伊佐子のPetit Diary

何についても何の素養もない伊佐子の手前勝手な言いたい放題

マイケル・チミノ

2016年07月04日 | 映画
ダッカのテロ事件。

日本の、
バングラデシュの発展のために尽力されておられた方々が
犠牲になられ、心が痛いです。
ご冥福をお祈りするばかりです。

かつてジョージ・ハリスンがバングラデシュ難民救済コンサートを開き、
それでバングラデシュという国を知りました。


売り切れだが、画像を貼るために


イラクでもテロ。ラマダンめがけて、
このような惨事がつづく。
言葉もありません。



そしてもうひとつの訃報が。

映画監督マイケル・チミノ氏死去。

この監督に関しては思い入れがあり、
まだ若かったのに、と残念だ。

いずれ詳しくとは思うのだがどうだろうか、今回は簡単に…。

「ディアハンター」についても、
ちゃんとした感想は書いてなくて、
その頃の心情を書いたことはある。

http://isabea.web.fc2.com/movie/essay/deerhun.htm

「ディアハンター」1979年。青春映画だった。
(そういえば、この映画のカメラマン、
名手ヴィルモス・ジクモントも亡くなられた)




始め見た時、ベトナム戦争映画かと思っていたら、
はじめ延々と、若者たちのパーティーの様子がつづられる。

延々と、果てしもなく続く、
戦場へ旅立つ前日の日のパーティー。

当時、やおいとかボーイズラブなどの流行がまだなかった時、
私たちの唯一のよりどころであった、「ジュネ」、
そのジュネに、このパーティーシーンを表して、
ヴィスコンティの再来だ!と称賛されていた。

テレビ放送ではすっぱりカットされていた
この延々と続くパーティーシーンが、
この映画の最初のキイだった。
ここがあるからこそ、つづくベトナムの場面の悲惨さが際立った。

力量のある監督だと思った。

トレーラーで暮らす二人の主人公
(デ・ニーロとクリストファー・ウォーケン)、
その何気ない会話が、クライマックスの伏線となっている、
その脚本の鮮やかさにも。

ロシアン・ルーレットという名も、
この映画で初めて知った。

3時間という長尺を、ぐいぐいと引っ張っていって、
一瞬も飽きさせない。

こんなすごい監督がいたかと私たちは驚いたものだ。


これでチミノはアカデミー賞作品賞、監督賞、
助演男優賞(ウォーケン)など獲得し、
一躍ハリウッドの寵児になった。

だけども、次の「天国の門」で湯水のごとく製作費を使い、
ユナイトをつぶしてしまった。

当初、確か3時間とも4時間とも言われた作品は
2時間半くらいに編集され、公開されたが、
当然、興業は失敗した。

映画会社ひとつつぶしてしまったことで、
チミノはハリウッドから干され、仕事はなくなった。


「天国の門」は、初公開の時、私も見たが、
あれは主役のクリス・クリストファーソンがミスキャストだった。
それがすべてだったと思う。

起伏のあるストーリーではあったが、
クリストファーソンで3時間、4時間はきつい。
別に悪い俳優ではないのだけれど(もとは歌手だったはず)、
超大作の主役をはれるほどの魅力があったかは疑問。

のち完全版がテレビで放送されたようにも思うが、
見ていないので確かでない。


干されていたチミノを救ったのは、
イタリアの大プロデューサー、ディノ・デ・ラウレンティスだった。

ラウレンティスはよほどの変わり者。
でも彼のおかげでチミノは息を吹き返した。

1985年の「イヤー・オブ・ザ・ドラゴン」。




主人公のミッキー・ロークとジョン・ローンは、
この映画でブレイクした。

チミノは男優の選び方がやはりうまい。
クリストファーソンだけがミスだった。


この映画のパンフレットに、
森山京子という評論家が書いている、

・・・・・
「そして、ただ一つのこだわり、
生涯の対戦相手と見極めたジョーイ・タイ(ジョン・ローン)
を追う時にだけ、彼の目に火花がスパークする。
この火花はほとんど恋と呼んでもいいもので、
宿敵だから恋してしまうという不条理な関係が
この二人の男を支えているといえるのだ。

・・・・・


女性ならではの視点だろう。

そして、そうとでも解釈しないと、主人公の、
宿敵へのこだわりが理解できないほどの映画でもあった。

ジョン・ローンは見事なまでに光り輝いていて、
白皙の美青年。
だけど実は、ものすごくあくどいやり方で
チャイニーズ・マフィアのドンにのし上がった男。
なのに抗しがたいほど魅力的。


映画は刑事アクションものとして作られているので、
深い掘り下げはない。
チミノとしては、もう少し長尺を望んだようなふしはある。
ガタピシした展開もあった。
それでも2時間14分。

アクション映画としては長い尺だった。
チミノらしい。


ともあれ、この映画で息を吹き返したチミノは
87年「シシリアン」を作る。

私が追ったのは、ここまで。

「シシリアン」はイタリア系のチミノのルーツである、
シシリーを舞台にしたマフィアもの。
主演のクリストファー・ランバートは当時、
人気上昇中のハンサムな俳優。

相変わらず男優のチョイスは抜群だったが、
もう内容を覚えていない。

多分、ランバートに対する、
対抗相手が存在しなかったためだと思っている。

「ディアハンター」におけるデ・ニーロとウォーケン、
「イヤー・オブ・ザ・ドラゴン」におけるロークとジョン・ローン、
このように、主人公と拮抗する相手が存在してこそ、
チミノの映画は輝いたのではないかと考えている。


この後、ミッキー・ロークに乞われて90年「逃亡者」を
(ロークが恩返しのつもりでチミノに監督を依頼したらしい)、
それからはあまり消息を知らない。
事実その後ほとんど作品を残していないようだ。


結局、マイケル・チミノは「ディアハンター」一本だけの
栄光で終わってしまった
(私にとっては、それと「イヤー・オブ・ザ・ドラゴン」)形になる。

完璧主義ゆえのこだわりが災いして、
ハリウッドの体質には合わなかった。

とても豊かな才能の持ち主だったのに、
それを生涯あまり生かし切れなかった、それが残念だ。

でも私にとっては「ディアハンター」という映画によって、
彼は永遠に忘れられない名となっている。

早すぎる死に、ご冥福を。

「ディアハンター」のブルーレイ



「イヤー・オブ・ザ・ドラゴン」のDVD






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