「テロ支援国家指定解除は拉致問題解決が条件」－米北朝鮮特使発言

　北朝鮮による日本人拉致事件について、米国のデトラニ・６か国協議担当特使が「北朝鮮のテロ支援国家指定を解除する前提条件として日本人拉致問題の解決がなされなければならない」と講演で明言した。その真意は、日朝協議開催に合わせて同盟国である日本を援護射撃する意図が半分、核開発問題解決後に見込まれる経済援助に日本の金を使わせるために障害となるに違いない拉致問題を早めに解決しておきたいというのが半分であろう。後者の意図が半分以上かもしれないが、それは米国の国益追求ということで仕方ないことであって、拉致問題解決に資することを米国が主張してくれているのは事実である。
　ここで、わが国がなすべきことは「拉致問題が解決しない限り一切の経済援助は行うことができない」と明言することである。一つには、この点で米国と共同歩調をとることにより、北朝鮮に圧力をかける目的である。もう一つには、わが国が拉致問題に真剣に取り組んでいることをアピールすることで、拉致問題の解決なくして日本の金を当てにはできないということを米国に悟らせ、さらなる北朝鮮への圧力を引き出す狙いである。これは大変重要なことで、拉致問題におろそかな取り組みしかしていないと認識されてしまったら、拉致問題の解決がないまま経済援助だけさせられるという馬鹿げた結果に終わりかねない。
　4日に行われた日朝政府間対話では、日本も主張すべきは主張した模様で、結果として協議自体は不調におわったが、おそらく日本政府も上述の観点を踏まえて交渉に臨んでいるものと推測される。4日午前の記者会見における「向こうはもともと拉致問題は解決済みという対応だ。それが急に真剣に前向きに検討しようという雰囲気になったとは聞いていない」という麻生太郎外務大臣の発言にそれが象徴的に表れていると思う。

(参照記事)
[拉致問題解決がテロ支援国家指定解除の条件…米高官]
　【ワシントン＝坂元隆】米政府のデトラニ・６か国協議担当特使は２日、ワシントン市内で講演、拉致問題の解決が北朝鮮の国際テロ支援国家指定を解除する条件になるとの考えを表明。日本との政府間協議を再開した北朝鮮に対し、問題解決を促した。
　特使は、拉致問題が「解決されるか、解決に向かうかすれば、米国は（指定解除をめざし）前向きの行動をとることができる」と述べた。テロ支援国家指定から解除されれば、北朝鮮は米国や国際金融機関から大規模な支援を受けることが可能になる。
　特使はまた、９日に北京で始まる６か国協議次回会合で、核放棄に向けた手順を話し合うことが「非常に重要だ」とし、複数の作業部会を作り協議を進めていきたいとの意向を示した。
（読売新聞） - 11月3日23時29分更新

☆もしよろしければ、Blog●Rankingに投票お願いいたします。