幸福維新の志士となれ <幸福の科学>

国難打破から、いざ、未来創造へ

宮崎日日新聞、記者コラムより

2010年05月19日 | 口蹄疫
宮崎日日新聞より

5月19日

■悲痛な声なぜ届かない

受話器の向こうの声は震えていた。怒り、絶望、虚脱感。惨劇に見舞われた川南町のこれほどの声がなぜ、今まで国に届かなかったのか。

 口蹄疫感染疑いの豚が確認された養豚農場の農家は殺処分が始まるまでの数日間、水疱(すいほう)が破れ、乳房が真っ黒になりながら子豚に乳を飲ませる母豚が息絶えるまで面倒を見続けた。別の養豚農家は隣の農場で殺処分が始まったことを知り、電話口で「ナイフを首に突きつけられた」と恐怖におびえた。

 「全く問題ない。万全の態勢でやってきた」「幸いにして3キロ圏内に封じ込められている」。本県を訪れた赤松広隆農林水産相の言葉と受話器越しの惨状とのむなしいほどの温度差。地方と国の距離に憤りすら感じた。

 問題は無数にある。獣医師の所見で感染疑いを確認し、法に基づき殺処分を始めているにも関わらず、遺伝子検査で陽性反応を確認してからという国の発表のタイミング。一刻も早い情報を求める農家の混乱、不安を招いた。

 国、県の指揮系統がはっきりせず、防疫の現場も混乱した。現場の獣医師や行政、団体職員、そして農家の意見を吸い上げ、初動の遅れを修正できなかった柔軟性のなさも被害拡大の一因だろう。

 「牛は私の人生のすべてでした」。種牛づくりに情熱を注いだ和牛繁殖農家の言葉だ。金額に換算できない、失われゆく畜産王国の「宝」の歴史や思いを心に刻み取材に当たろう。

 口蹄疫は「災害」だ。失われたものは大きく、得るものは何一つないようにも感じる。そうした中で、少しずつ、確実に県内外で支援の輪も広がっているのは、せめてもの救いだ。私たちにできるのは「消毒」「消費」「正しい知識を身に付けること」だろう。

 家畜の命を断って生をつなぐ「命のリレー」。それすらできない農家の無念。食卓に上がることもなく処分されていく家畜たち。「食」にまつわるさまざまな課題に思いをめぐらせてほしい。被災農家からの切なる願いだ。(口蹄疫取材班・草野拓郎)

      ◆

【記者コラム】べぶん舌(えびの支局)5/19

 普段なら心地よい風が怖い。味わったことのない感覚だ。えびの市内4例目の口蹄(こうてい)疫疑いは、1例目から2キロ北で確認された。その感染ルートが見えない中、15、16日、ある地区からもくもくと煙が上った。4例目からさらに1キロほど北上した場所で、農家が飼料用に農地で生産したイタリアンを燃やしていた。餌を焼く―。防疫のためとはいえ、連綿とした営みを断ち切る苦渋の選択だ。「本当はもったいない。でも4例目があまりに近い。最近、嫌な風も吹く。負担は重いが、餌は買うしかない」。地区の農家は複雑な思いを電話越しに語った。悲哀のこもった煙をただ眺めることしかできなかった。(賀)

      ◆

【記者コラム】うすでこ(都農支局)5月15日

 「だめやったわ」。赴任以来、仲間として輪の中に迎えてくれ、幾度も焼酎を酌み交わした友も口蹄(こうてい)疫ウイルスに敗れた。「すべて殺さんといかん」。電話口では気丈に振る舞っていたが、悔しさや怒り、悲しみは計り知れない。川南町や都農町で今、連日のように悲惨なドラマが起こっている。小欄だけでも「明るい話題を」と思うが、一人でも多くの人に「現場」を知ってほしい。家族同然で育ててきた農家の思い、本来の役目を果たせず旅立つ家畜たちの哀れさ…。本紙緊急連載では多数の農家に協力を仰ぎ、「今」を伝えている。地元紙だからできることはまだまだあるはず。全力で応援していきたい。(鳥)




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