「宮崎正弘の国際情勢解題」 令和三年(2021)10月5日(火曜日) 通巻第7072号 <前日発行> ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ パンドラ文書の衝撃度は、パナマ文書に比べると低いが 世界の権力者、有名人はタックスヘブン利用が巧いことも判明した *************************************** 「パナマ文書」に続く告発シリーズだが、今回の報告者はICIJ(國際ジャーナリスト調査コンソシアム)が作成し、世界の富豪の330人以上がタックスヘブンを利用して、資産を隠していることを名前を挙げて暴露した。それが「パンドラ文書」である。 過去にも世界の政治指導者、有名人、俳優らが屡々タックスヘブンを利用してきたことは、「パラダイス文書」、「パナマ文書」などが暴露してきた。 パンドラの箱を空けようとして取材していた記者が居た。2017年10月にマルタで起きた女性ジャーナリスト暗殺事件がある。カルアナ・ガリシアは、脱税やタックスヘブンの実態逃散を追っていて、マフィアに銃殺された。 ICIJにはワシントンポスト、BBC、ガーディアン、朝日新聞、共同通信など主として左翼系の記者が任意に加わっており、600人以上のジャーナリストが参加したという。彼らが入手した資料は、英領ヴァージン諸島、パナマ、ベリーズ、キプロス、アラブ首長国連邦(UAE)、シンガポール、スイスなどの14の金融機関、おおそ1200万件のファイル。 とくに海外のオフショア市場を利用した取引や、タックスヘブンに法人設立は、多くの国で合法であり、けたたましく叫ぶほどの問題ではないが、ジャーナリズムはこういう報道が好きなのだ。 例証のトップはヨルダンのアブドラ二世国王である。英米で1億ドルの不動産を購入していた。 またトニー・ブレア元英国首相と妻は、2017年7月にロンドンでビルを購入したが取得税を納めていなかった。なぜならオフィスビルを所有していた海外企業を買収する形だったからだ。 ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は名指しされていないが、側近のひとりがモナコにもつ隠し資産が浮上した。 アゼルバイジャンのイルハム・アリエフ大統領は英国で5億ドルの不動産取引に関与している。しかし、「パンドラ文書」で判明した取引の多くは、違法ではない。 ケニアのケニヤッタ大統領、キプロスのニコス・アナスタシアディス大統領、ウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領は、2019年大統領選で当選する直前に、資産を秘密の国外企業に移していた。 チェコのバビデ首相は南仏に別送を購入した。 また芸能界でもコロンビアの歌手シャキラ、ドイツのスーパーモデル、クラウド・ファシファー、インドのクリケット選手、サテン・テンダルカル、そのうえIMF元理事長のストラウス・カーンも、モロッコで700万ドルの資産運用もばれた。 パキスタンのイムラン・カーン首相は、財務相のシャウカド・タリン、前首相アドバイザーだったマスート・カーンの息子らの不正蓄財を指摘された。 名指しされたも同然となって怒りを静かに著したのはイムラン・カーン首相は元クリケット選手で、ぱきすたンの国民的英雄だ。 「パキスタン政府は全力を挙げて名前の挙がった人を調査する。しかし、もし間違っていたら、ICIJはいかなる責任を取るのか。ただし世界の国々では腐敗が蔓延しており、これは気象問題と同じ、危険な問題であることは承知している」とツィッター発信した。 |
AC通信 No.863 (2021/10/02)
AC 論説No.863「アフガン総撤退」公聴会
アフガン総撤退は米国だけでなく世界諸國の軍事、外交方面に大きな影響を与えた。にも拘らず米国の
国会で行なわれたアフガン総撤退に関する公聴会は外国のメデイアが一部しか報道していない。バイデ
ンの失敗はアメリカ開国以来最悪の失敗だが、アメリカのメディアはDeep State の手先だから詳細を報
道しないのだ。CNNやNBCの報道は事実を捻じ曲げたり、勝手な解釈を加えたりしている。
国会では9月28と29の両日にバイデンのアフガン総撤退について公聴会を行った。喚問されたのは
オースチン国防部長、マッケンジー中央司令長官(Central Command、G3)、ミリー統合参謀本部議
長(つまり参謀総長、G2)の3人である。
公聴会は28日に上院の軍事委員会、29日に下院の同委員会で行われた。公聴会はアフガン撤退でこ
のような大失敗が起きた軍部トップの解釈を聞くことだが、アフガン問題の他にもミリー参謀長が2020
年10月26日と21年1月8日に二度中国の李作成参謀長に電話したことの諮問会でもあった。
公聴会では真っ先にアフガン政府が二週間で崩壊したことや米軍の撤退作戦の明らかな失敗などだが、
驚いたことに召喚された3人の将軍がバイデン大統領に少なくとも2500人の兵士を残すべきだと進言し
ていたと証言したのである。3人とも作戦上の失敗はバイデンが彼らの進言を聞き入れなかったからと責
任を回避しているように見える。彼らは軍隊がバイデンの命令を遂行した結果、多数のアメリカ人と家
族を残し、850億ドルの最新武器を残して撤退した責任はバイデンにあると言っているのだ。
無様な撤退作戦の責任を追求され、辞職を迫られたミリー参謀長は「私は軍人である。バイデンが私の
意見を聞かなかったために辞職するのは文民統制の規則に反することだ」と答えた。トランプを裏切っ
て中国に電話した売国奴軍人が文民統制を掲げて責任回避をしたのは笑止のいたりである。
この証言でバイデンが嘘をついたことが明らかになった。バイデンはアフガン撤退で少なくとも6回の
嘘をついた記録がある。アメリカ国民を一人も残すことは絶対にしない、最後の一人が帰国するまでは
撤退しない、アフガン政府は崩壊するはずがない、タリバンはアフガン政府軍と戦えない、アル・カイー
ダは一人もアフガンにいない、などである。
バイデンは誰も2500人の兵隊を残せと進言しなかったとABCの記者に強調したのである。ABCの
George Stephanopoulosと対談した際に、記者から軍部が撤退を遂行するために少なくとも2500人の
兵士が必要と進言しなかったかと聞かれ、バイデンは2回もNOと返事をした。バイデンは嘘をついた、
つまりアフガン総撤退の失敗はバイデンの決定によるものだ。でも公聴会は軍のトップを召喚しただけ
でバイデンを召喚して証言を取ることもできない。
次はミリー参謀長が結論したアフガン撤退は「戦略的失敗」だったという証言である。アフガン総撤退
はアメリカだけでなくやNATO諸国と日本に大きな影響をもたらした戦略的失敗である。しかしこれは作
戦上の失敗でもある。撤退に当たって米軍は今になってもアフガンに残留しているアメリカ人と家族の
人数も知らない。バイデンはもちろんだが軍隊はアメリカ国民をアフガンに残したまま撤退した責任を
負うべきである。しかも米軍は850億ドルの武器弾薬、補給品などを置き去りにして撤退したのであ
る。明らかに作戦上の失敗である。
もう一つの大失敗はカブール空港に押し寄せた難民とアフガンから退去するアメリカ人の安全を維持す
るため空港の入り口を守護していた米軍がISISーKの自爆テロの侵入を防げなかったことだ。このため自
爆テロが起きて13人の米兵と180人の難民が自爆テロで死亡した。しかも自爆テロの翌日に米軍が報復
作戦でドローンを使ってISISをミサイルで殺害したと発表したが、実際に殺害したのは7人の子供と3人
の大人の親米アフガン人だったのだ。
ミリー参謀長が中国の李作成参謀長に2回も電話したことは上院と下院で厳しく追求された。ミリーは
2020年の10月26日、つまり総選挙の十日前に李作成に電話して「トランプは中国を攻撃する気は無い
が、若しも攻撃するようなことがあったら事前に通知する」と伝えたのである。トランプの攻撃命令、
それも自分勝手に想像したトランプの暴走の可能性を敵に通達すると約束した通敵行為、国家反逆罪で
ある。
ミリー参謀長はコットン上院議員の質問に「中国は(トランプが落選で暴走して)中国を攻撃すること
を心配しているという情報を得た。それで相手に安心させるために電話した。これは私の任務である」
と陳述した。上司であるトランプが「中国を攻撃する可能性」があると自己判断で決めた、その上でこ
の可能性を敵国に通知したのである。文民統制の原則を知っていると自認しながら上司を裏切って敵に
通達したのである。コットン上院議員がどうして辞職しないかと詰問したら答えなかった。
ミリーの二度目の電話は21年1月8日である。1月6日に国会乱入事件が起きたあとペロシ下院議長が
ミリーに電話して「トランプは気狂いだから核戦争を起こすかもしれない」と言ったので、ミリーは「核
攻撃の決定権は大統領にあるけれど、大統領が決定するまでに幾多の手筈があるから簡単に核戦争を始
めことはできない」と説得したという。
つまりミリー参謀長はトランプが勝手に核戦争を始めることはできないと知っていた、けれどもペロシ
が心配しているから李作成に電話した。ペロシの電話の後で李作成に電話したと言って責任回避をした
のである。Dan Sullivan議員に辞職を迫られたミリー参謀長は「私はバイデン大統領の部下である」と
答えた。トランプを裏切った男がバイデンに忠誠を示して辞職を拒否したのである。
ミリーの叛逆罪はもう一つある。公聴会でミリーは中国の参謀長と2度も電話したことや、その他の軍事
事情をワシントンポストのBob Woodwardに話した事を明らかにした。Bob WoodwardとRobert
Conchaはミリーから得た情報を使って「PERIL(差し迫った危機)」というトランプ批判の本を出し
た。Woodwardは反トランプで知られる記者である。軍人ミリーはトランプに叛逆して中国と通じてい
たことやその他の軍事情報を新聞記者のウッドワードに洩らしたのである。
少し長くなったが簡単な結論を述べる:
1。公聴会では数人の民主党議員が彼らを弁護していた。ある議員はトランプがミリー参謀長を任命し
たからトランプの責任だと言い、ある議員はアフガン問題は20年ブッシュの責任だと言った。
2。バイデンの嘘が明らかになったが議会はバイデンを裁けない。
3。バイデンはミラー参謀長の反逆罪も調査する気がない。ミラーを裁判にかけるのは難し
4。公聴会の結果は事態の揉み消しに終始している。アフガン失敗の調査は尻つぼみになるだろう。
5。ミリーの反逆には多くの疑問がある。この次の記事で詳しく分析する。
AC 論説No.863「アフガン総撤退」公聴会
アフガン総撤退は米国だけでなく世界諸國の軍事、外交方面に大きな影響を与えた。にも拘らず米国の
国会で行なわれたアフガン総撤退に関する公聴会は外国のメデイアが一部しか報道していない。バイデ
ンの失敗はアメリカ開国以来最悪の失敗だが、アメリカのメディアはDeep State の手先だから詳細を報
道しないのだ。CNNやNBCの報道は事実を捻じ曲げたり、勝手な解釈を加えたりしている。
国会では9月28と29の両日にバイデンのアフガン総撤退について公聴会を行った。喚問されたのは
オースチン国防部長、マッケンジー中央司令長官(Central Command、G3)、ミリー統合参謀本部議
長(つまり参謀総長、G2)の3人である。
公聴会は28日に上院の軍事委員会、29日に下院の同委員会で行われた。公聴会はアフガン撤退でこ
のような大失敗が起きた軍部トップの解釈を聞くことだが、アフガン問題の他にもミリー参謀長が2020
年10月26日と21年1月8日に二度中国の李作成参謀長に電話したことの諮問会でもあった。
公聴会では真っ先にアフガン政府が二週間で崩壊したことや米軍の撤退作戦の明らかな失敗などだが、
驚いたことに召喚された3人の将軍がバイデン大統領に少なくとも2500人の兵士を残すべきだと進言し
ていたと証言したのである。3人とも作戦上の失敗はバイデンが彼らの進言を聞き入れなかったからと責
任を回避しているように見える。彼らは軍隊がバイデンの命令を遂行した結果、多数のアメリカ人と家
族を残し、850億ドルの最新武器を残して撤退した責任はバイデンにあると言っているのだ。
無様な撤退作戦の責任を追求され、辞職を迫られたミリー参謀長は「私は軍人である。バイデンが私の
意見を聞かなかったために辞職するのは文民統制の規則に反することだ」と答えた。トランプを裏切っ
て中国に電話した売国奴軍人が文民統制を掲げて責任回避をしたのは笑止のいたりである。
この証言でバイデンが嘘をついたことが明らかになった。バイデンはアフガン撤退で少なくとも6回の
嘘をついた記録がある。アメリカ国民を一人も残すことは絶対にしない、最後の一人が帰国するまでは
撤退しない、アフガン政府は崩壊するはずがない、タリバンはアフガン政府軍と戦えない、アル・カイー
ダは一人もアフガンにいない、などである。
バイデンは誰も2500人の兵隊を残せと進言しなかったとABCの記者に強調したのである。ABCの
George Stephanopoulosと対談した際に、記者から軍部が撤退を遂行するために少なくとも2500人の
兵士が必要と進言しなかったかと聞かれ、バイデンは2回もNOと返事をした。バイデンは嘘をついた、
つまりアフガン総撤退の失敗はバイデンの決定によるものだ。でも公聴会は軍のトップを召喚しただけ
でバイデンを召喚して証言を取ることもできない。
次はミリー参謀長が結論したアフガン撤退は「戦略的失敗」だったという証言である。アフガン総撤退
はアメリカだけでなくやNATO諸国と日本に大きな影響をもたらした戦略的失敗である。しかしこれは作
戦上の失敗でもある。撤退に当たって米軍は今になってもアフガンに残留しているアメリカ人と家族の
人数も知らない。バイデンはもちろんだが軍隊はアメリカ国民をアフガンに残したまま撤退した責任を
負うべきである。しかも米軍は850億ドルの武器弾薬、補給品などを置き去りにして撤退したのであ
る。明らかに作戦上の失敗である。
もう一つの大失敗はカブール空港に押し寄せた難民とアフガンから退去するアメリカ人の安全を維持す
るため空港の入り口を守護していた米軍がISISーKの自爆テロの侵入を防げなかったことだ。このため自
爆テロが起きて13人の米兵と180人の難民が自爆テロで死亡した。しかも自爆テロの翌日に米軍が報復
作戦でドローンを使ってISISをミサイルで殺害したと発表したが、実際に殺害したのは7人の子供と3人
の大人の親米アフガン人だったのだ。
ミリー参謀長が中国の李作成参謀長に2回も電話したことは上院と下院で厳しく追求された。ミリーは
2020年の10月26日、つまり総選挙の十日前に李作成に電話して「トランプは中国を攻撃する気は無い
が、若しも攻撃するようなことがあったら事前に通知する」と伝えたのである。トランプの攻撃命令、
それも自分勝手に想像したトランプの暴走の可能性を敵に通達すると約束した通敵行為、国家反逆罪で
ある。
ミリー参謀長はコットン上院議員の質問に「中国は(トランプが落選で暴走して)中国を攻撃すること
を心配しているという情報を得た。それで相手に安心させるために電話した。これは私の任務である」
と陳述した。上司であるトランプが「中国を攻撃する可能性」があると自己判断で決めた、その上でこ
の可能性を敵国に通知したのである。文民統制の原則を知っていると自認しながら上司を裏切って敵に
通達したのである。コットン上院議員がどうして辞職しないかと詰問したら答えなかった。
ミリーの二度目の電話は21年1月8日である。1月6日に国会乱入事件が起きたあとペロシ下院議長が
ミリーに電話して「トランプは気狂いだから核戦争を起こすかもしれない」と言ったので、ミリーは「核
攻撃の決定権は大統領にあるけれど、大統領が決定するまでに幾多の手筈があるから簡単に核戦争を始
めことはできない」と説得したという。
つまりミリー参謀長はトランプが勝手に核戦争を始めることはできないと知っていた、けれどもペロシ
が心配しているから李作成に電話した。ペロシの電話の後で李作成に電話したと言って責任回避をした
のである。Dan Sullivan議員に辞職を迫られたミリー参謀長は「私はバイデン大統領の部下である」と
答えた。トランプを裏切った男がバイデンに忠誠を示して辞職を拒否したのである。
ミリーの叛逆罪はもう一つある。公聴会でミリーは中国の参謀長と2度も電話したことや、その他の軍事
事情をワシントンポストのBob Woodwardに話した事を明らかにした。Bob WoodwardとRobert
Conchaはミリーから得た情報を使って「PERIL(差し迫った危機)」というトランプ批判の本を出し
た。Woodwardは反トランプで知られる記者である。軍人ミリーはトランプに叛逆して中国と通じてい
たことやその他の軍事情報を新聞記者のウッドワードに洩らしたのである。
少し長くなったが簡単な結論を述べる:
1。公聴会では数人の民主党議員が彼らを弁護していた。ある議員はトランプがミリー参謀長を任命し
たからトランプの責任だと言い、ある議員はアフガン問題は20年ブッシュの責任だと言った。
2。バイデンの嘘が明らかになったが議会はバイデンを裁けない。
3。バイデンはミラー参謀長の反逆罪も調査する気がない。ミラーを裁判にかけるのは難し
4。公聴会の結果は事態の揉み消しに終始している。アフガン失敗の調査は尻つぼみになるだろう。
5。ミリーの反逆には多くの疑問がある。この次の記事で詳しく分析する。
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