今日の朝
新居浜のおばあちゃんが
亡くなったという
知らせがきて
僕は仕事で
撮影中だった
数週間前から
体調が悪くて
病院に入院していたので
2週間前に
会いに行ったのだけど
覚悟したのだろうか
僕は病室に
おばあちゃんに
会いに行って
痩せていたけど
いつもどおりで
それから
僕がうまく話せなそうだったので
イタリアの旅の写真を見せて
ラファエロとダビンチの描いた
マリアさまの話をした
それから
おばあちゃんを抱きしめて
ありがとうと言った
おばあちゃんは
お父さんとお母さんを大事にして
守ってあげてねと言って
泣いていた
僕は涙を心に留めながら
しっかりしたフリをして
ありがとうげんきになってくださいと言って
カーテンが閉まって
僕は病室を出た
病院の6Fの窓から
海が見えて
雨が降ってきて
霞んでいた
カーテンの向こう側で
おばあちゃんは泣いているんだろう
人は強くそして弱く
昔から
おばあちゃんは
いつも笑っていた
いつだって元気で
僕なんかより元気なんじゃないかと思ってた
いつだったか
何年か前に
おじいちゃんとおばあちゃんと
たくさん話しをして
それから別れ際に
おじいちゃんの家の玄関前で
写真を撮らせてもらった
ほんとにいい写真が撮れて
僕はそれをプリントしてあげたら
食器棚のところに飾ってくれた
そして
僕の部屋にも
貼ってある
とてもいい笑顔の写真
昨日、親戚から連絡がきて
遺影にその写真を使っていいかなというので
もちろんですと言った
僕は東京駅のホームで動けなくなって
笑いながらボロボロと泣いた
もういつやめてもいいのさ、写真
うまく書けそうにないし
うまく思うこともできず
うまく考えることもできない
頭にブロックを作って
なるべく思考しないようにする
おばあちゃんは
遺影を撮ってもらわないとねと
いつだったか笑って言っていた
いつも笑っていた
と思う
いつだって笑っていた
いつまでも
僕の心の中で笑っていてくれる
僕は今日は泣く
東京は雨が降っている