新!編集人の独り言

名無しの悪質なコメントがありコメントはなくしました。
名乗ることもできない奴にコメントする資格はありません。

夢ン中

2008-01-04 13:09:04 | Weblog
それからというもの、俺は寝る事が楽しみになった。
会社や家庭では無視されるようなことがあっても、夢の中にいる陽子ならちゃんと話を聞いてくれる。
別に的確なアドバイスもいらないし、叱咤激励もない。
ただ、黙って聞いてくれるのだ。

「最近寝るの早いわよねぇ」
「ああ、ちょっと疲れてるんだ」
「そうねぇ、そう言えばちょっと顔色悪いかなぁ」
「悪いな、おやすみ」
「気をつけてよ。あなたにはもっと稼いでもらわないといけないんだから」

何だよ・・・俺の体調より金が心配なのかよ。
受験が俺の具合よりも感心が高いのかよ・・・

会社でもそうだ。
最近は重要な仕事から外されて、どうでもいいような仕事ばかりやつている。
アイドルタイムとか会社は言っているけど、要は体のいい左遷のようなものだ。
あの上司がどうやら仕掛けてきたんだろう。

こういうイヤな事はとっとと頭から無くしてしまおう。
最近は夢の中にある湖に行く事が日課になっている。




「おじさん、疲れてない??」
陽子が俺の顔を覗き込む。
「ん?まあ、色々あるからね」
「最近湖でも頻繁に会ってるもんね。いやな事多いんだ」
「ん、んふふ。まあね」
「おじさんね」
「ん?」
「今日はうちに招待してあげるよ」
「へっ」
「今日私が料理作ってあげる」
「へぇ~、陽子ちゃん、料理できるのかい?」
「失礼な。乙女のたしなみですわよ」
そういうと陽子はコロコロと笑い転げた。

陽子の家は湖のすぐ近くにあった。
「陽子ちゃん、一人暮らしなんだ」
「うん、今はね」
「前、誰かと住んでたんだ」
「うん、でももういないんだ」
「別れたんだ」
「そんなんじゃないんだってば」
顔を真っ赤にさせて口を尖らせた顔が魅力的だった。

陽子の部屋は俺が彼女にイメージしている「白」を基調にしたシンプル・・・というより殺風景な部屋だった。
「何もないでしょう。あたし、ゴチャゴチャしているの好きじゃないから」
「いや、きれいな部屋だと思うよ」
「掃除とか洗濯とか割と好きなんだよねぇ」
台所で何かを切りながら陽子が答える。

「こんな子を振る男、もったいないよなぁ」
「だから、そんなんじゃないんだって」

白いテーブルに料理が運ばれてくる。
焼き魚、肉じゃが、白和え・・・いずれも俺の好物ばかりだ。
「何か、見透かされたように俺の好みばったかりだなぁ」
「あ、よかったぁ。多分こんなのが好きなんじゃないかなぁと思ったんだ」

「いただきます」

料理は全てが全ておいしかった。というよりも本当に俺の好みの味付けだ。
女房は減塩だとか、子供たちに合わせた味付けをするので、まずくはないけど物足りないものがあったが、これはその昔お袋が食べさせてくれた味じゃないか。

「う、うまいよ。これ。というかお袋の味そのまんまだよ」
「そう?そう言ってくれるとうれしいな」
「何で?どこでこの味覚えたの??」
「内緒」
陽子はそういうとまたコロコロと笑った。

「夢みたいだ」
「夢じゃないよ」
「えっ」
「おじさんがちゃんと陽子の味をおいしいって言ってくれたじゃない。これは夢なんかじゃないんだよ」
「うーん・・・」

それから俺は陽子と色々な話をした。
会社の事、家の事、それから俺自身のこと。
陽子はそれをただあいづちを打ちながらも聞いてくれた。

その時間は俺にとってまさに癒しの時間ったと思う。

時間がゆっくりと流れていくのを俺は感じた。

つづく・・・

この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 新年早々・・・ | トップ | ポポポポおじさん2008 »
最新の画像もっと見る

Weblog」カテゴリの最新記事