●11月28日(日)20-40 ニコタマ・サンセット傑作座
OV-284-107『サン・フィアクル殺人事件』Maigret/L'Affaire Saint-Fiacre(1959) Filmsonor Intermondia Film/Cinetel/Pretoria/ Titanus.
原作・ジョルジュ・シムノン 監督・ジャン・ドラノワ 主演・ジャン・ギャバン、ヴァランチーヌ・テシエ <スタンダード・102分・モノクローム>VHS
われわれの青春時代には、フランス映画が盛んで、とくに美男のジェラール・フィリップやシャルル・ボワイエの主演作品には魅了されたものだが・・。
まるで古いジャガイモのような顔をしたジャン・ギャバンも「望郷」の頃よりも、「現金に手を出すな」や「赤い灯をつけるな」などのノワールに出た頃からがいい。
しかも、善良な中年男の役よりも、犯罪が絡んだ悪人の役が良くて、ハンフリー・ボガートやジェームズ・キャグニーよりも、懐の深い人間味が最高だった。
個人的には、ベルモンドと共演した「冬の猿」が大好きだが、ジョルジュ・シムノン原作の、このメグレ警視のサン・フィアクルと「殺人鬼に罠をかけろ」が絶品。
おそらくメグレの少年時代の初恋の女性だった・・と予測されるが、北部の田舎にあるサン・フィアクルに住む伯爵夫人からの手紙を貰って、メグレは列車で帰郷。
古びた駅前のカフェで再会したふたりは、無言で再会を温め合う、・・・この最初のシーンの老人の視線が、お互いに別々の人生を歩き疲れた心情が滲んでいい。
後継ぎの放蕩息子はパリにいて、この田舎の屋敷は老朽していて後継ぎもなく、飾られていた美術品なども、古物商が引き取りに来ている閑散とした空気が寒い。
相談というのは、最近、殺人脅迫の手紙が届いていて、その相談にパリから旧友で、警視のメグレに捜査依頼をしたのだが、屋敷に着くなり老嬢は自室のベッドに・・。
急死した老嬢の死因は薬物なのか、絞殺なのか、・・当日に屋敷に出入りしていた数人の男たちを集めて、あのポワロ探偵のような、メグレの推理は鋭い。
ドラマの展開は、多くのクリスティ・ミステリのエルキュール・ポワロのようだが、しかしギャバンの<メグレ警視>の推理と摘発は鋭いのだ。
おそらく多くの<メグレ警視>ものは作られただろうが、手持ちのビデオは、これと「殺人鬼に罠をかけろ」のみで、とにかく貴重な<ギャバンもの>なのだ。
先週末に、横浜から故郷盛岡に引っ越した妹の家を見に行ったが、まさにこの老境は孤独と郷愁と、多くの後悔の追想で、まさに<メグレ気分>の旅だった。
■年はとっても、メグレの推理の勘は鋭いのだ。 ★★★★
●アートデイズ・メヂィア・ラボ
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