izumishのBody & Soul

~アータマばっかりでも、カーラダばっかりでも、ダ・メ・ヨ ね!~

こんな雨の日に 思い出すこと 

2017-06-28 11:19:50 | 日記・エッセイ・コラム

今日は、しとしと、梅雨時らしい雨。。。

 

こんな日に思うのは、4月のはじめに行った、佐島の友人の家。

「山桜がきれいに咲いていますよ。見にいらっしゃいませんか?」とのお誘いに、出かけたのはこぬか雨の日。

その前後は春らしい穏やかな暖かい日だったが、この日はまだ春になりきっていない、肌寒い日だった。

 

逗子の駅で、別の友人の車に乗り込んで、海岸沿いの道を走る。

濡れた窓ガラス越しに見る海は灰色に霞んで、白い波頭がゆったりと押し寄せては戻る。

明るい曇り空から、パラパラと小さな雨粒が降っている。。。

「このお天気で、かえって良かったですね」と話ながら、ほとんど行き交う車のない道をひたすら走る。

 

友人の家は、石段を登った丘の上。元デンマーク大使館員(だったかな?)の別送だったという古い日本家屋だ。

家への石段は舗装のない、ほとんど木の枝で段をつけただけのくねくねしたもの(”ドッグレッグ”というのだって。。)。石段の両脇は草や木が覆い被さるように繁って、雨の降る日は足が濡れる。

丘の一角を切り開いて出来た空間に家が建っている。佐島の海を見晴らす一角には、木のテーブルとベンチ。

家やテーブルや庭全体を包み込むように枝を広げた山桜の白い花が、満開に咲いて、雨に濡れ落ちた花びらがそこここに散っている。

建物の一角の屋根の下が丁度雨よけのスペースになっていて、そこにも丸テーブルと椅子を並べて、気分は外でピクニック。。

シャンパンとワイン、それと佐島の漁港であがった魚や貝、イギリスで農夫(ファーマー)をやっていた竹脇さんが育てた野菜。どれも新鮮で美味しい!

 

この家が、子どもの頃に住んでいた南馬込の家(昭和30年代初め頃の、ちょっとモダンな感覚の日本家屋。平屋で庭があって、木々に囲まれた中にひっそりと建っている)に良く似ていて、すごく懐かしい気持ちがしたのであった。。。

特に、ドッグレッグの石段は、当時習っていたピアノの先生の家にいたる草に覆われた石段と庭が記憶の深みから浮かび上がってきたようで、言いようのない感慨を覚えるのであった。

 

この家に住んでいる黒川さんは、かつて、VANの宣伝部からマガジンハウスの「ブルータス」創刊などに関わった、広告業界が一番勢いがあって予算も潤沢に使えた当時、数々の素晴らしい仕事をしていたアートディレクターの方。

その後、様々な状況の変化があって、ご本人曰く、今はひっそりと”ひきこもり状態”。

社会的な肩書きや名誉、仕事、財産など、一度は手にしたものをすべて捨てて、今、佐島の海を眺めながら暮らしている。

(でも、美意識の高い方なだけに、暮らし方や言葉、価値観など、細部まで美的なのである)。

お会いするのは、もう、10年以上振りなのだが、昨日の続きのようにお会話が出来るのが嬉しい。。。

 

ちょうど、私自身も、あれこれと迷い考えることがあった時でもあり、寒さが残る春に、山桜の咲くこの佐島の黒川さんの家に招かれたのも、なにか気持ちを押してくれる力が働いたのかもしれない。

ともあれ、気持ちの通じる数人と、小雨の中でひっそりと静かな午後を過ごして、心がすっかり落ち着いた一日でありました。

 


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