ゆめ未来     

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罪の壁/ウィンストン・グレアム

2023年03月06日 | もう一冊読んでみた
罪の壁 2023.3.6

罪の壁 』の原著は、随分以前に刊行され長らく幻の作品だった。
ぼくには、大変地味な作品に感じられた。



 「グレイヴィルみたいな男が
 「最初に知らせを聞いて俺もそう思った。俺たちふたりとも同じ文章を思いつくとは妙だな」
 「彼を知る人はたいていそう思うさ」


 グレイヴィルは流行遅れのやりかたで流行遅れになることをまったく気にしていなかった。自分なりの信念において自分なりの人生を送っていたが、それをひけらかすことはなかったし、逆に彼の最大の敵であっても、彼を堅物と呼ぶことはできなかった。
 そんな彼が四十回目の誕生日を迎えてまもなく、逝ってしまった。不名誉にも濁った運河で溺れて。


 「きみのお兄さんのように達成できるだけの十分な能力を持ち高い理想を抱く男は、気持ちの上であいまいさというものがなく、妥協できないことがある。妥協できない、あるいは妥協しようとしないんだ。完全にやり遂げてみせるか、あるいは引き下がることができずに死ぬしかない」
 本当にすべての人が熟考を投影させるのではなく、自分ならどうするか、自分ならなにができたかを想像しているだけだ。ひとり残らず、自分自身をグレイヴィルの立場において、みずからの性格にしたがって解釈したり、思いを巡らしたりしている。ひとりとして本当はグレイヴィルが考えたことなど知らないし、理解してもいない。たぶん、そんなことは不可能なんだ。おそらく。この厄介な問題を解くのは僕しかいない。僕ならばいかなる精神的曲芸でもなく、深い愛情と理解によってやれる----あるいはまったく太刀打ちできないか。


 どれだけ飾りたてても、基本的に悪徳は浅ましく憂鬱なもの。性の営みは昔から詩人たちが歌いあげてきたようなものであれば、たんにトイレの壁に落書きされているものでもある。

 無罪の評決がもたらされるかどうかではなく、無実だと証明できないことが問題です。そうした場合、どれだけ自分を擁護しても、その後無実だと証明されたとしても、悪評はいつもついてまわります。

  『 罪の壁/ウィンストン・グレアム/三角和代訳/新潮文庫 』


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