●12月15日(火)12-30 六本木<FOX映画試写室>
M-155『ブリッジ・オブ・スパイ』" Bridge of Spy " (2015) Fox 2000 pictures / Dreamworks / Paticipant Media
製作+監督・スティーブン・スピルバーグ 脚本・イーサン・コーエン+ジョエル・コーエン 主演・トム・ハンクス <142分> 配給・20世紀フォックス映画
まさに現在のハリウッドのスーパー・クリエイター達が結集した必殺のスパイもので、とにかく曲者のコーエン兄弟がシナリオを書き上げた、冷戦時代の実話からの意欲作。
1957年というから、あの世界大戦が集結して12年ほどの冷戦時代のニューヨークで、ひとりの年老いた画家が、ソ連のスパイ容疑でFBIによって逮捕された。
国選弁護人のトム・ハンクスは、ニュールンベルグ裁判でも手腕を発揮したことのあったエキスパートであり、実直な家庭人でもあり、現在はリタイア間近の存在だった。
スパイ容疑の老人は、裁判の結果、終身刑に匹敵する罪状で投獄されていたが、63年のこと、ソ連の領域を偵察飛行中のパイロットが撃墜されて逮捕されてしまった。
CIAは、その有能な若手パイロットを救出するために、獄中の老齢のソ連スパイ終身犯との人質交換の交渉を、またしてもトム・ハンクス国選弁護士に依頼してきたのだ。
たしかに実話というだけに、それまでの経緯は丁寧に描かれていて、あの冷戦時代の微妙な政治交渉が淡々と描かれるので、コーエン兄弟のシナリオにしては神妙な前半。
しかし、偵察機の撃墜シーンの凄まじい銃撃から墜落脱出、映画は突然、おおおスピルバーグが目覚めたか・・・というような迫力でテンポが早めて来る。
つい先日見た「完全なるチェックメイト」も、その米ソが緊迫していた冷戦時代が背景だったが、やはり水面下では、このような事件が両国間で頻発していたのだろう。
という訳で、やっとハンクス国選弁護士が東ベルリンに飛び、まさにあのベルリンの壁が市内に設置されているという緊迫したシーンが再現されて、さすがのスピルバーグのワザが光る。
あの「シンドラーのリスト」で経験済みの状況再現だが、こういうシーンの忠実な再現へのこだわりは、やはり入念な映像迫力を見せて、秀作「フランス組曲」に迫る再現力だ。
いろいろと米ソ両国の利害と戦略の混沌とした裏交渉の末に、とうとうクライマックスでは、米軍パイロットとソ連スパイとの人質交換が行われる事になり、あの<橋>が再現される。
というところで思い出した。そうか、あの73年に公開された、アンリ・ヴェルヌイユ監督の『エスピオナージ』という渋い傑作があった。
そこで、FBIの諜報長官ヘンリー・フォンダが、ソ連から亡命していた要人ユル・ブリンナーを、この国境の橋に連れて行ったラストシーンは、これだったのか・・・。ナットク。
トム・ハンクスは適役だが、やはりスパイ容疑で逮捕されたマーク・ライアンスの演技には呑まれているし、スピルバーグもお疲れさんでした。
■大きな左中間への飛球を、レフトが後逸してツーベース ★★★☆☆
●2016年1月8日より、全国ロードショー
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます