伊佐子のPetit Diary

何についても何の素養もない伊佐子の手前勝手な言いたい放題

桂米朝「はてなの茶碗」

2021年05月09日 | 演芸
先日、NHKで故・桂米朝師匠の「はてなの茶碗」を放送していた。
「木曜笑タイム」という番組の中のコーナーでだった。



さすがNHK、豊富なアーカイブを持っている。

それは米朝師匠が80歳くらいの時の、老境に入ってからのもので、
枕では老いて来て体もままならぬ心境から入っているものだった。

所々、さすがに噛むこともあったが、味わい深い聞かせる落語だった。
米朝師匠の「はてなの茶碗」が録画出来て、すごく良かった。





「はてなの茶碗」という落語を知ったのは、
NHK朝ドラ「ちりとてちん」でだった。

ヒロインが女落語家を目指し、
上方落語の重鎮に弟子入りして修行する話。
面白くてよく見ていた。

師匠は桂米朝をモデルにしていたことが明らかだった。


上方の話なので、劇中、上方落語がたくさん出て来たが、
「愛宕山」など、京都を題材にしたものも多く出て来た。





昔はよくテレビで落語を放送していて、よく見ていた。

その頃は江戸落語が多かったと思う。
「時そば」「ちはやふる」「目黒のサンマ」など、
よくフルで放送していたものだ。


その頃から落語は好きで、
講談社文庫に「古典落語」というタイトルの分厚い本があり、
代表的な落語を収めた本で、それを買って、
古典落語を文字で読んだりもしていた。




上方落語はあまり知らなかった。
「ちりとてちん」で紹介していて初めて知ったものが多かった。



中でも「はてなの茶碗」は好きになった。

何といっても下げが洒落ていて、鮮やかで。
登場人物が皆、心根がいい人ばかりで、
ある種爽やかで、暖かい人情話になっていたからだ。


悪い人は出て来ない。
主人公の油売りが一獲千金を狙うのも理由があってのことで、
もう一人の相手役、茶道具屋の店主には偉ぶった所がない。

京都を舞台にしていて、
清水寺の音羽の滝近くの茶店から話が始まるのも楽しい。




京の商人と大坂の商人の対比も面白い。
どちらを貶めているのでもなく、どちらも立てている所が話に品がある。

「はてなの茶碗」は米朝師匠自身が、
埋もれていた作品を発掘したということだが、
品のある、温かみのある話だったからではなかろうか。






米朝師匠で聞く「はてなの茶碗」は贅沢なプレゼントのようなもの。


茶道具屋の金兵衛さん、通称「茶金」さんは、京都一の目利きという設定だが、
偉ぶった所はなく、傲慢でもなく、京都人のいやらしさはなく、
気品があり、度量がある。

茶金さんのキャラクターは、上品に、
品格を感じさせるように演じることが大事だ。




「清水焼のどこにでもある安手の数茶碗」に千両の値がついたのは、
「人徳でっせ、茶金さん」

と、油売りに言わせるだけの徳を感じさせなければならない。



米朝師匠の茶金さんは、師匠の品格そのものが茶金さんを形作っているようで、
茶金さんの大きな包容力は師匠そのもののような感じがする。

米朝師匠ならではの気品があって、それが茶金さんのキャラクターに
びったり合っている。


米朝師匠の芸を語るのはおこがましいが…。




京都の人間に、リスペクトをもって演じてくださっているような感じも
するのだ。

茶金さんは油売りに対して、

大坂の人やね、京のもんにはできまへん、
と笑わせておいて、

「やっぱり商いは大坂どんな」と、油売りの行いを責めず、
彼に敬意を払う。


「いわば茶金という名前を買うていただきましたようなもの」、
「茶金、商人冥利につきます」

京の商人と大坂の商人、どちらも立てる話のうまさ。


大阪の人である米朝師匠が京の商人になりきり、京の品格を演じてくださる。
だから嬉しいのだろうか。




弟子の故・桂枝雀さんの「はてなの茶碗」も動画で見た。

コメント欄によると、
枝雀師匠にしては、米朝師匠の手本に忠実ということだが、
枝雀師匠はやはり何より笑わす。


「はてな」ひと言で笑わす。

笑わす落語である。
顔芸も動作も大袈裟で、普段の枝雀師匠に比べれば大人しいが、
それでも「笑わす」ことに腐心している。


米朝師匠の「はてなの茶碗」は聞かせる。
ストーリーを聞かせる落語だ。

どういう展開になってゆくのか、と
聞く者の興味を惹きつける落語だ。




「木曜笑タイム」では米朝師匠の
「はてなの茶碗」に関するインタビューも放送していた。



その中で、師匠はまず、始めに出て来る茶店の主人が茶金を知っていた、
ということがポイントという意味のことを仰っていた。


「茶金」さんがそれほど有名だったからこそ、成り立つ話なのだ。

関白鷹司公と繋がりがあるほどの人物。
名が通っているのはがめつい商人ではなく、人徳があるからこそだろう。

その茶金さんをさらりと演じるだけで人格者であることが滲み出る。
米朝師匠ならではの人となりに、すっかり魅了された。


主人公の油売りの微笑ましさ、人の良さも味わい深い。



偉そうに師匠の至芸を語ってしまった…




ユーチューブに動画が上がっている

桂米朝(三代目) - はてなの茶碗
https://youtu.be/d-a7-74n7B4



23分と少しの「はてな」、これがNHKで放送されていたもの



落語 はてなの茶碗 桂米朝
https://youtu.be/Qe0V_VlWmPI



米朝師匠のもう少し若い頃の「はてなの茶碗」。
枕が長くて29分ほどある
若い頃はめりはりがはっきりしてて(当然ながら)元気だ(笑)



枝雀落語 191 はてなの茶碗
https://youtu.be/wmjY2kiNOK8



米朝師匠の弟子の桂枝雀師匠の「はてなの茶碗」は24分ほど、
顔芸や動作で笑わすが、

「あんさん、大坂の人…、そうどっしゃろ。
京の人間にこの真似は出来ん。」

この部分では笑いを取らないのが意外で、
枝雀師匠の良心が垣間見える感じがした。


「…やっぱり商いは大坂どすなあ」と感心する演じ方が油売りに優しい。

(枝雀師匠も大好きです)



米朝師匠の落語は今までそれほど聞いているわけではないので、
ユーチューブに沢山動画が上げられているから、
これから動画でいろいろ聞きたいと思う。



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