沖縄・台湾友の会

《台湾に興味のある方》《台湾を愛する方》《不治の病・台湾病を患ってしまった方》皆んなで色々語り合いたいものです。

 「ロシアを勝たせるわけにはいかない。NATO軍派遣を」(マクロン仏大統領)   「われわれはウクライナを支援しているが、ロシアと戦争していない」(独首相)

2024-03-20 15:15:56 | 日記
「宮崎正弘の国際情勢解題」 
     令和六年(2024)3月17日(日曜日)弐
        通巻第8179号
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 「ロシアを勝たせるわけにはいかない。NATO軍派遣を」(マクロン仏大統領)
  「われわれはウクライナを支援しているが、ロシアと戦争していない」(独首相)
***************************************

 これまでNATO諸国の対ロシア戦争観は北欧、旧東欧(バルト三国を含む)、西欧、そして南欧と、異質なトルコ、ハンガリーとの間にいくばくかの『温度差』があった。

ハンガリーのオルバン首相かねてからウクライナ支援に消極的で、スウェーデンのNATO加盟にはトルコと共に反対した。ハンガリーはスウェーデンの戦闘機SAABのリースを、トルコはF16供与を取引条件に妥協した。
米国はトルコをなだめすかし、そのためにはトルコが配備したロシア製のS00(イスカンダル・ミサイル網)への制裁としてF16供与を棚上げしてきたのである。

 最前線でウクライナ支援への武器供与中継、要人のキエフ訪問拠点、そして多くのウクライナ難民を受け入れてきたポーランドが、支援姿勢を大きく変えた。
原因はウクライナ産農作物の輸入がポーランドの農家の経営を圧迫したためだ。この農民の抵抗は、ポーランドから、ドイツ、フランスへ飛び火した。

 NATO諸国に共通するのは「支援疲れ」である。
ロシア制裁による原油ガス供給の欠乏からエネルギー代金が高騰し、日常生活において光熱費の暴騰、物価高となった。またロシア進出の企業は現地工場を畳んだため、投資が無駄になった。ただし「95%の欧州企業は依然としてロシアでビジネスを継続中だ」とオールトリアのシャレンベルグ外相が指摘している。

フォン・デラ・ライオンEU委員長が提議した在欧ロシア資産凍結の利息分を、ウクライナ再建支援のために流用せよとする議論も一部実行に移されている。

在欧ロシア資産はおよそ3000億ドルで、このうちの2000億ドル強はベルギーの「ユーロクリア」が管理している。利息をウクライナ支援の武器代金に充てるとする政策は23年から実行されており、すでに17億ドルがウクライナへ送金された。
2027年までにロシア資産のうちユーロクリア保管分だけでも、150~200億ユーロの利息を生むと計算されている。


 ▼国際金融決済期間の魑魅魍魎

 「ユーロクリア」は国際証券決済機関で、1968年にモルガンが設立した。
 これは1963年のJFK『利子平衡税』導入の煽りを受けてのことで、現在はユーロ建てである。
世界中の株式や債券を含む有価証券を取扱い、資産保管サービス、証券貸借プログラム、送金サービスなど、広範囲のサービスを提供する国際組織。類似はもう一社「ユーロストリーム」がある。

ジェトロの『ビジネス短信』(2024年1月16日)の解説は次の通り。
「ロシア中央銀行は2023年12月11日、ロシアの投資家が保有する海外の有価証券で取引が禁止された有価証券などを、特定の口座を使い非居住者に対し売却することを可能にする中銀取締役会裁定外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(2023年12月8日付)を公表した。同裁定は、大統領令第844号「外国有価証券の取り扱いに関する経済的追加時限措置について」(2023年11月8日付)によって概要が公表されていた措置の細則に相当するもの。取引は、連邦政府委員会が規則や条件を定めたのちに開始される。
 EU理事会(閣僚理事会)は2022年2月25日に、金融分野を含めた対ロシア制裁を採択した。これを受け、欧州の国際証券決済機関であるユーロクリアやクリアストリームはロシアの投資家が所有する外国証券の取引の実施を停止し、ロシア中銀も停止された外国証券に対し取引制限を導入した。ロシア側の決済機関である国家決済保管所(NRD)も、2022年6月3日のEUによる対ロシア制裁パッケージ第6弾の一部として制裁対象に含まれ、ロシアの個人および機関投資家は凍結された有価証券の売却ができない状況が続いている。アントン・シルアノフ財務相によると、
ロシアの個人投資家が保有する凍結された有価証券の総額は約1兆5,000億ルーブル(約2兆4,000億円、1ルーブル=約1.6円)に達する」(引用とめ)。

 戦争支援で主導的役割を果たした英国も、ジョンソンが不在となって、ウクライナ支援に消極的となった。米国にいたってはバイデン政権の追加支援を議会が反対し、状況は泥沼化してしまった。

「ロシアを勝たせるわけにはいかない。NATO軍の直接派遣も選択肢だ」とマクロン仏大統領が言えば、「われわれはウクライナを支援しているが、ロシアとは戦争をしているわけではない」(独ショルツ首相)。
 これらの発言は3月16日にパリで開催された「ウクライナ支援国際会議』で飛びだしたのだが、マクロンのNATO軍派遣提議には、ただちに英国、ドイツ、イタリア、スペイン、チェコが反対した。

 かくしてNATOの温度差状況は、鮮明な亀裂となった。マクロン発言はむしろNATOの協調体制を掻きあらしたことになる。