izumishのBody & Soul

~アータマばっかりでも、カーラダばっかりでも、ダ・メ・ヨ ね!~

ジュンパ・ラヒリ著「わたしのいるところ」は、静謐で美しい佇まいの本だ。

2019-11-27 15:17:00 | 本と雑誌

両親はカルカッタ出身のベンガル人、ロンドン生まれで2歳で渡米。大学院修了後99年にO・ヘンリー賞、「停電の夜に」でピュリッツァー賞、PEN/ヘミングウェイ賞、ニューヨーカー新人賞ほか受賞。08年に「見知らぬ場所」でフランク・オコナー国際短篇賞受賞。13年にイタリアに移住し、15年にはイタリア語によるエッセイを発表。。。

著者ジュンパ・ラヒリの経歴を見ると、国際化とはこのことか!と驚嘆する。日本語の語彙すら怪しくなりつつあり、学校で学んだ英語、ちょっと囓った中国語などは断片的にしか話せない身としては、置かれた環境の違いに(同時にその知性・感性に)ため息をつくばかり。。。

 

「わたしのいるところ」は、長編といっても何編もの短いストーリーで構成されている。

「歩道で」、「道で」、「美術館で」、「日だまりで」・・・「バールで」、「田舎で」、「ベッドで」・・・どれも2〜3ページの長さで、“生まれ育ったローマと思しき町に暮らす「わたし」の日々の光景が淡々と描かれている。

40代後半の女性、独身、大学教授という設定はあるものの、土地や人の名前はなく、ただ「医院の待合室で顔を合わせた老婦人」とか「かつて同棲していた恋人」とか「学会で泊まったホテルで隣室になった亡命学者」といったように設定されてはいるものの名前は記されず、曖昧な存在のまま。毎日見慣れているはずの光景や何人もの人々、同じような時間が、自分とは関わることなく通り過ぎて行くような、どこにも確たる所属する場がない不確かな気分と、同時に、そんな孤独感からこそ生まれるだろう境地を窺わせる安堵感(?)も漂っている。

特別な出来事も劇的なシーンも難しい言葉もなく、ただそこにある情景を淡々と描写しているだけ。。。簡単な言葉で平易に書かれている日常が、まるで感情も含めて、自分自身が体験していることのように思えてくる。 

 

属する確固たる集団を持たず、国や言語といった自分で選択できないものの外にある世界に自分の立つ場所を持つことの開放感や自由さと不安、といったものがうっすらとベールの向こうに見えるような気がしてくる。

最近日本でも「孤独であること」を見つめ直す意識が出て来ているが、 「その孤独が、いつか背中を押してくれる。」という帯にかかる言葉通り、その孤独ときちんと向き合えるかどうかが、これからの時代の課題なのだろう。

その昔、単行本や雑誌などを仕事としていた頃に「写真や絵のように、文章で情景を切り取りたい」と思っていたけど、この本はまさに思い描いていたような内容。「“やる”じゃなくて”なる“」の心境に到った本。じんわりと静謐で美しい佇まいの本なのであった。

「わたしのいるところ」ジュンパ・ラヒリ著/中嶋浩郎訳 新潮クレスト・ブックス

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「カルティエ、時の結晶」展ー”完成度が高い仕事”の素晴らしさ!

2019-11-20 12:35:37 | アート・文化

国立新美術館で開催中の「カルティエ、時の結晶」展を観た(もう2週間前のことになっちゃったけど💦)。

先月の終わりに観た映画「去年マリエンバートで」では、衣装担当したシャネルのスタイリッシュなドレスの数々に耽溺(!)って感じだったが、今回は、カルティエである(!)。どちらもフランスの文化・伝統・技術と感性が合致して最高の美を創造してきたことを物語っている。

 

序章は、「時の闇 ミステリークロック、プリズムクロック」。

時計のムーヴメントは台座や装飾彫刻の中に隠され、光と目の錯覚を利用して、まるで2本の針が浮かんでいるよう。。

”時計師だけでなく金銀細工師、エナメル職人、研磨師など、多くの職人が携わり、完成までに最低でも数ヶ月かかる”という(!?) 

綿密に計算され、手をかけて丁寧に完璧な形を創り上げていくその過程を想像するだけで、手仕事でしか作り得ない芸術品の素晴らしさに感動する。

1923年頃のものから50年代、90年代、2015年16年と、制作年代が異なる作品は、時代の新旧を感じさせない普遍性と一貫したカルティエの美意識で貫かれている。

 

この他、メタルの技術(プラチナ素材の導入など)によるティアラの数々やネックレスの煌びやかで色褪せない輝き、

石の技法(翡翠、クウォーツ、化石かした石など)によるネックレスやブレスレットの色や質感の深み、さらに、エナメルや真珠母貝、カワセミの羽根、バラの花びらなど使った象嵌技術の高度な職人技。。。。どれもこれも繊細で丁寧で、かつ大胆な発想から生まれた作品が並ぶ。

第2章「フォルムとデザイン」、第3章「ユニヴァーサルな好奇心」と観ていくと、カルティエがほとんど森羅万象のものからデザインの本質を掴み、計算された必然だけでなく偶然、日常性と非日常性、自然の写実と抽象、東洋と西洋といった、相対するもの全てを取り込んで昇華してきた過程のようなものも感じたのであった。

 

会場はほとんど真っ暗で、最初は眼が慣れずに「足下コワイ〜!」。

白い円柱に置かれ薄いベールで包まれたミステリークロックの展示は、暗闇の中に浮かび上がって息を吞む美しさ!

帰宅して、オットに話したら、「お店じゃないんだから。。暗くしておかないと、間違って売ってると思っちゃう人もいるんじゃないの?」と。なるほど!芸術品としてのカルティエの仕事を見せる展覧会だからね。

会場の出口にはどの展覧会でもおみやげや記念品など売ってるが、今回は、さすがカルティエ!壁にはカルティエの本がズラリと黒い背表紙を見せて並んでいて、無駄なし。雑多なし。完璧なカルティエの世界にまとめていた。

それにしても、今回展示された作品の数々には、カルティエコレクション以外に個人蔵のものが多数並び(アクセサリーだしね)、ヴォリュームのあるネックレスや(重そう〜。。)ブレスレットなどを観ると、ヨーロッパの豪奢な王族や貴族階級の存在と時代背景があってこその芸術品だと思わざるを得ない。贅沢さ、豪華さ、知性がより本質的に美しいものを育み、生みだしてきたのだろうなぁ。

国立新美術館 https://www.nact.jp/exhibition_special/2019/cartier2019/

カルティエ https://cartier2019.exhn.jp 

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ねおみいさんからライブ「夕月ライブ うたの音 楽の音 」のご案内

2019-11-20 11:47:07 | LIVE MARKET

ねおみいさんから11月のライブのお知らせが届きました。

〜〜〜〜・〜〜〜〜・〜〜〜〜・〜〜〜〜

ワールドミュージックのエッセンスと、どこか和の空気感漂う詩の世界が織りなすねおみいの不思議ほっこりワールドをお届けします♪

昨年よりおなじみになりましたパーカッションの山本恭久さんに加え、スーパーギタリスト中西文彦さんをお迎えして、さらに彩り豊かで楽しいライブになると思います!

『ねおみい夕月ライブ うたの音 楽の音』
【日にち】11月30日(土)
【会場】下北沢・路地裏のサーカス
https://m.facebook.com/下北沢-Circus-サーカス-路地裏のサーカス-367732379990869/?ref=page_internal&mt_nav=0
【時間】open/19:00 start/19:30
【料金】予約3000円+1drink/当日3500円+1drink
【出演】
ねおみい/歌、カレンハープ、カリンバ、ウクレレ
山本恭久/パーカッション
中西文彦/ギター
【ご予約・問合せ】neomusic@neomii.net

※ホームページをリニューアルしました!
ぜひご覧になってみてください♪
https://www.neomii.net

〜〜〜〜・〜〜〜〜・〜〜〜〜・〜〜〜〜

ジャズ、ボサノバ、ロック、ソウル、Jポップ、アニメソング、童謡唱歌、世界の民族音楽、わらべうた・・・世界のいろいろな音楽のエッセンスをミックスした曲想と、イマジネーションに富む日本語詞とで織り上げた詩の世界が織りなすねおみいの不思議ほっこりワールド。。。心が解けていくような暖かさに包まれますヨ。

 
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植木啓示(g)さんから、11月ライブのお知らせです

2019-11-14 16:33:27 | LIVE MARKET

◆11/22(金) KING'S BAR(横浜・馬車道)/Tel:045-671-1601
http://kings.bufsiz.jp/

【出】Funsamble:植木啓示(gt.compose) 神村晃司(pf.keyb) 鈴木利恵(vo.perc) Son-A(sax.fl) 石井圭(b) 笹野凪(drs) カズ松坂(s-pan.perc)
[時](1)20:00~ (2)21:30~

[M.C] 2900yen
植木啓示が信頼するメンバー "Funsamble"のライブです!
サウダージ(郷愁)&ファンタジー(幻想)の世界へトリップしましょう♪

<その他のライブ>
◆11/15(金) Bar La Bichette(横浜・浅間町) /Tel:045-548-9248

http://bar-navi.suntory.co.jp/shop/0X00312901/

【出】UK☆Kamimura☆Ichiro☆toko: 植木啓示(gt) 神村晃司(keyb) 松井イチロー(perc) toko(vo)
[時間]20:00/21:30
[CH]投げ銭
〜ボーカルtokoによるSoul/Pops/Jazz-Funk/Bossa等お楽しみ下さい♪

◆11/19(火)  Funsamble@キンのツボ(用賀)/Tel:03-3707-0346
【出】Funsamble:植木啓示(gt.compose) 神村晃司(pf) 鈴木利恵(vo.perc) Son-A(sax.fl) 石井圭(b) 笹野凪(drs)
19:30~ 3 stage 
[CH]2800yen
~オリジナルバンドFunsamble、東京初進出です♪

◆12/6(金)  赤坂Tonalite/Tel:03-6441-0362

UK☆Hinobayashi Special Gig!

【出】日野林晋(sax) 植木啓示(gt) 仲村ユウキ(vo.pf) 石井圭(b) 真船駿(drs)
19:30〜 2 stage

MC:2000yen  

〜Jazz-Funk/Brasil Music/Original等を素晴らしいメンバーでお贈りします♪


 

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「去年マリエンバートで」〜詩的で繊細、贅沢な世界に浸るひととき。 

2019-11-03 14:56:53 | 映画

1961年に制作され、その年の「ベネツィア国際映画祭」金獅子賞を受賞した「去年マリエンバートで」。

映画史に燦然と輝くその映画が、半世紀の時を経て、シャネルの全面サポートのもと4Kデジタルリマスター上映された!

監督が、当時”ヌーヴェル・ヴァーグを先導した”アラン・レネ。脚本が、”ヌーヴォー・ロマンの騎手"と称されたアラン・ロブ=グリエ。そして衣装は、当時78歳のココ・シャネルによるオリジナルデザイン!!

知性と感性と、自由な想像力に満ちた時代を切り開いた3人。。。その名前を聞くだけでワクワクしてくる。ヒロインを演じるデルフィーヌ・セイリグはまさにシャネルのイメージそのまま!シンプルで飾らず、エレガント、そして謎めいている。 

絢爛豪華で奢侈を極めたようなバロック風の建物ーー彫刻や金箔で縁取られた壁や天井や柱、前庭に整然と広がる直線的で人工的な庭園、ヒロインが着ている「これぞシャネル!」と言えるモダンでクラシカルなドレスの数々。。。計算されつくした圧倒的な美しさにため息が出る。
登場人物は女と、男と、女の夫と思われる男の3人。去年、同じ場所で出会い心を通わせた女と男。女はまるで覚えていないという。男は記憶を積み重ねるように去年の約束を思い出させようと語る。。思いが通わない、交わらない会話、ストップモーションのように静止した時間と場所。。。夢と現実の間を彷徨うように行きつ戻りつする二人。。まどろむような女の表情(そういえば、当時”アンニュイ”という言葉があった)、時に苛立ち、それでも静かに情熱をもって語り続ける男。。。どのシーンをとっても完璧に構築された映像と言葉がある。

 

「去年マリエンバートで」を観たはいつ頃のことだったのだろう。。。ほとんど幻のように思える映画だったが、ワタシにとっては、一度観ただけで、数十年経ってもその記憶やイメージが時折り浮かんでくる、特別な存在だ。

この映画について、ジャコメッティは「めくるめくような夢。何週間経っても私は、あの世界のことを考え続けている」と記しているが、まさに、一度観ただけで魂の奥深くに残る。”一度は観ておく価値がある映画”と言える作品であります。

恵比寿ガーデンシネマで上映中。

 

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