新年明けて、穏やかなお正月も終わり、上野・西洋美術館で開催中の「クラーナハ展」に。
宗教改革のマルティン・ルターの肖像画を観たことあるが、「日本初、クラーナハの大回顧展」である。
15世紀から16世紀にかけての”ドイツ・ルネッサンスを代表する芸術家”クラーナハ。
回顧展は、宮廷画家であった彼の、キリスト教やギリシャ神話などの物語に題材を取った作品と、神聖ローマ帝国皇帝やザクセン候を描いた多くの肖像画、それに、クラーナハの絵画に影響を受けた後年の芸術家達ーマン・レイ、マルセル・デュシャン、ピカソ等の作品も展示され、芸術作品が次々に別の手と目によって更に新たな作品となっていく様なども観られて興味深かった。
クラーナハが描くヴィーナスは、見慣れたヴィーナス像とは違う表情、バランス、美しいだけでなく陰のあるエロティシズムを漂わせている。
パンフレットとなっている「ホロフェルネスの首を持つユディト」をはじめ、「洗礼者ヨハネの首を持つサロメ」とか、「サムソンとデリラ」、「ロトとその娘たち」、「ルクレティア」などの悲劇的な物語を題材とした作品は、女性の冷たく美しい表情とその手にとらわれた男の哀れさが怖い。
板に描かれた油彩作品は、キャンバスとは違う艶やかさと光沢感があって、軽妙な(現代的な、とでもいうか)親しみを感じた。
一番気に入ったのは、上記の作品と、「夫婦の肖像(シュライニッツの夫婦?)」という作品。
左右一対となっている大きな板に描かれた作品は、宝飾のきらめきや身にまとっているドレスやガウンのなめらかなヒダや陰影まで、細やかで丁寧に、完璧に美しい調和のある作品で、観ていて飽きることがないのでありました。
帰りに、美術館内の売店で「『怖い絵』で人間を読む」(中野京子・著)を購入。
この本にはクラーナハの作品は出てこないが、読むに付け、その絵画が描かれた時代背景や社会の動きなどを知ると知らないとでは、面白さも全然違う!ということを再認識。
クラーナハの作品に「ゲッセマネの祈り」というのがあったが、「ゲッセマネ」って、実は、大好きなAXNミステリー「ルイス警部」の中で、助手のハサウェイ刑事が口にしていたことがあって、それも印象に残ったのであった。
(余談ですが、「ルイス警部」で助手のハサウェイを演じるローレンス・フォックスは大好きなイギリスの若手俳優。父、叔父、共にイギリスの有名俳優。ドラマでは”ケンブリッジ出身の元聖職者の刑事”という設定。今どきの若者らしい軽さ、お洒落な格好、キツイジョークなどなど・・・スキだわ〜)。
クラーナハ展は1月15日(日)まで。オススメです。
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