いせ九条の会

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戦争は人の心を傷つける/山崎孝

2008-01-15 | ご投稿
昨年の国際交流協会の講演で知ったこと、イラクから帰国した自衛隊のこと、そして最近の政治動向を結びつけて書いた文章です。

2008年1月15日付朝日新聞「声」欄掲載文【戦場で心に傷 自殺の隊員も】

昨年12月ボランティア活動をするNPO法人「地球のステージ」の講演で、言葉を失い傷ついた心を絵で表現するようになった少女の話をきいた。

民族紛争が起きた旧ユーゴスラビアで、少女は6歳の時、父親は戦争に取られ行方不明となり、家族は倉庫の中に監禁され拷問を受けて、少女は心因性失語症になった。

「心の傷の病院」で治療を受けたが治らず、10歳の時、父親が棺の中で眠っている絵を、12歳の時、故郷が爆撃されている絵を、そして、ハートの中に「私の傷ついた心」と書きハートを矢で貫いた絵を描いた。

日本ではイラク派遣の自衛隊員が心に傷を負って帰ってきている。高い緊張感でストレスをためこみ、帰国後バランスを崩し、暴力や酒に走る、不眠症で職場復帰が出来ない、自殺さえする人が出た。

政府は自衛隊を国連平和維持活動以外の参加を可能にし、武器使用権限拡大を視野に入れた海外活動恒久法の本格検討に入ったと報道された。

軍事行動にかかわらないと国威を示すことにならないし、普通の国ではないと考える政治家は、人を大切にすることを二の次、三の次にしている。自衛隊員を捨て駒扱いしているようなもので、あの忌まわしい大戦の悪夢がよみがえってくる。(以上)

2008年1月14日の「天声人語」は、アフガン戦争で心に傷を負った子どもたちが描いた絵のことが書かれていました。

4年前にバグダッドを取材したとき、支局の入ったホテル一帯が、夜間に何度かロケット弾で攻撃された。そのつど跳ね起きた。耳の奥に轟音がへばりついて、ドアがバタンと閉まる音にも、どきっとしたものだ▼米軍の空爆を取材した知人は、帰国後も後遺症が尾をひいた。干した布団をたたく音に身構えたりした。彼によれば、空爆の下、ある家族はみんなで大声で歌っていたそうだ。子供の気が爆音に向かないようにして、心の傷を防ぐためだった▼音ばかりではない。戦火は五感すべてを通して、子供の柔らかい心をえぐる。東京で開かれている「カブールの幽霊」という展示会を見て、そう思った。内戦の続くアフガニスタンの子らが「幽霊」を措いた絵約350点が並んでいる▼6年前、ユニセフがアフガンの子らに、「最も怖い」ことと「最も嫌な」ことを聞いた。「爆撃と爆発の青」や「銃を持つ男」を抜いて、「幽霊」というのが一番多かった。それを知った東京のNPOが、幽霊を描いてもらった▼黒こげ、血まみれ、飛び出す内臓や骨……。酸鼻と、子供らしい感性や色彩とが入り交じる絵は、見るに切ない心の投影だ。子らをさいなむ幽霊とは、「対テロ戦争の最前線」にされる祖国の荒廃にほかならない▼その対テロ作戦への給油活動が、来月にも再開される。しかし、あまたの「幽霊」を見るにつけ、対米支援ではなくアフガン支援の論議こそが、より深まるべきだと思いは募る。腕力頼みの荒療治だけでは、幽霊の跋扈はやまないだろう。(以上)

私がとても残念に思うのは、憲法9条の理念を持つ日本が米軍の艦船に無料の油を提供して「腕力頼みの荒療治」に手を貸して、また再び手を貸そうとしていることです。軍事に関わらないと国威は発揮できないと考える政治家たちが増えているためです。この政治を自衛隊の海外派遣の恒久法を制定して、いつでも行なえるように準備に入りました。この恒久法は国連決議を金科玉条にして自衛隊の海外派遣を行なう考えですが、国連決議の下で行われるアフガニスタンにおける「テロとの戦い」何度か紹介していますが次のようなものです。

潘基文国連事務総長(2007年7月) 米軍やNATO軍の空爆で民間人の死傷者が相次いでいることについて「事故であったとしても、敵を強化し、われわれの努力を損なう」