学芸員のちょっと?した日記

美術館学芸員の本当に他愛もない日記・・・だったのですが、今は自分の趣味をなんでも書いています

復讐の向こう側に

2007-02-10 21:17:33 | Weblog
昔々あるところに、おじいさんとおばあさんがいました。
おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯にいきました。

これはなんのお話でしょう?
そう、誰でも知っている桃太郎の冒頭ですよね。

今日は芥川竜之介の一風変わった『桃太郎』を読みました。
ちょっと内容を紹介してみましょう。

主人公の桃太郎は鬼退治に向かう道中、犬に出会います。
犬はきび団子をくれといいますが、桃太郎はやってもいいが、
半分しかやれないと言って妥協しません。犬はしぶしぶ承知して、
仲間になります。猿、雉も同様に。

さて、鬼が島にたどり着いた桃太郎は大暴れ。
平和に暮らしていた鬼たちは、桃太郎に成敗されます。
鬼の大将は、平和に暮らしていた私たちがなぜ成敗されなければ
ならないのかと桃太郎に問います。
桃太郎は明確な回答はせずに、鬼の子供を人質に国へ帰ってしまいます。
ここまででもすさまじい話ですが、このあとがもっとすごい。

桃太郎にやられた鬼たちは、ひそかに復讐の機会を狙っていました。
そんなとき、桃太郎のもとに居た人質の鬼が一人前になり、
見張り番をしていた雉をかみ殺すと脱走。
これを機に鬼の復讐劇は開始!
桃太郎の屋形に火をつけ、なんと猿を暗殺します。

さすがの桃太郎も嘆息をもらさずには居られなかったという話・・・。
(ちなみに犬は生き残りました)

この話を読んだとき、大笑いしてしまいましたが、
もう一度読み返すと、芥川の深刻なメッセージがこめられているようで
笑えなくなりました。

芥川は復讐をとかく否定した作家だったようです。
同様なことが『猿蟹合戦』や『或日の大石内蔵之助』でも見られます。
復讐はするべきものではない。
それがたとえ美談と言われている話であったとしても。
そんな芥川のメッセージがこめられているような気がしました。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿