水仙の花はお正月頃から咲き始め、3月〜4月頃に季節を終える。街中を歩いていても路傍に植えられたものが、半ば自生しているように季節になると顔を出すが、これは日本の風土に適合しているからであろう。
12月〜2月に花をつける草花は少なく(木の花は山茶花、椿、梅などがあるが)稀な存在である。『水仙』という呼び名は中国の読み方そのままであり、『仙人は天にありては天仙、地にありては地仙、水にありては水仙』という古い言葉による。水辺に清らかに咲き、寿命が長いからついたらしい。
また、属名であるNarcissos(ナルキッソス)はギリシャ神話のから付いたもので、神話によるとナルキッソスのことを想うニンフのエコーに彼が振り向きもしなかったことからエコーは痩せ細り、声だけになってしまう。これを憐れんだ女神が水面に自らの姿を映しているナルキッソスを水仙の花に変えたと言われている。(自らを愛するナルシズムはこれが由来である。)
水仙は彼岸花と同じ科属であり、地表には茎は出てこない。花の下にあるのは花茎であり、花弁のように見える6枚のうち3枚は萼、残り3枚が花弁、また中央の王冠状の部分は副花冠と呼ばれている。半ば自生しているものはニッポンズイセンと呼ばれ、花冠は黄色、周りの6枚の花弁のように見える部分は白い。
他にも花が大きく、花の全てが黄色いラッパズイセンなどいくつも種類があり、最近は丈が短いミニ水仙も増加してきている。彼岸花同様に植物の個体全体にアルカロイド系の毒を有していて、球根(鱗茎)が毒性が強い。滅多にないが、野蒜や浅葱などと誤食して中毒となることもある。
スイセンは植えておけばいつの間にか芽を出して寒い時期に花を付ける可憐な植物であり、切手でも花シリーズの第一回目の1961年1月の花として発行されたり、1976年普通切手(動植物国宝シリーズ)の50円切手の図案として使われるなど日本人にはゆかりの深い花である。