izumishのBody & Soul

~アータマばっかりでも、カーラダばっかりでも、ダ・メ・ヨ ね!~

「国立トレチャコフ美術館所蔵〜ロマンティックロシア」でロシアの叙情性と雄大な自然を感じる

2018-12-05 13:24:46 | アート・文化

Bunkamura ザ・ミュージアムで開催中の「国立トレチャコフ美術館所蔵 ロマンティック ロシア」展に。「自然への畏怖や愛がなければ絵を描く資格はない」というトレチャコフが収集した、19世紀ロシアのロマンティシズムがビジュアルに表現されている作品群だ。ドストエフスキー、トルストイ、ラフマニノフ、それにロシアバレエ・・・・この時代に生まれた芸術にはどれも叙情性が満ちあふれている。

 

出品されている「忘れえぬ女(ひと)」を観るのが主たる目的だが、それだけではない。

”ロシア”は昔から気になる国ではある。 

イギリス王室のフィリップ殿下(エリザベス女王の夫)もロシア貴族の出身であるし、英国とロシアは、深いところで繋がっている。イギリス(も)大好き!なワタシ的には、脈々と今に続くロシアの民族性や文化の背景には興味津々であります。

 

この絵は、10年程前に日本で公開され、ワタシも多分その時に観たのだろう。

今回あらためて観ると、この絵の女性の強い眼差し、(ドレスや毛皮から察すると冬であろうと思われるが)幌を空けたままの馬車に乗っていることからして、当時としては強い意志のある上層階級の女性だと思われる。この女性像は「トルストイの《アンナ・カレーニナ》をモデルにしたものとも言われる」ようだが、すでにロシア革命への不穏な時代背景を考えると、”ロシアのモナリザ”と讃えられるような柔らかな”微笑み”ではないように思える。

それにね、ず〜と以前に「バーブシカの宝石」(講談社刊)という単行本を編集したことがあるのだが、これは、当時人気のお料理家・入江麻木先生の話をまとめたもの。麻木先生はロシア革命で日本に亡命してきた白系ロシア人の貴族と結婚した方で(娘さんは小澤征爾氏夫人)、その話の中で、お姑さんがロシア革命から東に逃げてくる途中(赤色ロシア人である)ソ連兵に馬車を止められることが度々あったという話しがあった。毛皮の外套の裏には金貨をビッシリと縫い付けてあるから、重くて立ち上がることもできない(!)。そこで馬車の上から「降りなきゃダメなの」と言うと、貴族なんて見たことないソ連兵は「美しく威厳のある女性」に声も出ず、そのまま通してくれた」という。この絵を観るとその時のイメージが重なって、とても身近に、想い出の中の女性として感じるのでありました。

さらに、ニキータ・ミハルコフ監督の「太陽に灼かれて」や「機械じかけのピアノのための未完成の戯曲」などに流れる、ゆたかで厳しい大地と雄大な自然とのロシアの政治状況を背景にしたどうにもならないもの悲しさと、だからこそのあっけらかんとした陽気な気性・・・・圧倒的な自然の大きさと、壮大な自然や建造物。。。なにもかもがスケールが大きく、人間の営みなんて、自然から考えればごくごく小さな存在でしかないなぁと思えてくる。。。何もかも”受け入れる” がキーワードか。

 

トレチャコフが収集した作品群にはロシアの大地を描いた作品も数多くあって、季節ごとに分けて展示されたそれぞれが素晴らしい!どこまでも続く広大な農地、空高く沸き上がる雲、深い森、輝く樹氷、雪に覆われた小径や、光が差し込む森の木々。。ロシアの自然は、輝きに満ちて人をすっぽりと包み込んで雄大だ。

 

イヤホンガイドで解説を聴きながら(最近はガイドを聴いている。作品の理解度がまるで違います。何も知らないから。。)出口近くまで来たら、壁の向こうから(年配の)男性の大きな声が聞こえた。

「いや〜、今日は来てよかったよ〜!素晴らしいよ!!みんなそう思ってると思うよ!」。

確かに、素晴らしいコレクションでありました!感動したんだろうな〜、オジサン。素直に口に出すところが逆に感動する。。その通りではありますが、静かに鑑賞中であったので。。。一瞬ビックリしましたワ。

 鑑賞後は、いつもの「カフェ・ドゥ・マゴ」でホットワイン。この時期、ここに来る楽しみの一つホットワイン。クローブとシナモンの仄かな香りと暖かい赤ワインに心もお腹もぬくもりいっぱいの午後でした。

 

イワン・クラムスコイ作、大好きな「忘れえぬ女(ひと)」。この作家の「月明かりの夜」も素晴らしく美しい絵でした。
 
これも大好き!「正午、モスクワ郊外」イワン・シーシキン
 
それに「樹氷」ワシーリー・バクシェーエフ