東京は緊急事態宣言で映画館は閉鎖中。渋谷Bunkamuraのル・シネマも、有楽町のヒューマントラストシネマも、シネスイッチ銀座も、閉館中。。。映画館もダメなら美術館もダメ。。。文化がどんどん遠くなる〜。。。である(T_T)
Bunkamuraで観るつもりだったアンソニー・ホプキンスの「ファーザー」を、桜木町のキネシネマ横浜でやっているので観に行った。みなとみらいのTUTAYA2階にあるミニシアターである。横浜は蔓延防止措置でも映画館は開いているのだ。認知症を発症して現実と幻想の境界が崩れゆく父と、戸惑うその娘の、揺れ動く思いを描いて味わい深い作品である。
認知症であるからして、父の記憶は不確定。それがそのまま描かれるから、時系列がバラバラ。。。最初は「あれ?あれれ??」。
時系列がメチャクチャなのは認知症の特徴。前後の脈絡なく父の記憶に浮かぶ(?)状況からすると、娘は離婚して、父の住む家の近くにいて、仕事をしながら父の世話をしている。ヘルパーの手を借りて生活しているが、ヘルパーが何度も変わっている。父が「時計を盗んだ!」と、何度も騒いで罵るから。。。
今日もやっとの思いで手配したヘルパーが「辞める!」と言って来たので、娘が駆けつける。一人になっている間、父は、娘が離婚した夫が現れたり、二番目の夫が現れたり、娘に新しい恋人が出来てパリに住むことになったと思い込んでいる。娘に問いただすと「パリ?誰が?」。。。
認知症の父の視点で話が進むから、観ているこちらの記憶がこんがらかってきそう。。
そういえば、亡くなった私の母も(アルツハイマー型認知症だった)、いつも「時計、時計。。」と探していた。時計に執着するのは、記憶が曖昧になってきた認知症の特徴なのかもしれない。。。自分自身を繋ぎとめておくのは時間なのか。。母は、第二次大戦中インドネシア駐留の軍関係にいたのだが、記憶が混乱してくるとよく「なんで私はここにいるの!?どこからの司令なの?誰の指示なのか聞きたい!?」と怒っていたなぁ〜。
アンソニー・ホプキンスはこの映画でアカデミー賞主演男優賞を獲得したが、まさか受賞するとは思わず会場には行かなかったという。確かに、この映画はこれまでのアカデミー賞作品とは違う。人生とか時間とか、人が生きて死んでいくってどういうことなのか。。。誰でもいつか迎える老齢や、孤独や、プライドや、失った時間について、深く、静かに、優しく、描いて観せている。英国映画の好きなのところはこんなところだ。余計なお喋りなし、説明なし、自然でなおかつ必然な日々を淡々と見せている。
そんな映画を観てしんみりと”人が老いるということ”を考えた翌日、ウチの希さんが加齢黄斑変性を発症していることが判明!
これまでもなんとなく視野が狭くなってるような気がしていたが、やっぱり〜?!!であった。
最近は眼の奥の画像がバッチリ見える。検査結果を見ると、彼の両目の奥の眼底(?)が左目だけ波打っているのだった!?(ワタシは両方とも平ら)。加齢黄斑変性は治るものではないが、進行を遅らせることはできる。放っておくとどんどん進行して、本当に見えなくなっていく。だいぶ前に加齢黄斑変性と診断された叔父は、「どうせ治らないんだ」とそのまま何年も放置して、今は細かい字は殆ど見えない状態。。投げたらダメでっす。
そんなこんなで、今日は元町の眼科医で希さんの眼に注射(´゚д゚`) 明日もう一度行ってチェックして、その後は毎月一回の目に注射を3ヶ月(゚Д゚)。その後も数ヶ月おきに注射は必要とのことで、叔父のコロナワクチン接種の予約は未だ取れないし、こっちもあっちもやらなくっちゃ!で、妙にザワザワと忙しくなってきたここ数日であります。
「ファーザー」。全体を把握したら、もう一度観たいと思う映画だ。