細越麟太郎 MOVIE DIARY

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●『ホワイト・ゴッド*少女と犬の狂詩曲』驚異の捨て犬たちのスタンピード。

2015年09月25日 | Weblog

9月14日(月)13-00 京橋<テアトル試写室>

M-119『ホワイト・ゴッド*少女と犬の狂詩曲』" White Dog " (2014) The Match Factory / Proton Films / Pola Pandora ハンガリー

監督・脚本・コーネル・ムンドルッツォ 主演・ジョーフィア・プショッタ <119分> 配給・シンカ・ミッドシップ

わたしは犬が大好きで、過去に少年時代に4匹も飼った事があり、いまでも犬を見ると心が和むが、その反面で猫はどうも苦手である。

つまり、この映画はドッグ・マニアには感動の作品だが、ネコ派とか、犬の苦手なひとには全く面白くないだろう。つまり「わんわん狂騒曲」実写版なのだ。

ブダペストに住む13才の少女ジョーフィアは多感な時期だが、両親の離婚と、学校でのイジメでも問題児扱いされた異端な生徒だが、愛犬だけは心が通じていた。

母親と母子家族として生活していたが、母の海外赴任のために工員をしている父親の家で暮らす事になり、以前から犬の嫌いな父親は、犬との同居には不快だった。

というのも、ハンガリーでは雑種犬の飼育には税金がかかるので、放置された宿無しの犬たちがしばしば問題を起こして、当局もトラブルに困っていたのだった。

学校の音楽グループでトランペットの練習している彼女は、学校にも愛犬をつれていき、オーケストラの指揮をしている教授も犬が嫌いなので、教室に入れることを禁じたのだ。

とうとう犬の同居でイライラしていた父親は、車に愛犬を乗せて、遠い過疎地に捨てて来てしまい、それを知ったジョーフィアは愛犬を探しに家を出てしまった。

こうした家庭内トラブルと子供の家出は、つい先日見た「ぼくらの家路」でも感動的に描かれたが、このブダペストでは雑種犬の放置とその始末には大きな都市課題を抱えている。

映画の圧巻は後半で、とうとう愛犬を探す少女の周辺には、放置されてホームレスとなった大型雑種犬の大群が集まり、とうとう西部劇の牛のようなスタンピードを起こすのだった。

この暴走シーンは数百の犬たちのブダペスト街路での暴走という、かつて見た事もない迫力で、ヒッチコックの「鳥」や「猿の惑星」を思わせるが、実際の犬たちを暴走させたというアイデアは凄い。

しかもバックには、少女の学生オーケストラの演奏する<ハンガリー狂詩曲>が流れて、市街地をまるで洪水のような勢いで疾走する多くの雑種犬たちの狂騒ぶりを盛り上げるという異常事態。

かくして、この傑作はカンヌ国際映画祭で、<ある視点>部門のグランプリを受賞し、おまけに<パルムドール賞>ならぬ<パルムドッグ賞>を受賞したというから審査員の犬スキ感覚は笑わせる。

タイトルの「白い神」というのは、犬の目線から見ると、白人たち飼い主は<神>なのであり、その神に捨てられた犬たちは野生化するしかない、という絶叫なのだ、という。

 

■レフトのポールを巻いたライナーで、判定の結果ホームラン。 ★★★★

●11月21日より、新宿シネマカリテ他でロードショー 


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