伊東深水、といえば、大正から昭和にかけての美人画の名手。今日にいたるまで「江戸浮世絵の伝統をうけついだ最後の人」との評価がなされ、私の場合には版画作品のイメージが強い作家です。特に《対鏡》の感情の動きを想像させる女性の表情や『現代美人集』《初浴衣》の女性の色気、さらに《羽子板》の構図の面白さなどが思い起こされます。
昨夜は、その伊東深水が若い頃に体験した怪談話を読みました。深水が学生時代の夏休み、先輩や仲間たちとある避暑地へやってきて、妙な家を借りることになります。それは、手前から三畳、四畳半、六畳、そして八畳と奥に行くに従って広くなっていくという建物。広い八畳の部屋は先輩が独占することになり、深水たちはその手前の部屋に分かれて過ごすことになるのですが、数日後に先輩がその部屋を譲ると言ってくる。そして、その代わりに入った人も。実は夜中になると、その八畳の間でおかしな現象が起こることがわかり…。
話自体は短いのですが、さすがに怪談話とあって、背筋がぞっとしますし、最後にその部屋で幽霊が出る原因も記されていて、ますます怖くなります。
「八畳に近い六畳にさえも居るのをいやがって、四畳半と三畳へ皆が固まって暑い思いをしていた。」
彼らにとって、よほど怖い体験であったことがわかります。そして、それを読んでいる私も怖くなり、さすが怪談話。大変涼しい夜となりました…。
※この話は『文豪たちの怪談ライブ』(東雅夫編著、ちくま文庫、2019年)に収められています。
昨夜は、その伊東深水が若い頃に体験した怪談話を読みました。深水が学生時代の夏休み、先輩や仲間たちとある避暑地へやってきて、妙な家を借りることになります。それは、手前から三畳、四畳半、六畳、そして八畳と奥に行くに従って広くなっていくという建物。広い八畳の部屋は先輩が独占することになり、深水たちはその手前の部屋に分かれて過ごすことになるのですが、数日後に先輩がその部屋を譲ると言ってくる。そして、その代わりに入った人も。実は夜中になると、その八畳の間でおかしな現象が起こることがわかり…。
話自体は短いのですが、さすがに怪談話とあって、背筋がぞっとしますし、最後にその部屋で幽霊が出る原因も記されていて、ますます怖くなります。
「八畳に近い六畳にさえも居るのをいやがって、四畳半と三畳へ皆が固まって暑い思いをしていた。」
彼らにとって、よほど怖い体験であったことがわかります。そして、それを読んでいる私も怖くなり、さすが怪談話。大変涼しい夜となりました…。
※この話は『文豪たちの怪談ライブ』(東雅夫編著、ちくま文庫、2019年)に収められています。