ビタミンおっちゃんの歴史さくらブログ

STU48 音楽、歴史 などいろいろ

◎大洪水の物語 4 シュメル神話の世界より 3

2013-08-14 16:05:51 | HKT48 AKB48
◎大洪水の物語 4 シュメル神話の世界より 3

 「ギルガメシュ叙事詩」第11書板の「大洪水の物語」の部分

以下、2つ引用します

A 矢島文夫 訳(ちくま学芸文庫)によるもの
B 月本昭男 訳(岩波書店)によるもの

◎登場する主な神々

・ギルガメシュ ウルク市の王
・ウトナピシュティム 不死を得た人
・エンリル シュメルの最高神
・アヌ 天の父神 イシュタル女神の父
・イシュタル ウルク市の都市神 愛の女神
・エア 水の神
・シャマシュ 太陽神


A 「ギルガメシュ叙事詩」第11書板の「大洪水の物語」の部分(矢島文夫 訳 ちくま学芸文庫 より)

ギルガメシュは遥かなるウトナピシュティムに言った
「(略)
〔語りたまえ〕、いかにして生命を求め、神々の集いに加わったかを」

ウトナピシュティムはギルガメシュにむかって言った
「ギルガメシュよ、お前に秘事を明かしてあげよう
そして神々の秘密をお前に話してあげよう
シュルッパクの町は、おまえも知っている町だが
エウフラテスの河岸に位置している
それは古い町で、なかに神々が住んでいた
彼らは、大なる神々に洪水を起こさせたのだ
そこにいたのは彼らの父たるアヌ
彼らの助言者たる勇ましきエンリル
彼らの代表者ニヌルタ
彼らの水路監督エンヌギ
ニニグク、すなわちエアも彼らとともにいた
彼らは彼らの言葉を葦屋にむけて叫んだ
「(略)
シュルッパクの人、ウバラ・トゥトゥの息子よ
家を打ちこわし、船をつくれ
持物をあきらめ、おまえの命を求めよ
品物のことを忘れ、おまえの命を救え
すべての生きものの種子を船へ運びこめ
お前が造るべきその船は
その寸法を定められた通りにせねばならぬ
その間口とその奥行は等しくせねばならぬ」
(略)
5日目に私はその骨組を築きあげた
(略)
人びとのために私は牛どもを殺した
羊どもをも日ごとに殺した
ぶどうの汁、赤ぶどう酒、油、それに白ぶどう酒を
私はスープを飲ませた、川の水ほども
まるで正月のように、たらふく食べられるように
私は醤油の〔 〕を開いて私の手に注いだ
第7日目に船は完成した
その進水はなかなか困難だった
床板を上下に動かさなければならなかった
やっと船体の三分の二が水中に入った
私の持物のすべてをそこへ置いた
私の持てる銀のすべてをそこへ置いた
私の持てる金のすべてをそこへ置いた
私の持てる生命あるもののすべてをそこへ置いた
私は家族や身寄の者のすべてを船に乗せた
野の獣、野の生きもの、すべての職人たちを船に乗せた
(略)
その時はやって来た
『朝には〔 〕夜には苦しみの雨を降らすぞ』
私は天気のようすを眺めた
天気はすさまじく見えた
私は船へ入り、入口をふさいだ
船を塗り込める者、船乗プズル・アムルに
私は中味もろとも船体を引き渡した
光輝くころになると
空の果てから黒雲が起ち上った
(略)
1日のあいだ台風が吹いた
吹きつのり、速さを増し〔 〕
戦いのように〔 〕
お互いを見ることもできず
人びとは天からさえ見分けられなかった
神々は洪水に驚きあわて
退いてアヌの天へと登って行った
神々は犬のように縮こまり、外壁に身をひそめた
イシュタルは人間の女のように叫びわめいた
声よき神々の寵姫は高らかに声を張り上げた
『古き日々は、みよ、粘土に帰してしまった
私が神々の集いで禍事(まがごと)を口にしたからだ
なぜ神々の集いで禍事を口にしたのだろう
私の人間たちを滅ぼす戦いを言い出したのだろう
この私こそ人間たちを生み出した者であるのに
魚の卵のように彼らは海に満ち満ちたのに』
アヌンナキの神々は彼女とともに泣いた
心沈んだ神々は坐って泣いた
彼らの唇はすっかり〔 〕
6日と6晩にわたって
風と洪水が押しよせ、台風が国土を荒らした
7日目がやって来ると、洪水の嵐は戦いにまけた
それは軍隊の打ち合いのような戦いだった
海は静まり、風はおさまり、洪水は引いた
空模様を見ると、静けさが占めていた
そしてすべての人間は粘土に帰していた
平屋根と同じ高さに草原があった
蓋を開くと光が私の顔に落ちてきた
私は漕ぎくだり、坐って泣いた
涙が私の顔を伝わって流れた
私は海の果てに岸を認めた
12の場所に陸地が現れた
ニシル山に船はとどまった
ニシルの山は船をとらえて動かなかった
(略)
7日目がやって来ると
私は鳩を解き放してやった
鳩は立ち去ったが、舞いもどって来た
休み場所が見あたらないので、帰ってきた
私は燕を解き放してやった
燕は立ち去ったが、舞いもどって来た
休み場所が見あたらないので、帰ってきた
私は大烏(おおがらす)を解き放してやった
大烏は立ち去り、水が引いたのを見て
ものを食べ、ぐるぐるまわり、カアカア鳴き、帰って来なかった
そこで私は4つの風に鳥のすべてを解き放し、犠牲を捧げた
私は山の頂にお神酒を注いだ
7つ、また7つの酒盃を私は置き
その台のうえには葦と杉の木と香木テンニンカを置いた
神々はその香をかいだ
神々はその好ましい香をかいだ
神々は蠅のように犠牲の施主のもとに集った
さてそこの大女神(イシュタル)がやって来て
アヌが彼女を喜ばすために造った立派な金銀細工を取った
『この神々をわが首にかかる宝石ほどにも忘れはしまい
この日々を心にとどめ、けっして忘れはしまい
神々よ、犠牲の方へ来てください
エンリルは犠牲の方へ来てはならぬ
なぜなら彼は考えなしに洪水を起こしたからだ
そして私の人間たちを破滅にゆだねたからだ』
さてそこにエンリルがやって来て
船を見るとエンリルは腹を立てた
イギギの神々に対して心は怒りで満たされた
『生き物が助かったというのか。一人も生きてはならなかったのに』
ニヌルタは口を開いて勇ましきエンリルに言った
『エア以外のだれがそんなことをたくらもう
エアだけがすべてを知っていたのだから』
エアは口を開いて勇ましきエンリルに言った
『神々の師匠である勇ましき君が
なぜ考えなしに洪水を起こしたのだ
罪ある者には彼の罪を、恥ある者には彼の恥を
だが彼の命が絶たれぬよう寛大たれ。彼が逐われぬようがまんせよ
洪水を起こすかわりに人間を減らすようライオンを立上らせればよかったのに
洪水を起こすかわりに人間を減らすよう狼を立上らせればよかったのに
洪水を起こすかわりに国土が〔 〕するよう飢饉を起こさせればよかったのに
洪水を起こすかわりに人間を打つためにイルラ(ペストおよび戦争の神)を立上らせればよかったのに
大なる神々の秘密を明らかにしたのは私ではない
アトラハシス(ウトナピシュティム)に夢を見せたら、彼は神々の秘密をききわけたのだ
さて今や彼のために助言をしてやるべきだ』
そこでエンリルは船のなかへ入って行った
私の手を取って私を乗船させた
私の妻を乗船させ、私のかたわらにひざまずかせた
祝福するために私たちのあいだに入り私の額に触れた
『これまでウトナピシュティムは人間でしかなかった
今よりウトナピシュティムとその妻はわれら神々のごとくなれ
ウトナピシュティムは遥かなる地、川々の河口に住め』
こうして私を連れ去り、遥かなる地、川々の河口に住まわせた
(以下略)



B 「ギルガメシュ叙事詩」第11書板の「大洪水の物語」の部分(月本昭男 訳 岩波書店 より)

ギルガメシュは彼、遥かなウトナピシュティムに語った
「(略)
わたしにお話しください
あなたがどのようにして神々の集いに立ち、不死の生命を探し当てたのか」

ウトナピシュティムは彼、ギルガメシュに語った
「ギルガメシュよ、隠された事柄をお前に明かそう
神々の秘密をお前に語ろう
シュリッパクはお前が知っている町、
ユーフラテス川の岸辺にある町だ
その町は古く、そこに神々はお近づきなされたものだ
ところが、偉大な神々は心をはたらかせ、洪水を起こそうとされた
そこに居られたのは彼らの父アヌ、
彼らの顧問官、英雄エンリル、
彼らの式部官(玉座を運ぶ者)、ニヌルタ
彼らの運河監督官、エンヌギであった
ニンシクであるエアも彼らと共に誓った
だが、彼(エア)は彼らの言葉を葦屋に向かって繰り返した
『(略)
シュルッパクの人、ウバル・トゥトゥの息子よ
家を壊(こぼ)ち、方舟(はこぶね)を造れ
持ち物を放棄し、生命を求めよ
財産を厭(いと)い、生命を生かせ
生命あるもののあらゆる種を方舟に導き入れよ
あなたが造る方舟は、
その寸法が測られるように、
その長さと幅とが等しいように」
(略)
5日目に、わたしはその形を設計した
(略)
わたしは働く者たちのために数々の雄牛を屠った
日毎、数々の雄羊を殺した
シラシュ・ビール、クルンヌ・ビール、油、ぶどう酒、
吸物を川の水のように彼らは飲んだ
アキトゥ祭(新年祭)の日のように彼らは祝祭を催した
太陽が昇るころ、わたしは醤油に手を置いた
太陽が沈むころ、方舟は完成した
積荷の搬入は、難しかった
彼らは舟底板を上下に一致させた
彼らはその三分の二を生きもののために分けた
そこにあるものすべてをわたしは方舟に積み込んだ
そこにあるすべての銀を方舟に積み込んだ
そこにあるすべての金を方舟に積み込んだ
そこにある生きものの種すべてを方舟に積み込んだ
わたしはわが家族、わが親族を方舟に乗せた
荒野の獣、荒野の生きもの、すべての技術者を方舟に乗せた
(略)
その時がやって来た
彼(シャマシュ)は朝にはクックを、夕には小麦を雨と降らせた
わたしは嵐の模様を見やった
嵐は恐怖を与えるかに見えた
わたしは方舟の中に入り、わが戸を閉じた
方舟を閉じるため、舟師プズル・アムルに、
わたしはわが宮殿をその付属品までも与えてしまった
暁がかすかに輝きはじめたとき、
天の基底部から黒雲が上ってきた
(略)
終日、暴風が吹き荒れ、
激しく吹いて、大洪水が大地を襲った
戦争のように、人々の上に、破滅が走った
彼らは互いに見分けがつかなくなった
大雨のなかで、人々は互いを認め得なかった
神々さえも大洪水を怖れ、
引きこもって、アヌの天に上ってしまった
神々は、犬のように身体を丸め、外でうずくまった
イシュタルは、子を生む女のように、絶叫した
甘い声の方、神々の女君は嘆き声を上げた
『いにしえの日々が、実際に、粘土と化してしまったとは
わたしが神々の集いで禍事(まがごと)を口にしたからなのか
神々の集いで、どうして禍事を口にしてしまったのか
人間どもを滅ぼすために、戦争を命じてしまったのか
わたしが生んだ、わが人間たちが、
稚魚のように海を満たすのだ』
アヌンナキの神々も彼女と共に泣いた
神々は頭を垂れ、涙ながらに座していた
彼らの唇は乾き、調理した食物にさえ触れなかった
6日、7夜
風が吹き、大洪水と暴風が大地を拭った
7日目になって、暴風と大洪水は戦いを終わらせた
それらは陣痛にのたうつ女性のように自らを打った
大洋は鎮まり、悪風はおさまり、大洪水は退いた
わたしが風を見やると、沈黙が支配していた
そして、全人類は粘土に戻ってしまっていた
草地は屋根のようになっていた
わたしが窓を開けると、光がわが頬に落ちてきた
わたしはひざまずき、座って、泣いた
わが頬を涙が流れ落ちた
わたしが四方世界を、また海の果てを眺めると、
12ベールの距離に領地が立ち現れた
方舟はニムシュの山に漂着した
その山ニムシュは方舟を掴んで、動かなかった
(略)
7日目になって、
わたしは鳩を放った
鳩は飛んでいったが、舞い戻ってきた
休み場所が見あたらずに、引き返して来たのだった
わたしは燕を連れ出し、放った
燕は飛んでいったが、舞い戻ってきた
休み場所が見あたらずに、引き返して来たのだった
わたしは烏を連れ出し、放った
烏は飛んでゆき、水が退いたのを見て、
ついばみ、身繕いをし、尾羽を高く掲げて、引き返しては来なかった
わたしはそれらの鳥を四方の風の中に出て行かせ、供犠を献げた
山の頂を前にしてスルキンヌを供えた
7つまた7つと、薫香用の器を立て、
それらの上皿に香り葦、香柏、ミルトスをちりばめた
神々はその香りを嗅いだ
神々はその芳しい香りを嗅いだ
神々は、五月蠅(さばえ)のように、供犠の主のところに集まって来た
マハは到着するやいなや、
アヌがその飾りに造った大蠅を掲げた
『神々よ、わたしはわが項(うなじ)のこのラピス・ラズリを決して忘れまい
わたしはこれらの日々を心に留め、永久に忘れまい
神々はスルキンヌのところに来るように
だがエンリルは、スルキンヌのところに来てはならぬ
彼は熟慮もせずに、大洪水をもたらし、
わが人間たちを破局に引き渡したがゆえに』
エンリルは到着するやいなや、すぐに、
方舟に眼を留めた。エンリルは憤り、
イギギの神々に対する怒りに満ちた
『なんらかの生命が大洪水を免れたのだな。
人間は誰も破局を生き延びてはならなかったのに』
ニヌルタは口を開いて語り、英雄エンリルに告げた
『エア以外に、誰がこのようなことをするだろう
エアこそはすべての業を弁(わきま)えているのだから』
エアは口を開いて語り、英雄エンリルに告げた
『あなたは英雄、神々の賢者ではないか
熟慮もせずに、どうして洪水をもたらしたのか
罪人にはその罪を負わせよ
咎(とが)ある人にはその咎を負わせよ
それで赦(ゆる)せ。彼とて抹消されてはならぬ
それで我慢せよ。彼とて殺されてはならぬ
洪水をもたらす代わりに、
ライオンを起こして、人々を減少させたらよかったのだ
洪水をもたらす代わりに、
狼を起こして、人々を減少させたらよかったのだ
洪水をもたらす代わりに、
飢饉を起こして、大地をやせ細らせたらよかったのだ
洪水をもたらす代わりに、
エラを起こして、人間を撲滅させたらよかったのだ
わたしが偉大な神々の秘密を明かしたのではない
アトラ・ハシース(ウトナピシュティム)に夢を見させたら、彼が神々の秘密を聞き取ったのだ
いまや、あなた自ら彼について決定を下すがよい』
そこで、エンリルは方舟に乗り込み、
わが手を取って、わたしを引き上げた
彼はわが妻をも引き上げ、わが傍らにひざまずかせた
わが額に触れ、われらの間に立って、われらを祝福して、言った
『これまで、ウトナピシュティムは人間であったが、
いまや、ウトナピシュティムと彼の妻とは、われわれ神々のようになる
ウトナピシュティムは遥か遠くの河口に住め』
こうして彼ら(神々)はわたしを連れて行き、遥か遠くの河口に住まわせたのだ
(以下略)