沖縄・台湾友の会

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「グーグルの黄昏」(その2)  グーグル、アップル、Xなど米テック大手が直面する独禁法

2024-09-29 10:17:40 | 日記
「宮崎正弘の国際情勢解題」 
     令和六年(2024年)9月29日(日曜日)弐
     通巻第8434号
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 「グーグルの黄昏」(その2)
 グーグル、アップル、Xなど米テック大手が直面する独禁法
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 <本稿は小誌8404号(9月11日)の続編です>

 24年9月27日、トランプ前大統領はグーグルのインターネット検索サービス表示の偏向ぶりについて、「明らかな選挙干渉」として司法省に訴追を求めた。グーグルはトランプの「悪い話ばかりを表示するシステムを活用し、他方でハリス副大統領に関しては良い話だけを公開している」とした。
グーグルばかりか、フェイスブックもひどい偏向である。
 しかしバイデン政権下の司法省はトランプの要求を聞き置く程度だ。トランプは「大統領に返り咲けば、グーグルの訴追を最大限のレベルで要求する」と息まいた。

 情報戦争は広義には「認知戦争」である。
 共和党が多数派の下院では九月に四本のアンチ中国の新法を可決したが、五本目があった。それは「中国のメール影響力に対抗する基金合法化法」と呼ばれるもので351 vs  
36票で可決され、上院に送られた。
 この法は中国の認知戦争における悪影響、とくにネット空間で闘われている偽情報、攪乱陽動という情報戦に対応するために設立する基金を合法とする内容、下院は今後五年間で16億ドルの予算を要求している。

 情報戦争の現場では別の法定戦も展開されている。
 グーグルはアイルランドで630億ユーロ(約8兆1840億円)もの利益を上げていたが税金を逃れていた。
アイルランドでは最高税率が12・5%であり、そのうえ外国企業の投資には課税しないという取り組みで海外から投資を呼び込んできた。この税制は2020年に廃止された。

 4000人の従業員を抱えるグーグル海外事業拠点では457億ユーロ(約5兆9300億円)の収益を得ていたにもかかわらず2億6300万ユーロ(約341億円)しか税金を支払っていなかった。

米国にも似通ったシステムがある。バイデンの地盤デラウェア州には「デラウェア・ループホール」(抜け穴)と呼ばれる税制があって、無形の資産(商標、ライセンス契約など)の収入には税金が課せられない仕組みだ。このため多くの米企業はデラウェア州に企業登記をおこなって節税対策に活用してきた。


 ▼EUもグーグルに巨額の罰金

EU司法裁判所は9月18日、グーグルに科した約14億9千万ユーロ(約2300億円)の制裁金を無効とする判断を示した。
オンラインの広告市場で競合する他社の参入を阻害した行為は独占禁止法違反として2019年に罰金が科されていた。EU司法裁判所の判決では、EU側が参入阻害について十分に立証できていないと理由をのべた。

欧州委員会は、グーグルが新聞や旅行情報のサイト運営事業者に広告配信を提供するに際して独占的な条件を提示したことは問題であり、競合他社の検索広告の参入を阻害したと判断し、グーグル側が反論、提訴していた。

グーグルをめぐる裁判は多くの国で提訴されており、本家アメリカでも首都ワシントンの連邦地裁はグーグルが競合他社を競争から排除し、オンライン検索と関連広告の独占状態を維持する目的で、違法行為をしたとする判決を言い渡している(24年8月)
グーグルは検索市場のおよそ90%を支配しているため独占禁止法違反だとして方々で訴訟されている。連邦裁判所がくだした判決は、グーグルの親会社アルファベットにとって大打撃となると予想されている。

司法省はすでにグーグルに対し是正措置を検討中である。
ブルームバーグ(8月13日)によれば、改善策として、(1)グーグルが開発した基本ソフトウエア(OS)「アンドロイド」や、ウェブブラウザ「クローム」など、グーグルの主要事業を切り離す。(2)テキスト広告を販売するために使用しているプラットフォーム「アドワーズ」を売却する。(3)グーグルが保有する膨大な検索データを競合他社に提供するよう強制する。

2024年3月21日、米司法省はアップルを「スマートフォン市場を独占し、競争相手を抑圧した」として独占禁止法違反で提訴した。
司法省は、アップルがアイフォンのアプリストアの支配権を悪用し、顧客と開発業者を「囲い込んだ」と解釈し、他社のアプリを妨害し、ライバル製品の魅力を低下させるために違法な手段をとったと非難した。
アップルは「一連の変幻自在のルール」を利用したり、自社のハードウエアとソフトウエアへのアクセスを制限したりして自社の利益を増やす一方で、顧客のコストを増大させ、技術革新を阻害した」と提訴理由をのべた。

 EUの欧州司法裁判所は9月10日にアイルランドにおける税優遇問題で、アップルに2兆円の追徴課税を決定した。この巨額はアップルの年間利益の一割に相当するが、すでにアイルランド政府に「仮払い」として2兆3000億円を支払い済みである。
 グーグルもアップルも税制と独禁法でつぎつぎと提訴がつづいてきた。


 ▼マイクロソフトもアマゾンも独禁法の標的

 2000年にマイクロソフトが独禁法違反で訴えられたケースでは、会社分割は回避されたが独占状態是正のためパソコンメーカーが、マイクロソフトと競合するソフトウエア開発企業とも柔軟に契約し、マイクロソフトのOS上で提供できるようにする措置が導入された。マイクロソフトに対するこの措置により、グーグルのような新興企業の成功がもたらされたのだ。
 アマゾンやメタなどもあちこちで裁判が展開されているが、大手テック企業全体に再編などをうながし、さらに若い企業の誕生をうながす措置でもある。

 一方、波にのって大躍進のエヌビディアは24年8月に決算発表があって、売り上げが4兆2900億円、純利益が2兆3700億円とした。常識的に株価は高騰するはずなのに9月3日にエヌビディア株価は9・5%の急落だった。SECが独禁法調査命令書を出したとブルームバーグが報じたからだ。
 半導体の雄「インテル」は赤字転落、1万5000人の解雇を発表したが株価は26%の暴落となった。

 ところでXのイーロン・マスクだが、ブラジル政府の極左政権と対立が続いている。
 ブラジルの最高裁判所判事がX(旧ツイッター)を停止すると警告したことが発端となった。マスクはモラリス最高裁判事を「判事のコスプレを着た邪悪な独裁者」と呼んで攻撃を強めた。

ブラジル最高裁は「マスク氏が24時間以内にブラジルで同社の新しい法定代理人を任命し、未払いの罰金を支払わなければXを停止する」と脅した。
マスクは、主に言論の自由と偽情報をめぐって論争を繰り広げてきた。Xは8月17日、判事の「検閲命令」に基づきブラジルでの事業を閉鎖し、スタッフを解雇するとした。
Xにたいしてブラジルは330万ドルの罰金、追加で190万ドルの罰金を課している。