細越麟太郎 MOVIE DIARY

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●わたしのベスト・海外ミステリー3

2008年10月11日 | Weblog
ミステリマガジン/2008年『私のベスト3』アンケート

海外部門ベスト3
①『レイディ・イン・ザ・レイク チャンドラー短編全集3』 (レイモンド・チャンドラー)
②『ビッグ・アースの殺人』 (ジョン・エヴァンス)
③『帰らない日々』 (ジョン・バーナム・シュワルツ)

●コーマック・マッカーシーの「血と暴力の国」を読んで、あの『ノーカントリー』のピュア・イーブルに洗能されてか、その後なかなか好みの本にアタリがなかった。新作に6打席凡退となると、どうしてもわたしの場合はチャンドラーに戻る。いわゆる<初期化>という奴だ。そこでポケミス503の田中小実昌訳の『湖中の女』を読むことにしたところ、書店でその新訳短編というのを見つけてしまった。そこでロバート・モンゴメリー監督主演の映画に失望していたので、人気沸騰の新訳版を読んでみたら、これがまたスピード感があっていい。映画でいう<シノプシス>というノリである。なるほどチャンドラーは、これをもとに長編の肉付けをしたのか。ダイジェストではなくて、これは原点ともいえるエッセンスなのだ。
●好きだったジョン・エヴァンスという名前が懐かしくて読んだが、これは別人。しかも山岳や奥地のトレッキング冒険家を狙った計画性殺人鬼というのが怖い。さすがに作家自身の体力で歩き回る実感を書き込んだタッチには気合いが入っている。
●「リザベーション・ロード」という原題が魅力的な『帰らない日々』は、交通事故の加害者の深刻な悩みを描いた心理描写が深く、過失致死事故も運命的に<然るべくして起こる>という分析が怖い。 

    細越麟太郎<映画評論家>

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