伊佐子のPetit Diary

何についても何の素養もない伊佐子の手前勝手な言いたい放題

シネフィル時代 70s

2016年07月28日 | 映画
突然ですが、昔話、するよ。
高齢者は思い出話が多くなるのさ。



まあこれまでもいろいろ昔のことを書いているので、
かなり高齢だということはバレていると思うので、
この際全部バラしてしまおう。


最初に自分で見た映画は「ロミオとジュリエット」
(フランコ・ゼフィレッリ)。
2番館、3番館まで追って5、6回見た。
サントラも買った。

学校で「ギブミー、ギブミー」という
ジュリエットのセリフが流行り、
ジュリエットのヘアスタイルをまねて、
三つ編みの上にリボンで巻いて来る子もいた。


その頃映画は斜陽で、映画の最盛期は確か1950年代。

60年代に入るとテレビの普及もあり、映画は衰退していった。


アメリカはベトナム戦争に突入し、反戦運動がはやり、
ヒッピーが台頭し、ビートルズなどの若者文化が生まれた。

映画はそういう文化に対応できず、
当時のアカデミー賞は古い旧態依然の、
まあ流行おくれの映画ばかりが選ばれていた。


70年代は、映画がどん底状態の時だった。

映画館はガラガラで、映画文化に危機感が生まれていた。
そんな時に、私は映画を見始めた。

どんな時でも、
思春期とか、青春時代の子供は映画や文学に目覚めるものだ。
私は年の離れた姉の(とここを強調)影響もあり、
いきなり映画をどんどん見始めた。


ヨーロッパ映画が好きだった。

日本ヘラルドという会社があり(今もあるのかもしれないが)、
そこは良質のヨーロッパ映画をたくさん輸入していて、
ヘラルドのマークがあると喜んで見た。


フランス映画が随分輸入されていて、
フランス映画の恋愛ものをたくさん見た。大好きだった。

「個人教授」「ふたりだけの夜明け」「恋人たちの場所」
「約束」「若草の萌えるころ」「女鹿」
「雨の訪問者」「さらば夏の日」
もう誰も知らないだろう。


ゴダールとトリュフォーはカリスマ扱いで、
トリュフォーは好きだった。
「夜霧の恋人たち」「アメリカの夜」「野生の少年」
「恋のエチュード」などのころだ。

ゴダールは政治の方?へ行き、学生のカリスマになり、
不思議な映画を作り学生に受けていた。
「東風」なんかは大学の学生会館で上映され、
何か知らんけど私も見た。

ゴダールの「気狂いピエロ」は私の映画前期の映画なので見てなくて
(のちの特別上映などで見た)
私の時代は「ウイークエンド」あたりだった。



アメリカ映画は、先に行ったように斜陽で、
そのころはアメリカン・ニューシネマばかりだった。

「イージーライダー」「明日に向かって撃て」
「真夜中のカーボーイ」「去年の夏」
「ファイブ・イージー・ピーセス」「いちご白書」
「アリスのレストラン」「夕日に向かって走れ」
そんなの。


イタリア映画はマカロニ・ウエスタンが急速にすたれ、
忘れ去られていて、監督中心だった。

パゾリーニ、フェリーニ、ヴィスコンティ、アントニオーニ、
そしてデ・シーカなどもまだ活躍していた。

その頃最ももてはやされていたのがパゾリーニで、
パゾリーニ自体も絶好調で、
「アポロンの地獄」「テオレマ」「豚小屋」「王女メディア」
とにかくパゾリーニ最高、と持ち上げておくのが風潮だった。
けど京都では1週間で打ち切り、が普通だったけど。


そうやって片っ端から硬軟入り交じり洋画を見まくっていて、
そのうち映画雑誌「スクリーン」なんかを買い始めて、
それで映画の情報を得るようになる。

すると、雑誌には紹介されているのに、
京都では公開されない映画が沢山あるのが分かった。


京都はなんて田舎なんだ、なんて映画後進国なんだ。
大阪では上映しているみたいなのに…。
と、京都を呪った。


でも、その頃学生運動の余波がまだ生々しいころ、
京都の映画館、2番館あたりでは、
ずばり「ベトナム」というタイトルの映画が上映されていたり、
あとATG系の日本映画
「エロス+虐殺」「少年」「薔薇の葬列」「無常」とか、
「心中天の網島」もあったか、
完全に学生向けの映画にシフトして上映していたのだった。

今思えばある意味で、京都は学生文化の発信地だったのだと思う。
吉田喜重の映画なんかは見ておくべきだったかなと今でも思う。
(18禁だったから無理だったけど)


日本映画には興味がなかった。
当時日本の映画会社は5社あり、5社協定というものがあり…、
というのはまたいずれ別の機会に。


そういう、映画を見狂っているうちに
ヴィスコンティの映画にも出会った。

はじめに見た「地獄に堕ちた勇者ども」は
友達を無理やり連れて行って見た。
客席はガラガラで、大丈夫かこれと思った。
見終わって、友達に申し訳ないと思った。
こんな映画は友達連れで見に来るもんじゃなかった。
後悔した。


だけど、自分の中ではすごくショックで、二律背反が起きていた。

この映画を好きと言っていいのだろうか。
いけないと思う。だってナチの映画なんだもの。
でも、どうしても惹かれるものがある。
この気持ちはどうしたらいいんだろう。


「ベニスに死す」を見て答えが出た。
ああそうか、私はこっちの人だったんだ。

いろいろ映画を見てきたが、自分の好みというものが分かった。
こういうのが好きなんだなと。


で、考えた。
もういろいろ別に好きでもない映画は(話題作でも)見ない。
お金も限られている中、なるべく自分の好みに合う映画、
好きそうな映画だけ見よう。

自分の思い込みの激しさ、
すごく偏った嗜好、
ひとりよがり、
全部この頃から顕著になってしまった。
我ながらいかんな。

全部ヴィスコンティのせいだ、どうしてくれる。
とは冗談。





つけくわえ

70年代、映画が衰退していた時期だからこそ、
実験的な映画も、意欲的な映画も作られたと思う。

監督はがんばり、映画人もがんばった。
みな、衰退していく映画芸術、あるいは娯楽、
それを憂えて必死になって、模索していた時期。

だからすごい映画があの時期集中した。
と思っている。


それと、ロードショーではガラガラでも、
2番館、3番館はいつも満員だった。
お金のない学生は、そっちの方でわんさと
見ていたのだ。


ちなみに、「地獄に堕ちた勇者ども」は
2番館にも、母を連れて見に行った。
やっぱり、一人ではまだ行けなかったころだし
誰かと一緒でないとこわかったし。
すごく満員で、立ち見も出ていた。

母も迷惑だったろうな、あんな映画を見せられて…
ヘルムート・バーガーのことは、
アラン・ドロンだとばかり思っていたと言っていた。



つづく


追記

シネフィルという言葉を使っているが、
私はそんなたいそうな肩書の者でもないのだけれど、
ちょっと映画狂いしていた時期があるので
おしゃれっぽく使ってみたのです。ご容赦を。


COMMENT:
AUTHOR: Steinberger
DATE: 07/29/2016 00:22:06
伊佐子さん、こんばんは。

ご無沙汰しております。
でもブログはずっと読ませて頂いてましたよ。

「地獄に堕ちた勇者ども」をロードショーでリアルタイムでご覧になったのですね~。
その後の「雨のエトランゼ」公開当時、
あの作品がどのように観客に受け止められていたのか、
すごく気になります。
僕は1979年2月のテレビの深夜放映で初めて見てハマった後追いですので…。

続き、楽しみにしております。

COMMENT:
AUTHOR: 伊佐子
DATE: 07/29/2016 10:44:38
読んでいただいていたんですか~。とても嬉しいです!

「雨のエトランゼ」、
わりとロードショー館で長く公開されていたと思います。
1971年公開で、「ペニスに死す」なんかと
ほとんど同時期だったと思う…。
私は何度か見たと思います。
観客の入りはまあまあ…だったかな。
一般にはラブサスペンス、という感じのとらえられ方かな。

「スクリーン」では、
ヘルムートのファッションが特集されてたから、
男性ファッション映画という感じだったかも。

でもロードショーで公開された時のは、
パーティーシーンがごっそりカットされたバージョンでした。
いつか、詳しく書こうと思ってたんですが…。

COMMENT:
AUTHOR: 伊佐子
あ、あと「エトランゼ」もヘラルド映画でした!

COMMENT:
AUTHOR: Steinberger
DATE: 07/29/2016 23:32:50
伊佐子さん、ありがとうございます。

雑誌「スクリーン」の紹介文では「雨のエトランゼ」は105分ですが、
後に発売されたビデオでは125分ぐらいありましたね。
主題歌も結構ヒットしたんですよね、
中古シングル盤が出回っているところから推測すると…。
ぜひ、いつか詳しく書いてください。楽しみにしていま~す。

COMMENT:
AUTHOR: 伊佐子
DATE: 07/30/2016 10:00:40
え、ロングバージョンのビデオ、出ていたんですか!
知らなかった…
サントラのLP、買いました。「ステイ」、好きでした。
流行ったというほどではなかったと思うけど、
あれを見た人はみんな、「ステイ」が忘れられなくなったと思います。

まあでも、映画としては当時それほどすごい評判にはなってなかったような。
それほどけなされるでもなく、話題になるでもなく、みたいな。
「ガラスの部屋」の方が大々的に宣伝されてたかな、
という感じでしたかね。



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