鍛冶俊樹の軍事ジャーナル
(2022年6月10日号)
*南太平洋諸島の争奪戦
4月19日に中国は、南太平洋にある島嶼国(とうしょこく)ソロモンと安全保障協定を結んだ。さらに5月30日、中国の王毅外相はやはり南太平洋にある島嶼国フィジーで開かれた南太平洋島嶼国外相会議で中国と安全保障協定を結ぶ意義を強調した。
軍事ジャーナリストである私が興味深く感じたのは、他でもない。これらの島々では第2次大戦中、日米両軍の死闘が繰り広げられたからである。特にソロモンの首都があるガダルカナル島は日米戦争の天王山となり、ここで日本は敗退して敗戦の道を歩むこととなった。
では日本はなぜ、これらの島々に進出したのか?これについては豊田穣(とよだじょう)著の「海軍軍令部」に詳しいが、当時、日本海軍の軍令部は米豪分断を意図していた。地図を見れば明らかだが、ここを日本が占領すれば米国とオーストラリアの海上交通を断てるのである。
さて、かつての日本海軍の意図が米豪分断にあったのであるから、現在、海洋進出を強める中国の意図もまた、米豪分断にあると見てよいのではないか。昨年9月、米、英、豪はインド太平洋の平和と安定を維持するための軍事的枠組みとしてAUKUS(オーカス)を創設した。
中国がAUKUSの分断を狙って南太平洋諸島に進出を図っていると見るのが、歴史的にも戦略的にも自然な見解なのである。ウクライナはもとより、南太平洋でも昨今の世界情勢の激変ぶりは、やはり第2次世界大戦を彷彿させるのである。
(2022年6月10日号)
*南太平洋諸島の争奪戦
4月19日に中国は、南太平洋にある島嶼国(とうしょこく)ソロモンと安全保障協定を結んだ。さらに5月30日、中国の王毅外相はやはり南太平洋にある島嶼国フィジーで開かれた南太平洋島嶼国外相会議で中国と安全保障協定を結ぶ意義を強調した。
軍事ジャーナリストである私が興味深く感じたのは、他でもない。これらの島々では第2次大戦中、日米両軍の死闘が繰り広げられたからである。特にソロモンの首都があるガダルカナル島は日米戦争の天王山となり、ここで日本は敗退して敗戦の道を歩むこととなった。
では日本はなぜ、これらの島々に進出したのか?これについては豊田穣(とよだじょう)著の「海軍軍令部」に詳しいが、当時、日本海軍の軍令部は米豪分断を意図していた。地図を見れば明らかだが、ここを日本が占領すれば米国とオーストラリアの海上交通を断てるのである。
さて、かつての日本海軍の意図が米豪分断にあったのであるから、現在、海洋進出を強める中国の意図もまた、米豪分断にあると見てよいのではないか。昨年9月、米、英、豪はインド太平洋の平和と安定を維持するための軍事的枠組みとしてAUKUS(オーカス)を創設した。
中国がAUKUSの分断を狙って南太平洋諸島に進出を図っていると見るのが、歴史的にも戦略的にも自然な見解なのである。ウクライナはもとより、南太平洋でも昨今の世界情勢の激変ぶりは、やはり第2次世界大戦を彷彿させるのである。