創作日記&作品集

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連載小説「Q」19

2020-04-27 06:13:15 | 小説
連載小説「Q」19
「しかし」と順平は反論する。
仕事や出世に集中できなかったのは、夢のせいだ。
順平の夢は小説家である。
小学校の時、朝礼の壇上で遠足の作文を読んだ。
高校の時読後感想文が入選した。
褒めてもらったのはその二つぐらいだ。
でも、小説家は小さい頃からの夢だった。
小説家になる為に最初は教師になろうとした。
教師には夏休みや春休みがある。
とても、不純な動機だった。
教育大学(その頃は学芸大と言ったが)の受験に失敗して、一浪後に、最初に受験して合格した大学に入った。
私立の薬科大学である。
考えもしなかった選択であった。
 ――要するにどこでもよかった。
クラブ活動も文芸部ではなかった。
理科系の文芸部など自分とレベルが違うと思っていた。
身体を鍛える方が大事だと、卓球部に入った。
四年間ひたすらラケットを振っていた。
卓球が好きだったわけではない。
素人に毛の生えた程度だが、殆どが大学に入ってから卓球を始める同級生よりは強かった。
だが、それも内輪のことで、他流試合には、だらしなく負けた。
卒業後は、殆ど卓球をやらなかった。
小学生の娘に負けてからは全くやめた。
結局は、――いつも敗者だった。
いや、負ける前に逃げたち。
順平はそう呟いて深いため息をついた。
連載小説「Q」#1-#10をまとめました。


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