Takekida's log

千里の道も一歩から

経済の原理はねずみ講

2008-12-28 23:14:14 | Books
今年もあともう少し。仕事納めまであと2日。

すべての経済はバブルに通じる (光文社新書 363) (光文社新書)
小幡績
光文社

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サブプライムローンが金融危機を招いた理由、そしてバブル状態が繰り返される理由をわかりやすく解説した本。経済は基本的には拡大していくことを基本としており、そのシステム自体が限界に達しつつあることを分かりやすく解説してあります。

経済成長を可能としたのは人口増加による規模と需要の増大、分業体制を可能にする資本の蓄積、技術の進歩と教育の投資による生産性の向上ですが結局は需要がないと何も始まらないわけで常に「未開の地」を捜し求めていくというのは変わりません。そしていずれ産業資本は投資によって利益を増やしていく金融資本に移行し自己増殖を行っていく。その流れの先に行き着いたのがバブルであるわけです。

後から参入してくるものがいるからこそ、市場が拡大するからこそ儲かる。まさにこの仕組みは大きなねずみ講であるわけです。

結局経済は感情的な要素と場の雰囲気で大きく左右されるもの。今の経済状態を見ても分かるように予測も制御も簡単では無いというのが正直な印象です。

◆証券化の価値
 証券化=金融商品化 してリスクを多くの人に受けもってもらうことで流動性を確保して金融商品単体でのリスクを低減し、見えにくくすることで逆に投資を促進し、価格が上がっていくという悪循環を招いた。
◆リスクテイクバブル
 多くの資産家がリスクを求めてリスク資産を買い込むことにより逆に値段が釣り上がり、利益が出るためにさらに他の投資家を巻き込む循環の起こるバブルのこと。
サブプライムローンのようなリスクの高い商品をなぜプロの投資家が一方的に買い続けたのかというと貸し倒れしても担保としての住宅の価格が上昇していて回収できるというからくりがあった。住宅価格の上昇をまねいたのもサブプライムローンがあって低所得者向けの新しい市場が開拓があったからこそであり、いつかは破綻することが見えていたモデル。
結局は金融商品開拓も飽和しつつあり、未開の地を捜し求めていたうちに飛びついたのが低所得者向けのサブプライムローン。
◆バブルの本質
 バブルが起こるときは多くのプロ投資家はバブル状態であることを認知しており、損しないために逃げ出すポイントをギリギリまで見極めている。この状態からバブルを引き起こすのには引き金(イベント)と将来に対する悲観的な見通しあればいい。多くの投資家はバブル状態になるところに逆に資金をつぎ込み他の投資家との相対的なレースに勝つために投資を続ける。

やはり実体の無いものは残らないはず。こんな金融経済主体の異常な時代はいつか終わって実体経済に逆戻りということになれば資源の無い国は恐ろしいことになるのではないかというのが今の印象です。分かっていながら対処できにというのが人間の合理性の無さなのですが。

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2 Comments

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すぐバブる市場 (せと)
2008-12-29 15:23:46
サブプライムの本質が分かりやすい本ですよね。
しかも、面白い!
著者自身投資家なので、記述に説得力がありました。

日本は資源がないと言われながらも、『レア』メタルだけはそこそこあるっていうのは運いいですね。
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History repeats itself. (たけきだ)
2008-12-30 00:04:52
同じ時期におんなじ本を読んでいたとは奇遇です!

論理的で分かりやすい本だと思います。当事者が書くというのは確かに納得できるものがありますね。

半導体の分野はレアメタルだらけです。
うまく回収できれば資源の宝庫になると思います。
特に近年高騰してきたのでリサイクルのうまみが出てくるのではと思ってますが…
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