写真日記

休む間もなく
過ぎていく日々に
ただそのままに
走り回って
撮影をしてセレクトして納品して
コーヒー飲んでコーヒー飲んで
たまにビール飲んで
やがて春になるという

忙しいのがいいのか
暇なのがいいのか
まあどちらでもいいけど
とにかく日々が過ぎていく

東京→美浦→名古屋→川越→板橋→船橋→茂原→銀座
くるくるくるくるまわりまわって
それからまたコーヒーを飲む

蟻の行列みたいに連なり歩く
人波にのみこまれてもヒトリ
赤い靴を履く意味はあるんだろうか

ヒトは傷つきやすく
だけどヒトは強く

3月11日でも
12日でも13日でも
とにかく立ち止まらずに
ヒトは日々に仕事に生活に追われている

今日もまた明日も
満員電車は走り続けて

それぞれに
違って
そして
誰もが
孤独な自分を恐れ
先がみえた自分を恐れ

いつも最短距離しか飛ばない
渡り鳥みたいな気持ちで

人の死を想うとき
机の上の花は悲しく咲き
空は曇り咽び泣く
人の死に対峙するとき
どうすることもできないけど
どうにかしたいとおもう
お風呂に入っていても
それをおもう

でもあなたは強がってみせて
カーテンの向こう側で泣いているんだろう
そんなことはわかっちゃいるけど
今日は空も美しく
悲しく輝くのだ

駅のホームで
電車を待っている時
人々はそれぞれに
日々を祈り願っているんだろうか

はじめて降りた板橋駅
ちいさなスタジオで
札幌から来たというモデルさんを撮った

撮影が終わって外にでると
東京は右も左もわからず
ここがどこかもわからないという

名古屋でその感覚を味わったばかりだったので
たぶんいい喫茶店をみつければいいんじゃないかなというと
まだコーヒーは飲めませんと言われた

僕はいったことのある
北海道の町を思い出して
それから
静内にある喫茶店を思い出した

純潔を汚すんじゃなくて
一歩を踏み出すってことなんだろうか

19歳の夏にウランバートルに着いた
自分に聞いてみようか

確定申告をして
税務署に書類を出して

それから
久しぶりに
井上陽水のレコードを聴く

レコードって
ジャケットとかブックレットが
かなりキテいる

そして
ハリをゆっくりと盤に落として
すこしノイジーな音と
コーヒーがよく合う

まったく
なんていう時代なんだ

断絶にセンチメンタルだぜ

撮影が終わって
知らない町の駅の前のベンチに座って
夕焼け空を眺めていた

スガキヤという
名古屋のソウルフードがあるというので
教えてもらったとおりに
ラーメンを食べて
それから
近くになんともいい喫茶店をみつけて
美味しいコーヒーを飲んで
沖縄の話をしてたくさん笑った

ついでに
コメダコーヒーも行って
名古屋スタイルを満喫して
夜中の新幹線で東京へ戻ります

あっといまに朝が来て
部屋のカーテンを開けると
予想通り
雨があがっている

どこまでも晴れ男
差してきたビニール傘を
煙草臭い部屋のドアノブに引っ掛けて
チェックアウトすると
一日中青空で暖かい日になった

気持ちのいい陽射しを浴びながら
快適に夕方まで撮影

あっという間に
新幹線は名古屋駅に着いて
JR環状線に乗り換えて
はじめての駅で降りる

大雨が降っていて
煙草とカビの臭いがまじった
ホテルの部屋にチェックインする
眠れそうにないので
大雨の中
今池まで歩いて
味仙で台湾ラーメンを食べる
そういえば
辛いものが苦手だったのだけど

煙草の煙臭い店内で
大汗をかきながら
いったいなにをしているんだろうと
笑えたのでよかったけど

早朝から
茨城で撮影して
終わってそのまま
東京駅から新幹線に
飛び乗りました

名古屋まで
セレクト作業しながら行きます

そういえば
馬の撮影中に
白いネコが乱入してきました

久しぶりに
神楽坂のインドールで
生姜焼きを食べて
おばちゃんに
親鸞の話を聞いた

花粉症を治すという
モーツアルトの曲を聴きながら
懐かしい生姜焼きを食べて
ずっとおばちゃんの
浄土真宗の話を聞いて
僕は大江健三郎とフランシス・ベーコンと
それからミレーの話をして
因果と原発と自民党の話を聞いて
それから
自分たちの世代を生きなさいと
言われた

ただカレーが食べたかっただけなのにね

でもなんとも
まあ
不思議と悪くない気持ちで
神楽坂を歩いて
コーヒー豆を買って
家に帰ってから
いろいろと考え事をして
それから腹が減って
スーラータンメンを食べに出かけて
帰ってきてから
明日からの撮影の準備をしながら
事務的処理仕事をしながら
TVをみながら
白ワインを飲んで
もう深夜の3時で
明日は6時起き

ねよう

松山から新宿

東京の空は
あいかわらず灰色で
冷たく鈍く輝いている

いつものように
いつもの部屋に戻って
それから小さな湯船に体を沈めて
四国を思い出す

病院の花は悲しく咲いていた

ここはどこだ
どうしてここにいるのだ

すぐに忘れる
やがて日々に消えていく