学芸員のちょっと?した日記

美術館学芸員の本当に他愛もない日記・・・だったのですが、今は自分の趣味をなんでも書いています

芹沢介のドローイング

2010-01-02 20:28:14 | 読書感想
雑誌『民藝』383号は、染色家芹沢介の仕事についての座談会が特集されています。参加者は柳悦孝、岡村吉左衛門、鈴木繁男、芹沢長介、水尾比呂志の5名で、みな、芹沢の創作を間近で見てこられた方ばかりです。

座談会のテーマは、芹沢の仕事のなかでも、いつから型染を始めるにいたったか、どのようにして作品が生まれてきたのか、その2点が重点的に話し合われています。私が興味をひいたのは、後者のほう。つまり創作の秘密について、です。

参加者の証言によれば、芹沢は執拗なほどドローイング、つまり写生を繰り返したそうです。ちょっと抜粋してみましょう。


柳「…とにかく暇さえあれば下絵をかいてらっしゃいましたね。あのくらいたくさん煮詰めていらっしゃる方は、ほかに僕は知らないですね。(中略)新聞紙の余白だとか折り込み広告の裏だとか、何でも手当たり次第に書いてらっしゃいましたね。」

芹沢長介「裏が白ければどんな紙でもみんな使っていたんですよね。」

鈴木「リーチさん(バーナード・リーチ)からも細かい話を伺ったんだけれども、まずスケッチからというのが一番始めでしたよね。」


参加者からの興味深い証言です。我々が芹沢の作品に心ひかれる理由の1つには、こうしたドローイングによる確実性を無意識にも感じるからなのかもしれません。

ここで、あっと思いました。明治から昭和にかけて活躍したデザイナー杉浦非水もそうだったと。2人ともドローイングを繰り返し、基本をしっかり身につけるために、対象を模様化、抽象化にしてもブレないんですね。こうした共通点で芹沢と杉浦を一緒に並べてみると、とても面白いかもしれない。

細い糸を紡ぎだせたようで、ちょっと嬉しい(笑)今年はこのような新しい糸を自分なりにいろいろ見つけられるといいなと思います。
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