野菜に関する怪情報を探る

テレビや書籍、ホームページなどから、野菜に関する記載について疑問に感じたことを綴るつもりです。

ホウレンソウのシュウ酸は密植栽培で低下するか

2008-02-17 12:25:31 | Weblog
 17日早朝のテレビ番組を見ていたら、ホウレンソウに関して特集されてました。ご高齢にもかかわらず、おいしいホウレンソウを作るために毎日努力されている栽培農家の方には頭が下がる思いです。番組では、この農家の栽培法の特徴は密植栽培にあると伝えていました。この農家の作ったホウレンソウがおいしいことについて、
1.シュウ酸はえぐみ成分である。
2.シュウ酸は光があたると増える。
3.密植すると光が当たらないので、シュウ酸が減り、えぐくない。
と解説されていたようです。(分析値は示さず。)
 今の時期、寒さにあてると糖含量が増えることは、科学的知見として知られていますが、シュウ酸と光の関係についてはどうでしょうか。確かに、2006年秋に園芸学会において上西らが「50%遮光することによって、シュウ酸濃度が若干減る」ことは報告しています。ただ、減少量はごくわずかであり(有意差なし)、これが官能で区別できる程度なのか疑問です。むしろ遮光すると、シュウ酸以外の有機酸も低下し、えぐみは強くなるように思います。
 密植栽培で光が制限され、これがおいしさにつながるのであれば、むしろ苦味成分であるポリフェノール類の低下によるものと考えるのが自然ではないでしょうか。
 権威を持ったテレビ局に放送されると、仮説も珍説も定説も、すべて真実のように伝わります。科学的にみえる説明はさっと聞き流し、ホウレンソウは今が旬という言葉だけを記憶に残せばよいのかもしれません。

松永和紀さんの講演を聴きました

2008-02-16 14:25:52 | Weblog
 地元で科学ライター松永和紀さんのセミナーがあったので参加させていただきました。最近では「メディアバイアスーあやしい健康情報とニセ科学」という、このブログを書く上でも参考にさせていただいている本を出版され、食にまつわる大衆の情緒的な誤解に対して、正面から科学的視点で切ってすてる文章にはいつも感心しております。
 今回の講演においても、農薬入りギョーザ事件について実に見事に解説されておりました。1.中国産食品の食品衛生法違反数が多いのは、単に輸入量が多いからであり、特別に中国産が危険なわけではない。2.今回の事件は、毒性の強さから野菜の残留農薬由来ではないと報道された当初から考えた。3.農薬検査は抜き取り検査するしかないので、仮に検査態勢を充実させたとしても、故意に毒物を混入させた場合には検出できる可能性は極めて低い。ついでに、検査充実の世論の後押しで、お役所が人員増をねらっているのではないかとも。
 全くその通りだと思います。我々も、中国で農薬をじゃぶじゃぶかけている映像を、「輸入野菜は危ないので、自給率を上げないといけない」というイメージキャンペーンに利用しがちですが、慎まないといけませんね。
 先日も、ある青果物流通関係の方から電話で大演説を頂戴しました。農薬は悪、硝酸も悪、だから有機は善、有機ならミネラルなどあってものすごく体にいいはずという盲信のもとで語られ、科学的にお応えしようにも、ガンとしてはねつけられ、お互いに不信感のみが残る不毛の時を過ごしました。
 野菜については、硝酸悪者論で書いた本の方がインパクトがあり一般受けするのは事実です。篤農家ですばらしい野菜を作るSさんの本が正しいのか、農文協から出版されている「硝酸塩は本当に危険か」越野正義(科学者ではあるが肥料屋)訳が正しいのか、両方読んで判断いただきたいと思います。なお「茶一杯で硝酸塩を過剰吸収」などと無茶苦茶な分析データを示しているKさんの本(T新書)は問題外だと考えています。
 松永さんの非常に分かりやすい講演に、我々も野菜を商品として扱う方に正しい情報を提供していかねばならない責務を感じた次第です。討議の席で、松永さんにテレビ番組を買い取ってでも情報を博く大衆に伝えて欲しいという意見がありました。無茶な注文するよりも、本を買ってベストセラーにすればメディアも注目するはずです。テレビ番組は視聴率に支配されますが、視聴者は報道のあり方に賛同するからその番組をみているわけではありません。本の場合は、著者の主張が正しいと考える場合には大いに購入して部数を増やすことによって、一般の方の考えがメディアに伝わるものと期待します。


ミルクティーにショウガをいれたら凝集した

2008-02-10 13:53:46 | Weblog
 お役所から、ミルクティーにショウガをいれたら凝集したが大丈夫かという問い合わせを転送いただきました
 まず考えたことは、ショウガにはシュウ酸が含まれます(茶のサイエンス、筑波書房、192ページ)。シュウ酸と牛乳のカルシウムが、不溶性のシュウ酸カルシウムとして沈殿した?!いや、紅茶自体にもシュウ酸は含まれますし・・・。紅茶にミルクをいれても沈殿は目立たないので、さらにショウガとしてシュウ酸を加えても、そんなに大きな変化はないだろうとも思えます。
 というわけで、この質問にも返答に困りました。
 ネット上で調べれば、ショウガ紅茶というのは結構一般的なようです。しかしながら、ショウガ紅茶にミルクを加えるとは出ていません。これは牛乳とショウガの間の反応かもと考え、生姜と牛乳で検索すると、Wikipediaに「生姜牛乳プリン」というのがありました。ショウガ中のプロテアアーゼが牛乳のタンパク質のゲル化に関与すると説明されています。細かい反応については分かりかねますが、ミルクティーにショウガをいれると、たまたま生姜牛乳プリンに似たものができて、これが「凝集」の要因であるという解釈も成り立ちそうです。
お役所に問いあわせをされた方も、最初は販売店に問いあわせされ、満足な回答がなかったのでお役所にまで質問が回されたかと思います。食の「安全・安心」を気にする消費者が、体によかれと思って新メニューを考え、予見しなかった結果がでれば、用いた食材が悪いと疑い、販売店に苦情を言うことも予想されます。こういった苦情に対処しておれば、スーパーなどの相談窓口がいくつあっても足りないでしょう。相談窓口が小さな苦情に忙殺されているうちに、農薬入りギョーザのような人命に関わる苦情が埋もれてしまうことになるのかもしれません。「安心」を求めるのであれば、伝統的に食べられてきた方法に従い、あまり奇抜な調理をしないことと考えます。
 ショウガ紅茶でダイエットとか言われますが、紅茶プラス生姜で過剰なシュウ酸を摂取することになります。十分なカルシウムの補給をしないと、骨粗鬆症で骨折して、寝たきりになって足が痩せ細ることにもなりかねません。また結石が心配な人にもすすめられない飲料です。



キャベツに付着する粉

2008-02-10 12:56:32 | Weblog
 1月26日にホウレンソウに付着する粉について記載しました。先日、ある県職員の方から、キャベツにも粒々がでているんだけどと電話があり、写真を送っていただきました。
 ホウレンソウの粉については、品種、時期などを問わず発生しますが、キャベツの粒々は、たまにしか見られない現象のようです。ホウレンソウのように全体に分布するのではなく、ごく一部に瘤状に出ているので、生理障害が、病虫害に関係するのだと思いますが・・・。実際に見たことがないのでなんともいえません。
 どなたか、ご存じでしたらお教えください。

 今日、スーパーには冷蔵の餃子が半額で山積みにされてました。有機リン剤いり餃子事件のとばっちりで売れ残っているのではないかと推測されます。かたや国際的な食糧価格の高騰、もう一方で消費者の食への過剰な期待の中で、食品業界の難しさが表れているように感じました。