【平沢下戸】【相沢沙呼】【加藤木麻莉】【市井豊】【スカイエマ】【梓崎優】【片山若子】【自主制作映画】【タイムカプセル】【野球部】【バレンタインデー】
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「子ひつじは迷わない~走るひつじが1ぴき」 玩具堂

2010-12-16 | 学園小説(ミステリ)
 第15回スニーカー大賞受賞作で、続刊の刊行とコミカライズとドラマCDは決定しているんだそうな。確かに手堅く面白いよね。装丁を変えて創元あたりから刊行されても不思議はない感じ。
 高校を舞台にした「日常の謎」系の連作ミステリ。絶壁でボサボサ髪の無愛想な少女が、隣の部屋から漏れ聞こえてくる話し声だけで、ラブレターの差出人捜しから未完の小説の完結編まで、生徒会に持ち込まれる謎を解き明かすという安楽椅子探偵もの。

「温かい言葉とは違って、冷たい言葉は生きているだけで日々その語彙を増やせるものなんですよ」
 生徒会書記・成田真一郎(なるたまいちろう)の言葉。

 生徒会がよろず悩み事を全力で解決しようという選挙公約は、意外にも実現してしまった。
 週1回開催される「迷わない子ひつじの会」は次第に校内の評判となっていくのだが、その解決策のほとんどが生徒会室の隣の部屋に潜り込んでいる幽霊文芸部員・仙波明希の毒舌から導き出されていることを知る者は少ない……。

 ナメクジ退治にビールの罠は効果的ですね。
 そんなに大がかりな罠は必要ないんですよ。紙コップにビールを半分くらい注いで……庭に半分くらい埋めておけば、1日2日でナメクジがわらわら集まってぷかぷかしてますぜ……。

【子ひつじは迷わない】【走るひつじが1ぴき】【玩具堂】【籠目】【ボーイ・ミーツ・ガール】【学内掲示板】【ノニ】【非Aの世界】【三国志】【スレドニ・ヴァシュタール】【ボンベイ型】
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「遠回りする雛」 米澤穂信

2010-10-22 | 学園小説(ミステリ)
 ここ最近ずっと、書店や出版社が大々的に売ろうとしているのが面陳の充実ぶりからうかがい知れる米澤穂信の代表作の1つ、古典部シリーズの第4弾。
 頭の回転は良いけれど省エネを最優先にのんべんだらりと暮らしていたい折木奉太郎と、旧家のお嬢さまだけれど好奇心旺盛な千反田えるが高校入学し、古典部に入部してからの1年間に起きた出来事のあれこれを語った短編7本。
 謎の1つ1つは(難問かどうかは別として)本当にたいしたことはなくて、まさに日常系ミステリ。ただ、大事なことはそうして解かれていく謎ではなく、それぞれの事件をターニングポイントにして揺れ動く少年少女の心なのです。
 そういう意味ではミステリというより青春小説と呼ぶ方がふさわしいのかもしれません。

【遠回りする雛】【米澤穂信】【古典部】【学校の怪談】【合宿】【校内放送】【大晦日】【バレンタインデー】【ひな祭り】【日常系ミステリ】
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「僕と先輩のマジカル・ライフ」 はやみねかおる

2010-09-08 | 学園小説(ミステリ)
 正確には「僕と彼女と先輩のマジカル・ライフ」。
 幼馴染みの少女と共に大学に入学した快人が遭遇する奇々怪々な事件。でも本当に奇々怪々なのは、幼馴染みの霊能力者の春奈でもなければ、大学何年生だか自分でもわからない怪人・長宗我部慎太郎先輩でもない。カタブツここに極まれりの快人がいちばん奇々怪々です。こいつがいちばんわからんなー。

【僕と先輩のマジカル・ライフ】【はやみねかおる】【ゴツボ×リュウジ】【騒霊】【地縛霊】【河童】【木霊】【カッパのカータン】
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「クドリャフカの順番」 米澤穂信

2010-08-19 | 学園小説(ミステリ)
 いよいよ待望の文化祭が開幕。だが、古典部の面々は思わぬ大問題に頭を抱えていた。20部印刷予定の文集「氷菓」を印刷所が200部納品してきたのだ……。

 そもそも20部の本を印刷に出そうと思うのが間違いで、それくらい青とはいわないけれどコピー製本すれば良かったのに、なまじ同人誌即売会慣れしたメンバーがいたばかりに……という古典部シリーズの3冊目。
 ぼくの大学時代は湿式コピーの青焼きが主流で、ゼミとかサークルで「卒論を書くときの練習だ」とかいわれて泣きながらコピーしてました。乾式コピーと比較して、原稿と感光紙を挟んでコピー機械に通さないと行けない分面倒くさかったんだ。しかも、卒論を書く頃には簡単な白焼き(いわゆる普通のコピーです)が普及しちゃってたし。
 でも、今でも手軽な同人冊子としてコピー同人誌は現役。10部や20部の本はコンビニやキンコーズで作るものなのです。自分でそんなものを作らなくなってから、もう何年でしょうか……。

「絶望的な差からは、期待が生まれる。だけどその期待にまるで応えてもらえないとしたら、行き着く先は失望だ」

 隠しテーマとしては前作と同じでしょうか。凡人が努力に努力を積み重ねても手の届かない高みにまであっさり到達しておきながら、そんなことはたいした価値のあることじゃないと簡単に斬り捨ててしまう天才を前にした凡人はどうすべきか……どうしようもないんです。それは人それぞれのものであって無理強いはできないから。

【クドリャフカの順番】【米澤穂信】【古典部】【連続盗難事件】【ABC殺人事件】【わらしべプロトコル】
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「愚者のエンドロール」 米澤穂信

2010-08-18 | 学園小説(ミステリ)
「誰でも自分を自覚すべきだ。でないと。……見ている側が馬鹿馬鹿しい」
 “女帝”入須冬実の言葉。

 文化祭で上映する2年F組制作の、自主映画試写会に招待された古典部の4人。
 ところがミステリー映画は途中までの未完成、しかも招待した入須は脚本担当の生徒が倒れて結末がどうなるか知っている者がいない。犯人が誰か教えて欲しいと詰め寄られた。
 果たして尻切れトンボ映画に結末は見つかるのか……?

 古典部シリーズの2作目。ありがちな話だなあと思いつつ、人それぞれの解決を愉しませてもらいました。
 いろいろ書きたい感想はあるけれど、ネタバレになるんで、まあ、学生らしい面白いミステリでしたとだけ。

【愚者のエンドロール】【米澤穂信】【古典部】【自主映画】【文化祭】【犯人捜し】
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「氷菓」 米澤穂信

2010-08-15 | 学園小説(ミステリ)
 日常系の学園ミステリがふいに読みたくなったのだけれど、読もうと思った似鳥鶏の『理由あって冬に出る』のシリーズが丸ごとしまい込んだ場所を忘れて行方不明。
 代わりを探しに出かけた本屋で購入した『春期限定いちごタルト事件』も読んで面白いと思ったのだけれど、ヒロインの性格にちょっと引くものを感じてしまいました。そこで、小鳩君と小佐内さんシリーズの続編ではなく、同じ作者の別シリーズに流れてみました。なんというか、ちょうど書店が米澤穂信の特集で面陳をしていたのです。

 何事にも積極的に関わらないのが信条の折木奉太郎だったが、海外を放浪している姉の指示に従って古典部に入る。
 古典部が何をするところかだなんてしらないし興味もなかったが、姉に逆らうよりも黙って従っておいた方が省エネなのだ。ところが誰もいないはずの、鍵のかかった部室には先客がいた……。

 典型的な「日常の謎」系の学園ミステリで、この作品にはいわゆる犯罪とみなされるような事件は一切起こらない。その点で、学園を舞台とした日常系ミステリとしては等身大のリアル。メインの謎であるヒロインの叔父が関わった33年前の事件にしても、後味はよくないけれど「現実にあっても不思議はないな」と納得できるものだった。

 一方、登場人物は絞られている反面、カリカチュアされていて分かりやすい。頭が良いけれど自分から積極的に動きたくない“主人公”、一見するとお嬢さまタイプだけれど実は好奇心旺盛な“ヒロイン”、事情通で口の悪い“親友”。途中でこれにさらに1人が加わるのだけれど、すごくはっきり役割分担ができていて手堅い。このあたりは好き嫌いが別れるところだけれど、連作短編的な構成も含めて、自分はわかりやすく面白い話というところが好き。
 よし。このシリーズを追いかけていくとしよう。

【氷菓】【米澤穂信】【古典部】【エンヤ祭】【文集】
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「春期限定いちごタルト事件」 米沢穂信

2010-08-14 | 学園小説(ミステリ)


 ただ清く慎ましい小市民として生きていきたいと願い続ける高校一年生の小鳩君と小佐内さん。けれども、2人の前には頻繁に謎が現れる。
 それはあくまでささやかな謎ではあるけれど、小市民を目指す小鳩君としては知らぬ存ぜぬでスルーしたいのだが、なぜか謎を解く必要に迫られてしまう……。

 名探偵なんかになりたくない、「日常の謎」系の学園ミステリ。
 不自然なくらい小市民になりたいとするには、努力しないと小市民でいられなくなる素養が2人にあるわけで、小鳩君いわく「狐と狼」。
 小柄で引っ込み思案で甘い物好きの小佐内さん。でも、さすがにちょっと黒すぎます。

【春期限定いちごタルト事件】【米沢穂信】【ココア】【自転車泥棒】【詐欺】
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「フラン学園 会計探偵クラブ」 山田真哉

2010-02-25 | 学園小説(ミステリ)
 ヨット部に入ろうと期待に胸を膨らませて私立芙藍(フラン)学園に入学した杏莉だったが、ヨット部はなぜか突然に廃部となっていた。
 彼女の前に現れた謎の美女は「真相はここに書いてあるわ」と1枚の紙切れを手渡したが、それは確定申告書の第1表だった。
 第1表って、なに……?

 1枚の確定申告書からその裏に隠された意味を読み取る会計探偵クラブの活躍を描く連作短編集。「税金が分かる」というより「確定申告書から何が読み取れるか分かる」というビジネス・ミステリかな。ラノベ気分で読める税金のうんちく本。
 税金の話なのだけれど、著者が会計士のせいか、会計士は凄くて、税理士は会計士資格を持っている人間が余技に名義貸ししてもできる仕事……みたいな記述がちらほら見られ、真面目に職業倫理に従って職務を遂行している税理士さんは怒るだろうね。無免許運転を見つけた第三者が「知り合いが免許を持っているから、その人が運転していたことにすればいい」と提案するような話です。
 そういう意味では「一般人の確定申告への理解を深める」というより「会計士のイメージアップ」に貢献している作品。角川書店から文庫が、東洋経済新報社からソフトカバー版が出ているけれど、読み比べていないので中身が同じかは不明。
 高校生が主人公のライト・ミステリとしては標準。登場人物の理不尽な言動がなにかと気になりましたが、そもそもこの学園の設定そのものが理不尽なのかも知れません。自己責任のシステムと言いつつ、他人の債務を別の人格に負いかぶせるようになっているのですから……。

【フラン学園 会計探偵クラブ】【山田真哉】【税金】【会計士】【マンガ家】【税理士のニセモノ】
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「初恋ソムリエ」 初野晴

2009-12-21 | 学園小説(ミステリ)
「自己管理ができていないひとたちだけがスポーツジムに通うのと同じことで、自分で勉強できないひとたちが塾に行くんだよ」
 学校の試験や大学受験の勉強の八割くらいは学校から配布される教科書を読むだけで十分とハルタこと上条春太の言葉。

 顧問となった草壁先生と共に、廃部の危機にあった静岡県立清水南高校の吹奏楽部を立て直したチカとハルタだったが、部の予算は相変わらずで楽器の修理もままならない。
 そんな吹奏楽部に生徒会が持ち込んできたのは、20万円の予算と引き替えに、やはり廃部になりかけた地学部を再生した麻生美里という2年生を出頭させるという仕事だった……。

「忙しいだなんて、時間を持て余している馬鹿な大人がいう台詞だぞ」
 日野原生徒会長の言葉。

 この作品の前日譚である『退出ゲーム』の存在も知らなかったしいまだに読んでいないけれど、『午前零時のサンドリヨン』と同じく「さて次の企画は」で紹介されていた青春小説+本格ミステリーの短編4本。帯の推薦文は書店員さんたちです。

「本人の努力次第で決まる結果は、勝負とはいわないんだ」
 勘違いするなとDJサダキチの言葉。

 面白かったのは、ローカルFM局の番組を軸に展開される人狩りの物語「周波数は77.4MHz」でした。七賢者の人生相談や朗読に笑ったり頷いたりするのに忙しく、謎解きってなんかあったっけ?としばし考え込んでみたり。

【初恋ソムリエ】【初野晴】【七賢者】【鎌田行進曲】【老人介護施設】【クリームパン】【かつら】【バラ色の脳細胞】【おにぎり】【吹奏楽部】【エスペラント】
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