諸葛菜草叢記

 "窓前の草を除かず“ 草深き(草叢)中で過ごす日々の記

田園幻想 昭和の日の風

2010-04-28 15:01:26 | 日記・エッセイ・コラム

  風は、ものばかりではなく、人の心も揺り動かす。季節の風に、人は名前をつけた。音信に添え、詩情を誘い、祈りを託し、幻想の世界を逍遥させる。* 風は物が動いて、虫が化す字形である。それらを、八方へ飛び伝える。

   青嵐は けやき若葉を 吹き散らし 大いなる春過ぎ行かんとす ー夢蔡ー

0424_029 【帰去来兮】記念に植えた欅。高さは、二階の屋根を越した。

 朝5時には目が覚める。起き出して、朝の冷たい空気を吸う。葉の茂り始めた牛蒡畑の中まで来て、雉が鳴く。

  あかやきや 草露はじき 雉走る  ー夢蔡

  熊蜂かわし  たたら踏みけり    -群峰ー

   は風に言葉を乗せる。そして、行く春のうわさ噺を伝えてまいりました。-ー

   目前には、広々と麦の畑が横たわっていた。麦は、勢いを増してきて緑の波となった。老人が、ここを歩くのは久しぶりであった。

  所在無く 歩み来たれば  青むぎ田 堆肥臭いて こころ安らぐ ー老農子ー 

Photo_2

  老人は、独り住まいである。最近、ひざ痛に悩み気力も衰えた。、庭木の手入れ、屋敷隣の畑での野菜つくりも熱が入らない。緩慢な一日が、ただ過ぎて行く。晩酌は欠かさないが、格別、味わって飲んでいるわけではない。すぐに横になるが、このところ熟睡した憶えがない。

  老人は、過ぎし日の“夢”を見た。離れ田んぼの帰り道である。二人の息子が先頭を走っている。、牛は、手綱を引かなくても、自分の行く先を心得ていた。「オーイ~!そんなに走るな~!」 と叫んだが、声にならなかった。▼ 「眠っていたのだろうか・・。」 老人は、寝返りをうった。電気は点けたまま、時計の針は、午前0時を少し回っていた。

  暗闇にして、老人は目をつむる。眠気はこない。時計の音が耳につく。寝返るたびに、膝に痛みがはしる。

  老人は、過ぎし日の夢を見た。 牛が、両目から涙をボロボロと流すのだ。 ▼ 農耕作業は、牛にとって過酷な労働であった。3年位が体力の限界である。若い元気な牛と変えるために、売りに出す。引かれてゆく牛は、運命を悟ってか、無言の抵抗をする。「父ちゃん、牛が泣いてるョー!」  息子二人は、物置小屋の陰で震えながら見つめている。弟は涙を流し、兄の手にすがっていた。「 オオ・・・~! 」 やはり言葉にならない。▼ 「眠ったのだろうか・・・」 老人の枕は少し濡れていた。 雨戸の隙間が、ぼんやりと白んだ。鋭くヒヨドリが啼きかわす。

  声低くき やま鳩の鳴く たけむらは 半月白し 朝の光(かげ)さす  -夢蔡ー

Photo_3 竹の葉先は、朝日に赤く染まっておりました。幻想的な風景です。

    老人の長い一日が始まった。ーーー・・--ー    

  ーーーーーーー《付録》------ーー 

  Photo_4 絵手紙 2 「白木蓮は、清純。紫木蓮は、デカダン調。」虚子編の歳時記にありました。

  行く春や ふところ深き 紫もくれん ー夢蔡ー 

  希望はるけし 春の夜の夢  ーーー

  

  


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