●5月15日(金)10-00 築地・松竹3F試写室
M-055『リアル鬼ごっこ』(2015)セディック・ドゥ/アスミック・エース/ユニヴァーサル・エンタテイメント
監督・園 子温 主演・トリンドル玲奈 <85分> 配給・松竹+アスミック・エース
わたしはこれまでも園監督の映画は好きだし、彼の飽くなき映画魂は共感できるが、このところの3作品は、どうもタイプじゃないのが正直な実感だ。
それでも、とにかく面白かった「新宿スワン」から「ラブ&ピース」、そしてこの「リアル鬼ごっこ」が3作共に未公開という、この驚異的な早撮りのタフネスには恐れ入る。
以前に、あの映画評論家の淀川長治さんに、「見てばかりでなく、ご自分で、映画の監督をしたいと思いませんか?」と尋ねたことがあったが、「絶対にダメよ」と即答。
だって、映画の監督って、映画のことを知っているというよりも、100人を超えるスタッフの意思と人生を背負って数ヶ月も運命を左右して制作できる体力と根性なんて、ゼロだもの。
という意味でも、こうしてまだこの年の上半期に3本もの新作待機作を作るという園監督のエネルギーって、一国の首相や大統領のように、自信過剰でも決断する実行力がなくてはならない。
しかも、この3作は、いずれも人気コミック劇画ベストセラーの、恐るべき実写化なのだ。という意味でも「寄生獣」のヒットを継ぐべきコミック・ワールドの実写映画化というのは、おおごとなのだ。
自慢じゃないが、コミック本を触ったこともない昭和初期の旧世代の人間にとっては、昨今、活字原作本の映画化よりもコミック本の映画化が主流になってきたのは、まさに浦島太郎感覚。
ま、それでも映画は面白ければいい。という軽い気持ちで見る事は、一種の自身の老化のための<脳トレ>でもある。というアグレッシブな映画ファン根性は、負けないつもりだ。
が、これには正直、リアル閉口してしまった。昔の大林宣彦監督の少女コミックものは、それなりの感傷とセンチメンタルな夢想のイメージで見ていたが、この鬼ごっこは血染めのマッドネス。
一種のゾンビ映画だと思って見ているのだが、この作品の血しぶきは往年の東映やくざ映画のレベルを超える大量な流血コミックとなっている。そのあまりにもリアルな血しぶきサービスには閉口だ。
所詮は、これも少女コミックの大量流血喜劇なのだ、と思えば、ショーバイとしては理解できるが、これだけ<ドローン撮影>の表現力のある監督には、リアル、マジな映画も撮ってくださいよ、とお願いしたい。
■微妙なシュートボールをファールしていたが、フルカウントでデッドボール。 ★★☆☆
●7月11日より、新宿ピカデリーほかで、全国ロードショー
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