「宮崎正弘の国際情勢解題」
令和四年(2022)6月13日(月曜日)
通巻第7365号 <前日発行>
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ゼレンスキー大統領、「シャングリラ対話」でも演説
台湾侵攻を回避させるには「事前制裁による専制予防攻撃だ」
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6月10日からシンガポールでおこなわれた「シャングリラ対話」はアジアの安全保障を話し合う国際政治の場で『アジア安全保障会議』が正式な名称、主宰は英国戦略研究所である。
初日の基調演説は岸田首相が行って「キシダ・ドクトリン」と自画自賛、国際社会は殆どが無視した。
注目されたのは米中国防相会議で、オースチン米国防長官と、魏鳳和・中国国防相が初めて面談形式の会合を持ったことだ。お互いに主張は平行線で、まったく噛み合わなかったが、対話の継続だけが確認された。
魏は獅子吼した。「もし、台湾が独立の動きを見せれば、われわれは断固軍隊を派遣し、いかなる犠牲をも顧みず、どれだけのコストがかかろうとも戦争に打って出る」。
オンラインの闖入者はウクライナのゼレンスキー大統領だった。
「台湾侵略を防ぐには、事前制裁による専制予防攻撃だ」。またホスト役のシンガポールに対しても一言。「小国がいきてゆくには国際法に従うのが智恵である」。
シャングリラ対話の前日、サンクトペテルブルグとモスクワでは、『ピョートル大帝生誕350年』の記念行事が厳かに行われ、プーチン大統領が出席した。
1672年6月9日生まれのピョートルはロシアの近代化と領土の拡大、西側へ接近を
成し遂げ、プーチンがもっとも尊敬する帝王である。サンクトペテルブルクは「聖なるピョートル」という意味で、1917年革命後、『偉大なる指導者レーニン』からレニングラードと名付けられたが、なじまず、昔の名前に戻った。
□◎○☆み○◎☆○や○☆△○ざ☆○◎◎き◎△☆□
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ロシア・ルーブルと中国人民元はなぜ暴落しないのか?
外貨準備にゴールド保有を増やしていた
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戦争直後のロシア・ルーブルの対日本円レートは0・6928だった。6月現在2・3799で侵攻前の1・6円台より高くなっている。ロシア株は侵攻直後の大暴落(610)から1324へと恢復中(侵攻前は1935だった)。
中国人民元は2020年3月に14円55銭から、6月現在は20円23銭と異様な高さみあり、上海株は逆に2021年までの高値3700台から、2800台に下落、なお下落傾向にある。.
ウクライナへの侵攻を、プーチンは「特別軍事作戦」と呼んだ。二日でキエフを占領し、ゼレンスキーを追い出して、モスクワ傀儡政権を立てる筈だったが、すっかり当てが外れた。
以後は東部ドンバス地方の軍事制圧に戦争基本方針を変えた。ロシアの当面の目標はドネツク、ルガンスクを制圧し、クリミア半島との回廊を死守することであり、このためにマリオポリでアゾフ連隊を破った。
一方、西側の経済制裁と企業、金融機関の一斉撤退で弱り切っている筈だが、ルーブルは暴落せず、意外に堅調だ。不思議である。
ひとつには欧州へのガス輸出をルーブル建てとしたこと、そして中国、インドのロシア石油とガスの爆買いである。いま一つの要素がある。それはロシアが外貨準備で金(ゴールド)比率を増やしてきたことである。
以下は2020年六月のロシア外貨準備
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ユーロ 1660億ドル(米ドル換算)
金 1280
米ドル 1250
人民元 680
英ポンド 330
そのほか 400
日本円は20年ぶりに1ドル=134円台。この円安は輸出競争力を高めているが、一方でインフレが発生しており、物価は10%近く上昇した。政府・日銀がプライマリー・バランスに固執しているため、経済の活性化、日本の蘇生はまだまだ遠い。
中国経済は断末魔の筈である。経済理論からすれば人民元は暴落する。不動産業界は壊滅状態、大企業のデフォルトが続出し、若者の失業率は、事実上20%を超えている。
そのうえ欧米の中国制裁は続行されている。
まして銀行の貸し出しは拡大している。ちなみに四月速報のローン残高は、上海大経済圏(揚子江デルタ=上海、浙江省、江蘇省、安徽省)だけの債務残高が7・7兆ドルで、前年比13・9%の増加となった(チャイナディリー、6月11日)
にもかかわらず、なぜ人民元が強いのか、死に体のゾンビがなぜまだのたうち回っているのか。どうやら国際金融の動きにその謎がありそうだ。
令和四年(2022)6月13日(月曜日)
通巻第7365号 <前日発行>
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ゼレンスキー大統領、「シャングリラ対話」でも演説
台湾侵攻を回避させるには「事前制裁による専制予防攻撃だ」
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6月10日からシンガポールでおこなわれた「シャングリラ対話」はアジアの安全保障を話し合う国際政治の場で『アジア安全保障会議』が正式な名称、主宰は英国戦略研究所である。
初日の基調演説は岸田首相が行って「キシダ・ドクトリン」と自画自賛、国際社会は殆どが無視した。
注目されたのは米中国防相会議で、オースチン米国防長官と、魏鳳和・中国国防相が初めて面談形式の会合を持ったことだ。お互いに主張は平行線で、まったく噛み合わなかったが、対話の継続だけが確認された。
魏は獅子吼した。「もし、台湾が独立の動きを見せれば、われわれは断固軍隊を派遣し、いかなる犠牲をも顧みず、どれだけのコストがかかろうとも戦争に打って出る」。
オンラインの闖入者はウクライナのゼレンスキー大統領だった。
「台湾侵略を防ぐには、事前制裁による専制予防攻撃だ」。またホスト役のシンガポールに対しても一言。「小国がいきてゆくには国際法に従うのが智恵である」。
シャングリラ対話の前日、サンクトペテルブルグとモスクワでは、『ピョートル大帝生誕350年』の記念行事が厳かに行われ、プーチン大統領が出席した。
1672年6月9日生まれのピョートルはロシアの近代化と領土の拡大、西側へ接近を
成し遂げ、プーチンがもっとも尊敬する帝王である。サンクトペテルブルクは「聖なるピョートル」という意味で、1917年革命後、『偉大なる指導者レーニン』からレニングラードと名付けられたが、なじまず、昔の名前に戻った。
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ロシア・ルーブルと中国人民元はなぜ暴落しないのか?
外貨準備にゴールド保有を増やしていた
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戦争直後のロシア・ルーブルの対日本円レートは0・6928だった。6月現在2・3799で侵攻前の1・6円台より高くなっている。ロシア株は侵攻直後の大暴落(610)から1324へと恢復中(侵攻前は1935だった)。
中国人民元は2020年3月に14円55銭から、6月現在は20円23銭と異様な高さみあり、上海株は逆に2021年までの高値3700台から、2800台に下落、なお下落傾向にある。.
ウクライナへの侵攻を、プーチンは「特別軍事作戦」と呼んだ。二日でキエフを占領し、ゼレンスキーを追い出して、モスクワ傀儡政権を立てる筈だったが、すっかり当てが外れた。
以後は東部ドンバス地方の軍事制圧に戦争基本方針を変えた。ロシアの当面の目標はドネツク、ルガンスクを制圧し、クリミア半島との回廊を死守することであり、このためにマリオポリでアゾフ連隊を破った。
一方、西側の経済制裁と企業、金融機関の一斉撤退で弱り切っている筈だが、ルーブルは暴落せず、意外に堅調だ。不思議である。
ひとつには欧州へのガス輸出をルーブル建てとしたこと、そして中国、インドのロシア石油とガスの爆買いである。いま一つの要素がある。それはロシアが外貨準備で金(ゴールド)比率を増やしてきたことである。
以下は2020年六月のロシア外貨準備
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ユーロ 1660億ドル(米ドル換算)
金 1280
米ドル 1250
人民元 680
英ポンド 330
そのほか 400
日本円は20年ぶりに1ドル=134円台。この円安は輸出競争力を高めているが、一方でインフレが発生しており、物価は10%近く上昇した。政府・日銀がプライマリー・バランスに固執しているため、経済の活性化、日本の蘇生はまだまだ遠い。
中国経済は断末魔の筈である。経済理論からすれば人民元は暴落する。不動産業界は壊滅状態、大企業のデフォルトが続出し、若者の失業率は、事実上20%を超えている。
そのうえ欧米の中国制裁は続行されている。
まして銀行の貸し出しは拡大している。ちなみに四月速報のローン残高は、上海大経済圏(揚子江デルタ=上海、浙江省、江蘇省、安徽省)だけの債務残高が7・7兆ドルで、前年比13・9%の増加となった(チャイナディリー、6月11日)
にもかかわらず、なぜ人民元が強いのか、死に体のゾンビがなぜまだのたうち回っているのか。どうやら国際金融の動きにその謎がありそうだ。