細越麟太郎 MOVIE DIARY

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●『桜、ふたたびの加奈子』は母の堕ちて行く意外な心象サスペンス。

2013年02月22日 | Weblog

●2月21日(木)10−00 渋谷<ショウゲート試写室>
M−020『桜、ふたたびの加奈子』(2012)ジェイ・ドリーム、博報堂
監督/栗村 実 主演/広末涼子 <106分> 配給/ショウゲート ★★★☆☆
タイトルと宣伝ヴィジュアルのイメージから、母と娘の追憶を描く甘いメロドラマと思っていたら、失礼。
これは、6歳の娘を事故で失った母親の、精神的な苦痛と、娘の生まれ代わりを探す心の崩壊を描く心傷ドラマ。
ところが作品は、実にフォトジェニックなカメラで、ことの重大さを傍観する演出は、クールで端正だ。
お葬式の霊柩車が、明るい逆光のなかに消えて行く美しいシーンが、作品のレベルの高さを示していた。
子供の入学式の朝、ふとした油断で、娘が事故で他界したあと、母の広末の心は宙を舞う。
ことの重大さと失意で、心が憔悴しきっていくが、ドラマは悲惨さを特に描かない。
むしろ、娘の心が、古いアメリカ映画の「リインカーネーション」のように、現世のどこかに居る筈だと思う心の虚ろい。

これは異常ではなく。こうした心境の母親ならば当然の心の在り方だろう。
その子供の魂の静かな転生を願うこころの崩壊を描いていて、あの「シックスセンス」のような感性をチラつかせる。
ハリウッドで映画を学んだという監督の感覚は、非常にクールで内向的で上質なサスペンスがあった。
母もの。お涙もの。というテーマの甘さを巧妙に、精神心理映画にした度胸はエラい。
とくに、ラストの電話。この決着か。ーーー。いろいろと深みのある作品だ。

■バントヒットが、前進守備のセカンドの頭上を越えたヒット。
●4月6日より、新宿ピカデリー他でロードショー


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