学芸員のちょっと?した日記

美術館学芸員の本当に他愛もない日記・・・だったのですが、今は自分の趣味をなんでも書いています

赤湯温泉

2007-09-13 21:03:57 | Weblog
無事、旅行から帰ってきました。これから数日かけてブログにて報告をしたいと思います。ちなみに、当初東北を一周する予定でしたが、スケジュールの都合上、岩手県盛岡市をじっくり楽しむことにしました。

いくら万全の計画を立てていても、トラブルは突然に起こるもの。それは仕事に限らず、旅に関してもいえることでしょう。旅の場合には、それが醍醐味に化ける場合もあるのですが、そう感じられるのは後のこと。実は、一日目に岩手県の友人宅へ止まる予定だったのですが、旅行へ発つ前日に友人から「急な仕事が入り、泊めることができなくなった」と連絡がきたのです。さて、どうしたものかと思案していると、親から「赤湯温泉へ一緒に行かないか」と誘われました。偶然、両親も旅行の計画を立てていたのです。岩手県へ行っても宿がないし、何より温泉へ行くことができるのがありがたく、一緒に赤湯温泉へ行くことにしました。

赤湯温泉は、山形県の南に位置する南陽市にあります。900年の歴史を誇るそうです。田山花袋が、日本中の温泉地を描写した『温泉めぐり』(大正7)には「(赤湯温泉は)似たり寄ったりの宿駅的温泉場」と書いてあります。彼にはあまりいい印象ではなかったようで、それどころか「附近に小さな沼があるので、釣魚とか舟遊とかの興味はいくらか味わうことが出来た」と赤湯へ何をしに来たのかわからぬ始末です。それはともかく、田山の言葉を信ずれば、少なくとも90年前は、どこにでもあるような温泉場だったようですね。

私たちが泊まった旅館は、7部屋しかないという、こじんまりとした旅館。部屋に入ると、床の間にススキが生けてあるのが目に入りました。秋の演出ですね。部屋には露天風呂が備えてあり、もちろんいつでも入ることのできる贅沢。露天風呂の近くに来ると、わずかな硫黄の匂いがして、温泉場へ来たことを実感します。早速温泉に入り、肩まで浸かります。なんと幸せなことでしょう。目をつむると、遠くで祭囃子の音がします。それがまた興を添えて、時間が止まったかのような感覚になります(のちほど宿の人に話を伺うと、ちょうど秋祭りのある日であったとのこと)

湯に入った後、旅館に図書室があるというので、出かけて見ました。図書室にあるのは、膨大な量の展覧会カタログ。日本画、陶芸、書の展覧会が主で、それに加えて谷崎潤一郎、川端康成、司馬遼太郎の著作がずらりと揃えてありました。何でも経営者が20年かけて収集した本であるそう。旅館が気品にあふれているのも、経営者の蓄積された知識が「美」となって反映されているからなのかもしれません。仕事から離れた場所にいるはずなのに、「美」について考えてしまうのは、職業の性ですね。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿