河童アオミドロの断捨離世界図鑑

河童アオミドロの格安貧困魂救済ブログ。

9月は何かがやってくる

2016年09月04日 | ZIZY STARDUST
「今日から新学期です
じゃあ順番にこの夏休みに何をしたか聞いていきましょう
ところで、極楽くんはどうしたんですか
隣の席の石居くん、何か知っていますか?」

「先生、極楽くんはプールに潜ったままです」

「夏休みにプールに潜ったまま
9月になってもプールから上がってこないなんて
ずっと中学二年のままで三年生になれないですよ
誰か極楽くんに話を聞いてきてください
このクラスに水に強い人はいますか?
そうだ、カッパの緑川君、君にお願いしましょう」

「わかりました、僕が行ってきます」

9月の空を映したプールは青い空色の水色をしていました
残暑だとはいっても、水は少しづつ冷たくなっていました
ポチャン
緑川くんはほとんど水しぶきを上げずに飛び込みました
水面の雲の影が少しだけ揺れました

「極楽くん、なぜプールの底に潜ったままなんだい」

「やあ、緑川くんじゃないか
僕が水の底にいるのは、泣きたいからさ
プールの中で泣けば誰にも気付かれないだろう
特に雨の日のプールは最高だ
誰もいないし寂しすぎて泣くには最高の環境だ」

「このままじゃ中学三年生になれなくなるって、先生が心配していたよ」

「僕は永遠に中学二年生のままでいたいんだ
この夏休みの中にずっと沈んでいたいんだ」

「極楽くん、それはやめたほうがいいよ
それは『中二病』といって
僕のとうさんもカッパだけど同じ病気だったんだ
サラリーマンになってからずいぶん苦労したみたいだよ」

「僕は会社員になんかなりたくないんだ
ずっとプールの底でミジンコやユーグレナを食べて
生きていくから栄養は大丈夫だよ」

「極楽くん、明日は台風が来るみたいだよ
台風の後はすっかり秋になって、ミジンコも絶滅して、もう水の中には居られないよ」

「緑川くん、カッパの君がなんてこと言うんだ、君は僕の味方じゃなかったのか」

「わかったよ、極楽くん
でも寒くなるから、僕の甲羅を貸してあげるよ
これで、少しは君の心も暖かくなると思うよ」

「ありがとう、君は僕の一番の親友だね」

緑川くんは甲羅を脱いで極楽くんに渡そうとしました
しかし、甲羅は体の一部だったので脱ぐことができませんでした

「ごめん、やっぱり甲羅は渡せない、まあ、そのまま頑張れよ」

緑川くんに裏切られたと思った極楽くんは少し泣きました
緑川くんはその涙に気づきませんでしたが
ミジンコ達は水がしょっぱくなったことでクルクルと踊りだしました
水中から見上げると、降り始めた雨粒が作る波紋が、とてもきれいでした

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