野菜に関する怪情報を探る

テレビや書籍、ホームページなどから、野菜に関する記載について疑問に感じたことを綴るつもりです。

サトイモが脳を活性化する

2011-09-28 07:42:23 | Weblog
 NHK日曜の朝の番組でサトイモが紹介されておりました。録画しておりませんので、番組内容について正確さに欠けるかもしれませんが、興味ある放送でしたので、ご紹介します。
 サトイモの粘りガラクタンが脳を活性化するので、ガラクタンを抽出して、ぼけ防止等に活かそうという内容であったと記憶します。ガラクタンはガラクトースという糖がつながった高分子のはず、これがどうやって脳を活性化するのか???脳で使われるエネルギー源は主にグルコースです。ガラクタンとして摂取しても、消化されて、グルコースに変えられてから脳に達するのであれば、無理してサトイモを食べなくても、あめ玉でもしゃぶればよいということになります。
 文献を調べてみましたが、サトイモのねばりはガラクトースとアラビノースが重合したアラビノガラクタンという物質のようです。アラビノガラクタンが脳に入るとか、脳を活性化するなどという報告は探した中では出てきませんでした。
 サトイモは特有の粘り、食感を持ちます。これを口に入れると、「おもしろいやつが口にあるぞ、どうやって噛んで飲み込もうか?」と脳が活性化するのではないかと考えます。それなら、アラビノガラクタンをわざわざ抽出するのは何のためなのか???
 頭がよくなるとの放送内容から、受験生の胃袋に無理矢理サトイモを押し込むお母さん方が出てこないことを祈ります。

ピーマンは横切りにすると苦味が減る!?

2011-09-19 15:25:41 | Weblog
 ずいぶん以前に、「ピーマンは縦ぎりにすると苦味が減る」と記載したように思います。切り方ひとつで、子供の嫌いな苦味がコントロールできるなら素晴らしいと、「ピーマンの切り方で苦味が変わるというような知見があるのか」と、調理学の先生にお尋ねすることも多いのですが、「知らない」という回答しかいただいたことがありません。たまたまテレビを見ていたら、「横切り(輪切り)にすれば苦味がしない」とのこと(番組によって言うことが違う)。番組HPには「ピーマンの細胞は縦にならんでいるので、横切りにすると苦味成分や青臭さが外に出ます。」と解説されています。
 青臭さは青葉アルコールでしょう。苦味についてはアルカロイドといわれることもありますが、まだ未解明です。輪切りでなくとも、組織を傷つけると青葉アルコールは生成されので、「青臭さが外に出ます」は△でしょうか?また別の面で切ると、新たに青葉アルコールが生成するので、「青臭い成分が抜ける」というイメーシにはならないでしょう。苦味については、物質がわからないので議論できませんが、おそらく水溶性の低い成分でしょう。そうなると、切ったぐらいで切り口から抜けるとは考えられません。番組の解説は総合すると×だと思います。
 番組では薄く輪切りでスライスしたものを生で食べさせてました。そうするとあまり噛まなくとも飲み込めるはずです。青臭み成分の青葉アルコールは噛んでいる間に口の中でも生成します。従って噛まなければ、それだけ青臭みがしないはずです。苦味成分については、よく噛んで組織がつぶれた時に、舌の苦味のセンサー(レセプター)に触れるはずなので、まるのみすれば、苦くないと想像できます。
 では縦ぎりで細くスライスすればどうか?番組のいうように縦方向に組織が並んでいるので、かみ切るには、横ぎりよりも力がいるのではないでしょうか?同じように細く切る場合、縦ぎりよりも横切りの方が、噛まずに飲み込みやすいので、苦味や青臭みが弱くなるというのが私の考えです。
 では加熱するとどうか?酵素は活性を失うので先の青臭み成分、青葉アルコールについては考える必要はないでしょう。それでも残っているピーマン臭というのは、ピラジン類によるものと考えられます。ピラジン類なら切り方には関係なさそうです。ここから先は推測ですが、輪切りにした方が、組織がつぶれて中の成分を失いやすいのではないかと思います。苦味成分よりも甘味成分である糖などをより多く失い、その結果、輪切りの方が苦味を強く感じるかもしれません。子供に食べさせるために、細かく刻んだりしますが、その場合は、苦味成分ばかりピーマンに残り、甘い成分は失ってしまう。その結果、より苦いピーマン片ができて、子供のピーマン嫌いをさらに加速させるのではないでしょうか。
 最近、苦味のないピーマン品種も売り出されました。ピーマン臭はあるようですが、苦味は少ないように思えます。お試しいただき、お子様の反応などコメントいただければありがたいです。

ゴボウはささがきにすると食物繊維が増える?

2011-09-08 17:39:07 | Weblog
 野菜の日の新聞広告記事からです。ゴボウについて「豊富な食物繊維は切るとより増えるので、”ささがき”にすることをおすすめします」と書かれてます。マジシャンなら、1枚のお札をちぎって、2枚にすることもできる(紙の繊維も2倍と期待)でしょうけど、ゴボウを切っただけで繊維が増えるのでしょうか?ゴボウにはポリフェノールが含まれ、切ると酸素に触れて、褐変します。ポリフェノールなら水に溶けますが、褐変物質は酸化重合しているとすれば、水溶性が低くなり、消化酵素にも安定なので「食物繊維」といえなくもありません。せっかくのポリフェノールを酸化させて褐変させるのは、健康のためにどうかなとも思いますし、切ったぐらいで、みるみる食物繊維が増えるとも思えません。
 探しているとそれらしい文献が見つかりました。1996年の瑞穂短期大学紀要に「油いためをし、実際キンピラゴボウにした場合、せんぎりよりもささがきの方がわずかにDFが多かった」と書かれています。DFとは食物繊維のことです。図を見ると、せんぎりでは100g中3.6g程度、ささがきでは3.7g程度となり(統計的に有意差があるのかはわかりませんが)、ささがきの方が食物繊維が多いようです。
 もしこのことを元に、「ささがきが食物繊維が多い」ので勧めるのはどうかと思います。この実験でいいたかったことは、「せんぎり」よりも「ささがき」の方がわずかに食物繊維が多かったということであって、「ささがき」に切れば食物繊維が増えるというデータではありません。また、「せんぎり」と「ささがき」を比べても、食物繊維の差はごくわずかなので、無理に「ささがき」にしなくとも、「せんぎり」の方が口当たりよく多く食べられるのなら、「せんぎり」にしておいしく食べるべきだと思います。
 中途半端に勉強した人は、ゴボウは「さきがき」とすり込まれ、他のおいしい調理法に出会う機会を失うのではないでしょうか?せっかくの野菜に興味を持ってもらう特集に、野菜の調理法を制限するような内容、これも怪情報のひとつと思われます。
 

体内の酸素のめぐりを促すクロロフィル

2011-09-04 08:43:02 | Weblog
 昨日に続き、野菜の日記事についてです。各記事に疑問符が多くつくのですが、ネットで調べると、そのまま引用してブログに紹介される方もすでにいらっしゃるようです。最大の不思議は「体内の酸素のめぐりを促すと期待される色素成分クロロフィルを含む、緑色野菜」です。普通に読むと、「クロロフィルは酸素のめぐりを促す」ということでしょうか。さすがに、ネットの怪情報にもなかなか見あたらない新説かもしれません。
 かつて、テレビ番組制作会社の方が、「赤血球の酸素を運ぶヘモグロビンと、葉緑素クロロフィルとは構造が似ているので、葉緑素を含む緑の野菜を食べると、血のめぐりがよくなる」という説を主張され、同意を求められたことはあります。お話を聞いてみると、高校程度の生物や化学の知識もお持ち合わせでないようでしたので、「ありえない」と回答させていただいたように記憶します。さすがに、クロロフィルがヘモグロビンに人体内で化けるような怪情報はネット上にも少ないと思います。
 ある健康食品の宣伝で、「クロロフィルのマグネシウムは溶けにくいので、鉄に置き換えた」植物由来商品が紹介されていました。マグネシウム塩が水に溶けにくいとは思えませんが(同じく健康食品のニガリなどマグネシウムのかたまり)、鉄を添加した健康食品であれば、貧血の改善には多少は役立つかもしれません。それなら、「クロロフィルそのものが酸素のめぐりを促す」のではなく、「クロロフィルに鉄を加えた健康食品は、貧血を改善して酸素のめぐりを促す可能性がある」だけかと思いますが。
 あるいは、クロロフィルは水を酸素と水素に分解して、エネルギーを取り出す光合成を担う重要な成分です。体内に入ったクロロフィルに光があたると、その場所で酸素を発生するのでしょうか?否、単体のクロロフィルに光をあてても、酸素は発生しません。葉緑体という特殊な組織の中で、他の成分とのたくみな連携の元で光合成はおこります。緑色野菜を腹いっぱい食べたら、クロロフィルが体をめぐり、酸素やエネルギーを供給してくれるのなら素晴らしいのですが、あいにくそうはなりません。(不要なところで酸素やエネルギーを作られたら、それはそれで病気や炎症の元にしかならないと思いますが。)
 「体内の酸素のめぐりを促すと期待されるクロロフィルを含む、緑色の野菜」、この意味するところは謎です。

野菜の日は過ぎましたが(オクラ)

2011-09-03 16:09:13 | Weblog
 1週間ほど前、新聞広告に8月31日は野菜の日という広告記事が掲載されておりました。特に野菜に関心のない人の目にもとまり、さらに食育を推進する方には教材として活用される場合も期待されるので、もう少し内容を考えてほしいものだとの印象を持っております。
 オクラについて「特有の粘りには、タンパク質の吸収を助けるといわれる成分も含まれているので、肉や魚と食べるとよいでしょう。」と書かれております。「タンパク質の吸収を助ける成分」とは何ぞやと悩んでおりました。ネット情報からの推察ですが、著者は「ムチン」というタンパク質をこの有効成分と考えておられるようです。動物の粘液などのネバネバにはムチンが含まれている。当然胃を守る粘液にもムチンは含まれます。一方で、オクラは確かにネバネバします。ではオクラのネバネバはムチンによるものなのか?探しましたが、文献がありません。無理にムチンを想定しなくとも、ペクチンなどの炭水化物でもネバネバしそうには思えます。また仮に、植物にムチンに似た物質が含まれていたとして、それが胃や腸で、本来のムチンと同じように働くのか?また、それがどうしてタンパク質の吸収を助けることになるのか?わずか数行の文言ですが、実に頭を悩ませてくれます。