ひきた小児科クリニック(群馬県桐生市 疋田小児科医院)

小児科専門医が群馬県桐生市やみどり市で流行している病気や,予防接種,アレルギーなどこどもの健康に関する情報を提供します.

インフルエンザの流行、インフルエンザワクチンの効果について

2009-01-14 00:46:49 | 予防接種(ワクチン)
インフルエンザの流行、インフルエンザワクチンの効果について

 昨日の診療からインフルエンザ検査でA型が検出される確率が高くなりました。
 お友達や家族にインフルエンザの方がいたという場合が多いように感じました。一方で40度以上の熱が続いていてもインフルエンザ検査陰性の方もおり、インフルエンザ以外の高熱を呈するウイルスも流行しているようです。

 また、タミフル耐性のインフルエンザが検出されたと報道されて国内ではそれほど耐性率は高くないようですが(http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090111-00000019-khk-l04)、今後も注意する必要がありそうです。
 インフルエンザワクチンを接種していてもインフルエンザに感染している患者様もおり、このblogでもインフルエンザワクチンを接種しても感染してしまって残念とのコメントを頂きました。もっともだと思います。インフルエンザワクチンの必要性について下にまとめました。

 インフルエンザワクチンの効果について

 残念ながらワクチンは接種したら、その病気に絶対にならないというものではありません、先に麻疹・風疹、おたふくに関して書きましたが100%の有効率ではありません。
例えばBCGは結核の予防接種です。BCGを接種すれば結核にならないのであれば結核はもっと少なくなっているでしょう。残念ながらBCGを接種しても結核には感染します。それでは何故に接種しているのでしょう。それは、乳幼児が罹患すると致死的な重症結核(結核性髄膜炎、粟粒結核)を発症してしまうからで、これらの重症結果が予防できるためです。

インフルエンザは通常に罹患すると高熱が出ます。短ければ数日、長ければ1週間程度は高熱が続きます。しかし、治ってしまえば通常の風邪と変わりません。最近は抗インフルエンザ薬が使用されることが多くなりましたが、以前は家でおとなしくしていれば治る風邪の一種とも考えられなくはありませんでした。しかし、通常ではなくて重症化することもある感染であるために注目され予防接種が開発され使用されています。もちろん、ワクチンによって重症化だけでなく、個人の発症そのものもある程度抑制されます。

 インフルエンザワクチンは1976年から1993年まで定期接種として子供に接種され、1994年から任意接種になりました。任意接種となった当時は有効性が疑問視され社会的に批判されていました。そして、任意接種となったため摂取率が著しく低下ました。すると皮肉なことに摂取率が低下したことによりインフルエンザ死亡者が増加していることが明らかになりました。これは高齢者の死亡が抑えられていたと解釈され、現在の日本の主な接種対象は高齢者のみです。桐生市でもワクチンは公費負担になり1000円で接種することができます。これは高齢者では肺炎、心肺機能低下、他の慢性疾患の悪化などによって死亡することがあるからです。
 では小児ではどうでしょうか、確かに過去には接種した方が良いというデーターはありませんでした。しかし、最近は6か月以上の小児で有効であったという研究結果が出てきました。このため、米国では老人などだけでなく5歳未満の幼児にまでインフルエンザワクチンの接種対象を拡大し(原則として無料)、今後は18歳までの学童・学生の全員接種を目指すことにしたそうです。さらに、5歳未満の乳幼児のいる家庭では家族全員の接種が推奨されています。
 日本は乳幼児にはインフルエンザ脳症という重篤な合併症が多発しているにもかかわらず、任意接種のままで積極的な推奨がされてないことは残念です。
 私個人的にはインフルエンザ脳症の患者さんを多く診察して、残念ながら死亡例も経験しております。現在でも後遺症で苦しんでいる患者さんの診療も続けております。最近は有効な治療方が模索されつつあり、私もインフルエンザ脳症に対する治療法に関する研究をしており2008年に発表しました(インフルエンザ脳症に対するステロイドパルス療法の検討  疋田敏之 他 http://shoni-iji.com/papers/0811.html)。しかし、残念ながら治療が有効でない場合もあり、インフルエンザワクチンは接種した方が良いと思っています。

ひきた小児科クリニックに受診して、気になることがあれば気軽にご質問ください。

ひきた小児科クリニック (群馬県桐生市 疋田小児科医院)
http://www014.upp.so-net.ne.jp/hikita/

コメント (12)
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