学芸員のちょっと?した日記

美術館学芸員の本当に他愛もない日記・・・だったのですが、今は自分の趣味をなんでも書いています

オタク

2020-08-16 09:15:03 | 仕事
新人のとき、事務職の上司から「学芸員ってのはオタクだね」と言われたことがある。学芸員、というと言葉はかっこいいが、その上司から見たら、私たちは絵に対してマニアックな知識を有するオタクにしか見えなかったようだ。

オタクという文言が、ネガティブな時代だったこともあって、その言葉に当時は腹を立てたものだったが、いまは妙に納得している。なぜなら、自分の好きな絵は何分でも見ていられるし、目当ての展覧会があれば遠くまで見に行くし、気に入った作家がいれば画集やカタログを買うという行為は、オタク以外の何者でもないからだ。私は自分の背負っている「学芸員」という看板が、やたら重く感じるときがあり、とてもしんどかったのだが、自分は絵の好きなオタクなのだと思うようになってから、そういう重みから解放されて心が軽くなった。

現在、新潟市美術館で式場隆三郎展を開催しているが、彼もまた文芸、美術、民芸など色々な方面でオタクぶりを発揮した。近代までの知識人は、こういう人が多かった気がする。このごろ書店へ行くと、自分の好きなことを仕事にしろ、という内容の本をよく見かける。それが必ずしも正しいこととは思わないが、好きなことに、とことん頭を突っ込んでいくエネルギーは、人生をさぞかし豊かにしてくれるに違いない。