連載小説「Q」18
五十五才の時、後輩に役職を抜かれた。
それからは定年までひたすら守りに入った。
一番下の役職で、仕事は新卒と同じだった。
出世なんかとうそぶいていたが、無関心ではなかった。
順平は同僚や部下には「いい人」で通っていた。
人に嫌われるのが耐えられなかったから彼らの味方のように装った。
その為に上司に反抗した。
上司にも恵まれなかった。
正座して、愛想笑いを浮かべて病院の幹部にお酌するHの姿を思い出した。
あれは出来ない。
私学の出であるのも関係した。
いくつもの理由を指で数えて自己満足した。
だが、定年から四,五年も経つと、客観的に自分が見え始めた。
やはり能力がなかったのだ。
現役で合格する能力。
公立大学に合格する能力。
お世辞を言う能力。
全ての原因はそれに尽きる。
「いい人」は「どうでもいい人だった」と気づいた。
「いい人」は「無能」と同意語で、部下は裏では笑っていたのだろう。
連載小説「Q」#1-#10をまとめました。
五十五才の時、後輩に役職を抜かれた。
それからは定年までひたすら守りに入った。
一番下の役職で、仕事は新卒と同じだった。
出世なんかとうそぶいていたが、無関心ではなかった。
順平は同僚や部下には「いい人」で通っていた。
人に嫌われるのが耐えられなかったから彼らの味方のように装った。
その為に上司に反抗した。
上司にも恵まれなかった。
正座して、愛想笑いを浮かべて病院の幹部にお酌するHの姿を思い出した。
あれは出来ない。
私学の出であるのも関係した。
いくつもの理由を指で数えて自己満足した。
だが、定年から四,五年も経つと、客観的に自分が見え始めた。
やはり能力がなかったのだ。
現役で合格する能力。
公立大学に合格する能力。
お世辞を言う能力。
全ての原因はそれに尽きる。
「いい人」は「どうでもいい人だった」と気づいた。
「いい人」は「無能」と同意語で、部下は裏では笑っていたのだろう。
連載小説「Q」#1-#10をまとめました。
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