河童アオミドロの断捨離世界図鑑

河童アオミドロの格安貧困魂救済ブログ。

虎印踊り教室の思い出 第3回

2014年04月09日 | 八田二郎クロニクル
「でも、あれでしょ、ウォンカのチョコレートを買ったら
デビッドボウイの東京コンサートのチケットが当たったんでしょ
なんで、コンサートに行かなかったのさ」

「信じられんだろうが、当時のおれには
デビッドボウイより高校の皆勤賞のほうが大事だった
もし東京まで行ってみろ、汽車で12時間だぞ
そして、もし上野から間違ってそのまま青森まで行ってしまったら
高校を少なくとも一週間は休むことになる
生物部のウサギの世話もできなくなるし
それに姉さんがうるさかったからな」

「そうか、色んな事情があったんだね
でも、あのチケットていうのが
探していた、夏への扉のカギだったんじゃないの
武道館の重たい扉が夏へと続いていたんじゃないの」

「そうかもしれないが、今となっては
みんな何周も前の地球の話さ」

そう言うと、カラスミのようなどんよりとした色の夕日に向かって
兄さんはビードロを吹いた
ポコペンポコペンという音が
なんだかおかしくて
周りじゅうの人が幸せそうに笑った

なんなんだこの文章は

虎印踊り教室の思い出 第2回

2014年04月09日 | 八田二郎クロニクル
「で、兄さん、デビッドボウイとマイケルジャクソンは
どっちが年上なんだい」

「どっちも外人だから、よくわからないけど
アメリカ人同志だから同じ高校の同級生じゃないかな
あの頃二人のLPレコードは一緒に売っていたからな」

「兄さんは、そのタイガーダンススタジオで本当に踊ってたんだね」

「もちろんだよ、ムーンウォークとか得意だったな
幼稚園の仲間でエグザイルも結成していたしな
本当にあの頃は音楽が世界を変えると本気で思っていたんだよ」

「じゃ、音楽で世界を変えることを、なぜ65歳になってやめたんだい」

「そりゃ、城山小学校の同級生のあいつのせいだな
福山雅治、あいつは俺と同期で汽車で東京に集団就職したくせに
自分だけ出世しやがった」

「人生っていうのは、ゾウリムシのお見合い結婚みたいに
うまくいかないものなんだね」

周囲を山で囲まれた長崎の早めの夕暮れに
まぶしげに目を細めた兄の目玉には
激情と浴場が渦巻いていた
その渦はまるで長崎くんちの蛇踊りのようにも見えた


扉の外を伝えたい人

2014年04月09日 | 八田二郎クロニクル
一度、扉の外を見てしまった人間は
その世界の事を誰かに伝えたくて
うまくいくとその人は作家や科学者になって
色々なものを作り出すのだが

ほとんどの人は何かそのような世界が
かつてあったなという程度の
薄い記憶のまま一生を終える

一番やっかいなのが
夏への扉を見た事は確かだが
それをうまく表現できないままに
中途半端な人生を送る人々で

それらの人々は幽霊や妖怪となって
死後もさまようのだという


八田二郎が火星の運河沿いの喫茶店でイタコのお婆さんから聞いた話