回廊の陰翳 (文春文庫) | |
広川 純 | |
文藝春秋 |
【裏カバー内容紹介文】
京都市内を流れる琵琶湖疏水に浮かんだ、男の溺死体。親友の死に疑念を抱いた若き僧侶・蜷川賢了(にながわけんりょう)は、遺体から違法ドラッグが検出されたことを知り、調査に乗り出す。一方警察には、国宝級の仏像の不正売却を告発する怪文書が届いていた――。京都に君臨する巨大宗派の欺瞞を抉り出す、新・社会派ミステリー。
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たとえ御仏に仕える坊(ぼん)さんと言えども、所詮は人間。
かすみを食って生きていくわけにはいかぬもの。
そんな坊さんが金と権力を持ってしまえば何をか言わんや。
堕落の道を一直線。
「地獄の沙汰も金次第」というわけで、祇園で豪遊、妾宅へ入りびたる、接待ゴルフにお呼ばれされる、とエエ御身分この上なし。
K宗総本山・瞭明寺という架空のお寺内部の腐敗を暴く社会派ミステリー小説でありました。
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お寺さんの内部事情がわかって面白い。
たとえば総本山に上納金を払っている末寺(まつじ)は、構造上、フランチャイズチェーンのコンビニと変わりないこと。
墓地に墓を建てた代金は寺には一切入らず、すべて石材屋の収入になっていること。(寺の主たる財源は葬儀と法事)
如来(=女)、般若(=酒)、泡般若(=ビール)、独鈷加持(=情交)、内陣(=女陰)など、僧侶の隠語があること。
それに、国政の国会と同じような宗議会なるものを運営していて、四年に一度の選挙時には票を得るために立候補者は有権者の僧侶に実弾(=現金)を渡しているということ。
国政選挙とは違うので、お金の授受があっても選挙違反にはならないと言うんだから、もう何をか言わんやである。
いかなる組織も肥大化すればするほど、上層と末端との温度に差が出てくるのは世の常か?
よし、かくなる上は、声を大にして一から十まで数えてみよう。
「坊(ぼん)さんが屁をこいた!」
「匂いだら臭かった!」
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