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春を愛する人は、心優しい人。

物干す

2009年07月29日 12時24分49秒 | 民風民俗
 京師于六月六日抖晾衣服書籍,謂可不生蟲蠹(chóngdù)。
        ——《燕京歳時記》

 京は六月六日(旧暦)に衣類や書籍などを干す。所謂「蟲食われることを防ぐため」。
                  ――『燕京歳時記』

 夏は雨がちで湿気も多いので、物干すのが当たり前のことである。しかし、南を代表する『荊楚歳時記』から、「物干す」という項は見られない、もしも天候や風土からすれば、南は北よりもっと湿っぽいのに。

 日常生活でよく行われることとして、その中で洗濯物もあれば、収穫したばかりの穀類もある。勿論、そのほかにも色色なものがある。文学作品にも物干すことが記される。例えば、『西遊記』にも出てくるが、如来の大雷音寺から経文を持ち帰る時、九九八十一難の終結として、師弟四人を雲端から通天河畔に落ちさせることにした。そこで老亀がまた川渡ることを助けて来た。

 大きな亀の背で師弟四人が問われた。当年西に行く時もこの老亀のお陰で無事に通天河を渡った。そこで、老亀から一つのお願いがあった。如来に「自分の寿命はどうです」と訊ねることであった。然し、師弟四人はそれを忘れてしまった。そこで怒った老亀は四人を川に落ちさせた。服は云うまでもなく、もっとも不幸なのは貴重な経文が完全に濡れた。すると、大きな岩で経文を干すという章節があった。その岩も「晒経石」という名を得た。

 私も今日本棚、地下室から本を運び出して干した。ちょっとかびる匂いもするが、一日乾かすと、日の香りもするのであろう。